マスターコースはじめました。

□マスターコースはじめました。
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「マスターコースだぁ?なんで俺がそんなもん担当しねえといけねんだよ」

「ぼくに言わないでよ…あーもう食べながら喋るからごはんがぼろぼろ落ちてるよー」

龍也先輩に頼まれてぼくが代わりに蘭丸にマスターコースでの監督役について話すと案の定眉を釣り上げた。

そうだよねー、一匹狼くんには似合いませんもんねー…と苦笑い。

とりあえず、担当の後輩の資料を渡すと、ちらりとそれを見た。

なんだ、興味あるんじゃないと思ったら、弁当の割り箸を思い切り砕いた。

割ったんじゃない、文字通り砕け散った。

「親父は何考えてやがる…」

「あー…やっぱしお知り合い?」

資料に載っているのは、2人とも財閥の御曹司様。

こんなナリでも、蘭丸も元財閥の御曹司様、だしね。

知っているかもとは思っていたけど、ここまで嫌悪感たっぷりだと不安になってきた。

「パスだ。俺はぜってぇしねえ」

やけくそに弁当をかき込む蘭丸をまあまあと宥める。

「アイアイもミューちゃんも渋々ながら了承したしさ、後はランランだけなんだってー」

「人を人として見ねえ奴らのことだ。どうせ、研究対象だ、下僕だ言ってんだろ」

「あはは、それは当たってるけど」

流石だな、活動は少ないとはいえ、一応ユニットメンバーの性格はしっかり理解している。

「てめえは頼まれたことは断れない質だしな、例え自分がしたくねえようなことでも」

含みのある言い方にむっと口を引き結ぶ。

「別に嫌じゃないもん…とにかく、明日打ち合わせあるからよろしくね、ランラン」

「っち、勝手にしろ」

楽屋を後にして、ふうと息を吐く。

なんていうか、つくづく気難しい子だ。

でも、きっと来てくれるだろう。

面倒くさそうに、頭を掻きながらそれでもちゃんと来てくれるだろう。

彼はああ見えても優しいから。



・・・・・・・・・



「以上がマスターコース監督役の説明だ。嶺二は経験してるから分かってると思うが、相当キツいからお前らも覚悟してろ」

龍也先輩が鋭い目でぼくらを見る。

確かにマスターコースは指導する側もされる側も大変だ。

それでも、龍也先輩はぼくをしっかり指導してくれた。

そのおかげで今のぼくがある。

龍也先輩が会議室から出て行くと、藍が眉根を顰めた。

「この登場のパフォーマンスって必要性を感じないんだけど」

「確かにな。なぜ愚民どもに俺達の歌とダンスを披露する必要がある」

「しかも新曲かよ、たりー」

「そんな3人揃って嫌がんないでよー。後輩達にぼくらの実力を見せる絶好の舞台だよー」

必死に説得するが、不服そうだ。

個性が強いのは良いことだ。

それだけユニット活動に可能性を見出せるし、面白みもある。

ただ、我の信念とか強いのは困りものだ。

一度言えば自分の意見は曲げない、自分が一番正しいと思い込む。

それはただ悪いことしか生み出さない。

「そ・れ・と・も〜、皆は後輩に見せるのも恥ずかしい位、技術が劣ってるのかなー?」

にこにこと毒を吐くと、はあ?と蘭丸が立ち上がった。

「俺の技術が劣ってる?馬鹿も大概にしろよ」

「ボクの技術は計算し尽くされてる。欠陥なんてあり得ないね」

「無礼もここまで来ると笑えもせんな、寿」

即座に反撃してくる3人を宥める。

「じゃあじゃあ、登場のパフォーマンス、してくれるよね??」

ぼくの言葉に唸る3人。

まんまと嵌められたって顔してるけど、あそこまで分かりやすい挑発って無いと思うよ。

「っち、嶺二てめえ」

「はいはい、怖い顔しない。マスターコース、頑張ろうね」


これから始まるのはきっと苦難の道。


でもね、ぼくは皆がいてくれれば乗り越えられるってそう思うよ。



つづくよんっ♪
 

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