戦国BASARA
□紅の誘惑
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埃っぽい空気。
風で巻き上がった砂が目に入って痛い。
時折響いてくる呻き声と、誰かが駆ける足音。
目の前に血塗れで転がっている己と同じ眼帯の男。
「随分な様じゃねぇの、元親」
「は・・・、てめぇがやったくせによく言うぜ。政宗」
腹に刺さった刀の隙間から温い血がどくどくと溢れている。
こふ、と元親の口から吐き出された紅が顎に線をひいて落ちていく。
うつろな目、ひゅーひゅーと掠れた呼吸。
死に向かう鬼の姿は何とも滑稽だった。
視界を埋めるのは、赤、紅、朱。
白に近い銀髪も赤黒い血で染まって固まっている。
(鬼の血か…)
どんな味がするのだろうか。
歩み寄って元親の顔に自分の顔を近付けてみた。
噎せかえるほどの香りに眉をひそめる。
それから、そっと口付けてみた。
唇についた血を舐めとるように舌を這わせる。
(甘ぇ…)
と思った。
男はとうに息を止めていた。
刺さっていた刀を抜いて鞘に納める。
早く帰って、血拭かねぇと。
「政宗様」
「・・・小十郎」
小十郎は俺の全身にざっと視線を巡らせて、次に地面に倒れている男を見て、今度は俺の口元で目をとめる。
「・・・」
無言で俺に近付いてくると、さっき俺がしたみたいに唇を舐めるようなキスをした。