□一緒に“いきたかった”けど…
1ページ/1ページ

瀞霊挺内に侵入してきた“見えざる帝国―ヴァンデンライヒ―”との闘いの最中。
唇に傷のある男は言った。

『共に生きたものとは、共に死すべし』と。

ややツリ気味で、切れ長の目。そこから放たれる涼しげな視線。
心を窺わせない薄氷の表情。
黒髪と言う事を除けば、長身痩躯なその姿が、まるで開眼した時の、今はもう居ない銀髪の男に似ていたから、乱菊は『それが自分の流儀だ』と言った男の言葉に、一瞬出遅れてしまった。

百年前までは、あたしとギンはいつだって一緒だった。
死神になってからの百年も、そう。
ギンが死んでから、本当はずっと繋がっていたんだと知った。

『共に生きた者とは共に死すべし』なんて、ギンに似た男が言うから、どうしてもギンの顔がちらつく。
ギンの言葉でもなんでもないのに、ギンが言ったかの様に、何度も反復してる。
むしろ願っていたのかもしれない。
ギンが言った言葉であるかのように、その言葉通り、私を連れて行って欲しくて。

なぜなら私自身、ギンの後を追って死んでしまおうかと何度思ったか知れなかったから。
だから命を絶つ代わりに、女の命とも言われる髪を切り落とした。
せめて体の一部だけでも、ギンの元へ行きたくて。

私の心はその時死んだ。
それからは新しい生の始まり。

だから今は、強く思う。死にたくないと。
死ぬなら幼き日を共にしてきた者と一緒がいい。
自分を殺すのも、100年愛した男の手であって欲しいと。


男の手から伸びた鉄爪が、動きの鈍った私の体を裂いた時、私は自分を殺そうとする男の顔を改めて見た。
そしたらなんてことはない。
どこをギンと重ねたのかと自分に問いたい位、立ちはだかった男はギンには全然に似てなかった。
笑っちゃうわ。

私にとっては、あんたの方が恐ろしかった。
鋭利な優しさであたしを貫いた、あの白刃の日。
そう。
私にとってあんたは、鬼より神より恐ろしい。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ