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□♡無垢な彼女
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席替えで一番後ろの窓際の席が当たった。


今回はツイてる…

ここに当たるなんてそうそうないことだ。


机をさっさと運んで席に座る。


「うんしょ…うんしょ…」

「おい、小山(コヤマ)大丈夫か?」

「大丈夫です!」


一番前の席から机と椅子を一生懸命運んでるのは見た目が完全に小学生の小山だった。
その見た目だけに机を運ぶのも大変そうに見えて先生も心配していた。


「大野(オオノ)!隣の席なんだから運んでやれ」

「あ、はい」


俺は小山の所に行って机を持った。

なんか…この机低くね?

小学校の頃は人によって机の高さ違ったが、今の歳になって机の高さの低い机があることに驚いた。


「大野君ッ!大丈夫だもん!琴美(コトミ)一人で運べるもん!」


すごい睨まれてる…。
気は強いんだよな。ポメラニアンみたいだ。


「ハイハイ。時間掛かると休み時間減るからな」


小山の言葉を流してさっさと机を運んだ。

っつーか隣って一番後ろの席だけど…


机を運ぶと、小山はむくれながら椅子に座った。


「………ありがと」

「あぁ」


一応お礼は言うんだ。

そして、小山の前に来たのは相撲部の一番デカいやつ。

案の定小山は前が見えないらしく、キョロキョロしていた。


「前の方の席のやつと代わってもらえば?」

「平気だもん!」

「誰だー?デカい声出してるやつは……ん?小山?こっちからも見えないな。ほら、席代わってもらいなさい」

「やだぁ!くじ引きで決まった席だもん……」


小山はスカートをギュッと掴んで泣きそうだった。

小さいからという扱いを受けるのがよっぽど嫌なんだろうな…。
見てて心配になる気持ちもわかるけど。

俺は小山の机を自分の隣にくっつけた。


「え?大野君なにするの!?わぁ!やだぁ!」


小山が座っている椅子も小山ごと持ち上げて移動させる。


「ここだったら通路のところだから黒板見えるだろ?」

「ああ!本当だー!見えるよー!」

「先生、授業中だけならいいですよね?」

「あ…あぁ。いいだろう」


小山はこんな簡単なことだったが、無邪気に笑っていた。
よっぽど嬉しいらしい。
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