MASQUERADE

□MASQUERADE
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目を覚ますと、夜中だった。
あれからけっこう寝てしまったようだ。
「嶺二…」
「んー……」
嶺二が擦り寄って来てくれたことは嬉しいのだが、早く処理しないと困るのは嶺二の方だ。
「おい…風呂行くぞ」
「やぁ…ん」
相当疲れてるのか、安心してるのかなかなか起きてくれない。
「ったく…」
俺は一度ベッドから下りて嶺二を抱えた。


熱いシャワーを浴びて暫くして漸く嶺二が目を覚ました。
「あれ…?蘭丸?」
「あ?どうした?」
きょとんとした表情に顔を覗き込む。
「もう帰ったのかと思った…」
意外な一言に身体を洗う手が止まる。
「前は、こういう風に一緒にお風呂とか入らなかったし」
小さなぼやきみたいな声に納得する。
「本当は入りたかったけどよ…お前が嫌がると思ってできなかったんだよ」
なんだよ、案外嬉しそうじゃねえか。
「後ろもごめんね…後処理してくれたでしょ」
「もともとは俺が出しちまったものだし…」
嶺二は身体大丈夫?と俺に触れた。
「ああ、お前こそ大丈夫か?腹とか痛くねえか?」
「腰が…ちょっと痛いかも」
ぼくも年だからね、と苦笑する。
「でも、喉はかれてないみたいだな」
あんなに声張り上げたくせに声の調子はいつも通りだ。
「伊達にアイドルやってないもん」
「ん…そうだな…」
それからは暫く沈黙が流れた。
2人で湯船に浸かると自然に身体が密着する。
そのくせ嶺二がこちらを向いているので、変に緊張する。
どうしたものかと考えあぐねていると、嶺二が口を開いた。
「あ…蘭丸、そういえば気になってたんだけど…あの日、ぼくがトキヤの前で倒れた日…なんでぼくは蘭丸の所に行くことになったの?」
そういえばそんなこともあったな。
「…トキヤから、連絡が来たんだよ」

久しぶりのオフでベッドに寝転んでいると、携帯が鳴った。
「誰だよ…ん…?トキヤ…?」
確かトキヤは今日嶺二と仕事だったはず。
妙な胸騒ぎがして携帯を取ると、珍しく取り乱しているようだった。
『黒崎さん、今すぐ来てくれませんか?』
「どうした?何かあったか?」
『寿さんが倒れたんです…何をしても起きませんし…それにずっと貴方の名前を呼んでます』
嶺二が俺の名前を…?
なんで?
「分かった…お前は仕事の方を頼む」
『はい…よろしくお願いします』
携帯を切り、俺は嶺二を迎えに行った。

「蘭丸の名前を…?」
「ああ、目が覚める直前までずっとな」
蘭丸と寝ないと決めて体調が悪くなり、そして気を失っても蘭丸の名前を呼んでいた。
それは全て素直に自分の思いを認めてこなかったから。
好きだということを気付かないふりをしていたから。
「素直じゃないって損だね…」
その時は認めたくないとむきになっていたけど、認めてしまえば案外楽だった。
「素直じゃないお前も好きだぞ」
蘭丸が頭を撫でてくれる。
心地良くて目を閉じると、唇が重なった。
すぐに離れてしまったけど、とても甘い。
抱きしめられると鼓動が息遣いが近くに聞こえる。
温かくて、心地がいい。
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