アベック
U.Tatsuya ver...
普通のカップルは、学校の帰りなんかはお互いの手と手を取り合い、その日あった出来事や たわいのない話なんかしながら幸せいっぱいに笑い合い、帰るのだろう。
私たちはそんなカップルの枠から外れている。
学校の帰り道、いつも私の三歩前を歩く竜也。
その見慣れた背中に、待ってなんて台詞はもう言い飽きた。
竜也は極度の恥ずかしがり屋で付き合って半年が経つが、周りに人がいるときは並んで歩くこともなければ、手なんて繋ぐなんてこともしない。
「今日も来る?」
『うん。』
帰りは決まって竜也の家へ遊びに行くのが日課。
彼の家に帰り着いた途端、彼は私をきつく抱きしめてくれる。
優しく香る彼の香水の匂いがとても心地良く感じる瞬間。
『竜也さぁ…いい加減隣で並んで手繋いで帰るのに慣れようよ。』
彼は私を抱きしめたまま黙り込んだ。
『…竜也?』
そしていつものように甘く優しいキスをされる。
「やだ。恥ずかしいもん。」
帰り道、大好きな彼と並んで手を繋げなくても、その笑顔を見ると
ま、いっか 私はこんな彼が好きなんだと、思ってしまうんだ。
END