MASQUERADE

□MASQUERADE
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がちゃりとドアを開けると、特にそのことに文句を言うでもなく、いらっしゃいと嶺二は言った。
既に部屋には唐揚げの揚がる音と香ばしい香りが漂っている。
ベースを下ろし、疲れた身体をソファに沈める。
「蘭丸、もうできるから手を洗ってきてよ」
ギロリとこちらを睨んでくるその姿はアイドル“寿嶺二”のイメージから大きくかけ離れている。
でも、これが本当のこいつの姿なのだ。
「てめえは俺の母ちゃんか」
「蘭丸みたいなドスケベ息子、こっちから願い下げだよ」
丁寧に盛り付けられた唐揚げにこいつの神経質さが表れている。
「俺だって、てめえみたいな母親なんて要らねえよ」
「うーわー、ひっどーい。れいちゃんしょぼんだよっ」
俺は眉間に皺が寄るのが分かった。
「ムカつくんだよ。それで喋んじゃねえ、殴るぞ」
苛々する。
“寿嶺二”というアイドルに。
「はいはい。一応アイドルなんだから、そういうの止めてよね、ラーンラン」
挑発的な言動に頭に血が上り睨みつけるが、早く食べなよ、と躱された。

「ご馳走様。美味かった」
食べ終えると、嶺二は何故か笑った。
普段の嘘くさい笑いではないそれに少し驚くが、何だよ、不機嫌な声をあげた。
「蘭丸がちゃんと挨拶とかすると面白くてね」
柔らかい声音にいつもの刺々しさも嘘くささもなくて、心臓が跳ねる。
皿片付けるよと立ち上がる姿を目で追う。
妙に色っぽく見えてしまい、やばいな…と小さく呟く。
俺は立ち上がると、嶺二を後ろから抱きしめた。
嶺二はさして驚く様子もなく、溜息を吐いた。
「また欲求不満?…最後にシたのいつだっけ」
「一昨日」
首筋に顔を埋めると、嶺二の肘が鳩尾に入った。
「スるならベッド」
「ったく…分かったよ」
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