MASQUERADE

□MASQUERADE
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耳元で風が鳴る。
降り続く雪に溜息が出る。
マンションまでもう少しなのに、憂鬱だ。
「雪ではしゃげるような歳じゃないし…車も走らせにくいし…」
マフラーに口元を埋める。
それだけで寒さがいくらかマシになった。
「…やっと着いた」
マンションが見え、息を吐くのも束の間、目を疑った。
マンションの前に誰かいる。
この季節にしては寒そうな薄い革ジャンに特徴的な銀髪。
「蘭丸…?」
心臓がぎゅっと握り潰されたように痛む。
今、一番会いたくなかった人物。
あっちも気付いたらしく、白い息が吐きだされた。
でも、近付こうとはせず、こちらを見ている。
無視して入ろうとすると、腕を掴まれた。
冷たい手で長く待っていたことが分かった。
「嶺二」
「…何…」
今すぐに手を振りほどいて逃げればいい。
そうすればきっとまた…何も無かったように、話せる。
今は、駄目だ…。
なのに、拒めない。
「寒い…」
「そりゃ、こんな雪が降ってる中立ってりゃ寒いでしょ」
「節電してんだよ、今」
「アパートで凍死する気…?」
「話がある…部屋入れろ」
蘭丸がぼくの身体を引き寄せ、抱きしめてきた。
「蘭丸…止めて…」
「いやだ…入れてくれるんなら止める」
一向に離そうとしない蘭丸の腕を掴む。
「…こんままじゃ、2人とも風邪ひいちゃう」
「だから…入れろっての」
何を言おうと譲る気は無いらしい。
ぼくは溜息を吐いて、入ってと小さく呟いた。
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