小説置場
□好きだけど、好きだから、
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「與儀…」
俺を抱きしめたまま與儀は寝てしまった。
いい香りが俺を包む。
心臓が痛い。
「お前には分かんねえんだろうけど」
俺、こんなに他人を大切にしたいって思ったの初めてなんだぜ。
「花礫くぅん…」
寝言で名前を呼ばれ、クスっと笑う。
くすぐったいな。
熱いな。
これが恋なのか。
この苦しいような甘いような感情が。
「ごめんな、與儀」
お前のこと、本当に好きなんだ。
今まで知らなかったんだ、こんな感情は。
だから。
「もう少し、我慢してくれ」
俺がお前を抱きしめられるようになるまで。
お前にキスできるようになるまで。
お前の“好き”を正面から受け止められるようになるまで。