DAY BY DAYブック

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目覚めたそこは何の変哲もない、普段から見慣れている私の部屋だった。


ピンク色のフリルが装飾された寝台。
枕元にはブラウンカラーのテディベアとうさぎのぬいぐるみ。
家具は全てロココ調で出来てある、所謂お姫様部屋に私はいた。








………………嘘だ。


実際はフリル付きの寝具なんてないし、アンティーク家具やぬいぐるみだってない。

あるのは本棚に並べてある漫画やラノベ、空いている棚にはフィギュアが数体、
壁には私が愛してやまないアニメキャラクター達のポスターが貼られてあるヲタク部屋。


女か男か性別判断が難しいヲタク部屋。



そのヲタク部屋のド真ん中に突っ立っているヲタクの私。




どうして帰り道で殺されたばかりの私が自分の家にいるんだろうか。しかも立って。


まさかここまで歩いて来たー…とかじゃないよね?


結構重症を負ってたわけだし、当たり前だが気だって失った。

指を動かすのだけでも一苦労で、楽観視できる出血でもなかった。



……あの状態からすると、死は確定されたも同じ。





『ということは幽霊なのか私?』



ポタリ


一滴の涙が頬を伝い、服を濡らした。

一度落ちた涙は止まることを知らないのか、何かが切れた様にポロポロと流れ落ちる。
途端に嗚咽に変わり、体の震えに耐え切れなくなったのか床に膝をついた。



『……うっ……ヒッ、…く……うぅぅ』





死んだ。



死んだ。



死んだ。



―――――死ンダ。




頭の中でその言葉が幾度も駆け巡った。



もう戻る事が出来ない。



平凡で幸せだった私の人生。


両親や大好きだった友達の顔が浮かぶ。



もう皆に会えなくなるのか。
もうあの笑顔を見ることが出来なくなるのか。



皆の声音。皆の匂い。





触れる事さえも叶わない―――――――……。


『――――――――』












ワタシ ハ 死ンダノダ。








確認


(これはきっと夢)
(早く朝になれ)

(録り溜めてたアニメ観なくちゃいけないんだから)

 

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