DAY BY DAYブック

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――――――――それは唐突に起きた。










ドン



残業で普段より帰りが遅くなった午後8時。

街灯が少ないド田舎に住んでる私は、早く家で寛ぎたい一心で歩を進めていた。

時間を確認する為、携帯を見るがそれがいけなかったのだろう
右肩の衝撃と同時に、しまったと思った。

携帯画面に気を取られ、前方不注意で人にぶつかったのだ。

直様謝ろうと思い立つが、その人はぶつかった後
忙しなく走り去った為にそれは出来なかった。


何だったの?




その時だった。



口に出そうとする言葉は直ぐに引っ込みあることに気付く。


何か体に違和感を感じる。
気怠い体にムチを打ち、微かに震えている手をその違和感の方へ持っていき触れる。

何か硬い棒状な物がお腹についている。…………ついている?

何時からついていたいたのだろうか、どうしてついているのだろうか、どうやってついているのだろうか。


嫌な予感がしてならない。


棒のような物をゆっくりと辿りお腹まで手を這わせる。



ぬる



『 っ』


液体。

生暖かく鉄臭い液体。

どうやらソレは、自分の体から出ているらしい。
現在触れている箇所から指の間間から流れ落ちているのを感じた。

それらはその箇所から下へ下へと体を伝い、暗いコンクリート地面を更に濃くしていった。


 嗚呼、もしかしてさっきの人に刺されたのか?



そういえばと、今朝この辺りで無差別殺傷事件が多発しているとニュースが流れていたのを思い出す。


気を付けようと心に誓ったばかりなのに、すっかり忘れていた。


そうかじゃあこれは、私は、その事件の何人目かの被害者で―――……。


全身の力が入らず、どっと足元から崩れ落ちる。
コンクリートの硬さと冷たさが嫌に恐怖心を煽らせた。

止めど無く溢れる血液は、倒れた全身に染み渡り
例え今救急車を呼んだところで、出血多量で助からないだろう。


それに



『……ッ、ごふ』


どうやら私のお腹に刺さってるコレは、ただの刃物じゃないらしい。
吐血が止まらないとこからして、確実にいくつか内蔵が潰れている。

毒か何かが仕掛けられていたのだろうか?
傷口からじゃ飽き足らず、血が喉を伝い逆流してくる。


クソッ……。あの野郎……。


先程走り去った長身のシルエットを心の底から恨んだ。

まだ私の人生はこれからだってのにこんな呆気なく、しかもこんな死に方で終わってしまうのか。


そんなの嫌だ。


死ぬと分かっていても、誰かに助けを求めようと口を開いた。


『――――――――』


歯の根が合わない。出血多量で意識は朦朧とする。

その間、身を走り抜ける激痛と悪感で涙も溢れ出てしまう。



『あ……ぁお………』


ごぼごぼと溢れ出る血泡のせいで発声が上手くいかない。


どうしようどうしようどうしよう。
嫌だ嫌だっ、死にたくないよ。怖いよ。



フワリと視界に映った人影に好機とばかりに力を振り絞って手を伸ばす。

『……けて』



『…助……てッ』


お腹の底から血と共に声を吐き出すが、それは徒労に終わった。



人影が慌てて近付いてくるのを最後に、私の意識はプツリと途絶えてしまった――――――……









結尾


 

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