長編 -ツバサ RESERVoir CHRoNiCLE-

□高麗国
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Chapitre.15 秘術の国



春「誰かれ構わずちょっかい出すな!このバカ息子。」

屋根の上から腕を組み、叫ぶポニーテールの少女。

小(女の子?)

ブ「春香(チュニャン)!!」

頬を腫らした大男が叫んだ。

ブ「誰がバカ息子だ!!」

春「おまえ以外にバカがいるか?」

春香はわざとらしく辺りを見回す。

それが男の気に障ったらしい。

ブ「このー!」

「失礼な!高麗(コリョ)国の蓮姫(リョンフィ)を治める領主(リャンバン)様のご子息だぞ!」

大男の使者が騒ぎ立てた。

春「領主といっても、一年前まではただの流れの秘術師(シンバン)だったろう。」

ブ「親父(アホジ)をばかにするかー!領主に逆らったらどうなるか、分かってるんだろうな!春香!!」

この言葉にさっきまで強気だった春香が、ぐっとこらえ唇を噛んだ。

ブ「この無礼のむくいを受けるぞ!覚悟しろよ!」

そう言うと、男達は帰っていった。

小「怪我は?」

サ「大丈夫です。ありがとう。」

小狼は優しく微笑んだ。

フ「やー、なんか到着早々派手だったねー。」

モ「小狼すごいー!」

モコナは跳び蹴りの真似をする。

黒「小娘、大丈夫か?」

『…はい。』

アリシアの顔色が優れない。

小「あ。」

小狼は自分達が落ちたため、箱が倒れ野菜が落ちているのを見つけた。

小「すみません、売り物なのに。」

小狼はお店の人に謝った。

モ「モコナもお手伝いするー!」

フ「ほらー、黒ぴんも拾ってー。」

黒「あー?めんどくせーなー。」

全員で拾い集める。

サクラは食材を集めながら、小狼を見つめていた。

春「あいつら、また市場で好き勝手して!」

先程の女の子、春香は屋根から降りてきたようだ。

「この町にも早く暗行御吏(アメンオサ)が来てくれればいいんだが…。」

お店の人が言った言葉に、春香はまた唇を噛んだ。

はっと顔をあげた春香。

小狼達を見て一言。

春「ヘンな格好。」

いきなりストレートだ。

フ「あはははははー。ヘンだってー、黒りんの格好ー!!」

ファイとモコナが笑う。

黒「俺がヘンならおまえらもヘンだろ!」

ウガーと怒る黒鋼。

あんなに怒って疲れないのだろうか。

春「おまえ達、ひょっとして!!」

春香はサクラの手を掴んだ。

春「来い!」

春香は走り出した。

もちろん、サクラは連れていかれる。

小「待って下さい!」

フ「なんかいそがしいねぇ。」

黒「めんどくせー!」

と続いて走り出した三人。

モコナもついていったようだ。

『あ、あの…!』

取り残されたアリシア。

その周りには地面に転がった野菜達が…。

『もうっ!仕方ない。』

『旋風(ウィンド)!』

アリシアが唱えた。

すると床に落ちていたもの全てが浮き、それぞれ箱の中へ戻っていった。

『これで良し!追いかけなくちゃ!』

アリシアは急いで皆を追いかけた。
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