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□見守る専門
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「名無しさん、このくらいか?」
『ん?・・・あぁ、それくらいでいいよ』


今日はヴァルキリーの自宅に呼ばれた名無しさんはヴァルキリーと一緒にお菓子作りをしていた。前に名無しさんがお菓子を作って神様たちに配っていた時に、ヴァルキリーから教えてほしいということで、今、簡単なものを作っていた。


「名無しさんは本当に何でも知っているな」
『ただの趣味なだけだよ。まだ教わることも多いほうだしな』
「それでもお前が今までしてきた努力を私は見てきているぞ」
『ありがとな』


“じゃあ、焼きあがるまで片付けでもしようか”と名無しさんはいい、さっきまで使用していた道具を洗い始めた。名無しさんが洗ったものをヴァルキリーに渡して拭いた。そんなことをしている最中にふと、名無しさんの頭に浮かんだ言葉あり、それをヴァルキリーに聞いた。


『なぁ、ちょっと聞きたいことがあるんだがいいか?』
「構わないぞ。どうかしたのか?」
『いや大したことではないんだが、ヴァルキリーとジークフリートって付き合ってないんだよな?』
「!?」


ガチャン!!


『! おい、大丈夫か?』


名無しさんが後ろを見ると、ヴァルキリーが持っていたお皿を床に落としていた。声をかけるがヴァルキリーは・・・。


「お、お前が突然変なこと言うから驚いたではないか!」
『いや、すまん;・・・とりあえず、こっちの片付けは俺に任せて、他のをお願いするよ』


名無しさんは大きい破片を拾い集めて、持ってきていた袋に入れた。細かいものは小箒で拾う。一通り片付け終わると、ヴァルキリーから質問される。


「・・・それより何故、突然そんなことを言ったんだ?」
『いや、この間さ、アルテミスと喋ってた時にヴァルキリーとジークフリートって付き合ってるんじゃないの?って聞かれたもんだからさ』
「私とジークフリートは・・・べ、別にそんな関係ではないぞ!」
『大きな声で言われなくても俺はわかってるって;』

“その時にちゃんと訂正はしといたからさ”と言いつつ、ヴァルキリーを落ち着かせる。


「お前だって・・・」
『ん?』
「特別に想う人はいるのではないか?」
『・・・』


ヴァルキリーにそう言われて、名無しさんは目を丸くした。だがそれも一瞬のことですぐに話し出す。


『い、いないわけではないが、基本俺は見守る専門だからな』
「ん? 見守っているだけ?」
『そう。俺はその人が笑顔でいてくれればそれで十分満足なんだよ。隣にいるのが俺じゃなくてもね』
「そういうものなのか?」
『まぁ、俺の場合はって話なだけだよ』
「・・・なるほど」


なるほどと言いつつ、ヴァルキリーの顔は少し悲しそうに見えたのは気のせいだろうか。名無しさんはその理由がわからなかった。そして少ししてヴァルキリーが話し出す。


「私は思うのだが・・・」
『?』
「お前に想われている人は幸せ者だな」
『えっ・・・そうか?』
「ああ!私だって・・・嬉しいと思うぞ」
『!?』


不意打ちをくらって名無しさんは顔を赤くした。今度はヴァルキリーが名無しさんのこと心配する。


「大丈夫か?顔が赤いが・・・?」
『だ、大丈夫だ!・・・ちょっと、外の風に当たってくる』


そういうといきよいよく名無しさんは外に出て行った。その後ろ姿を見て、ヴァルキリーは不思議に思うのであった。




END

(名無しさんは大丈夫だろうか・・・)
(不意打ちをくらうとは・・・情けないなぁ、俺・・・。むしろさっきのは反則だろ・・・)

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