長編 -ツバサ RESERVoir CHRoNiCLE-

□ジェイド国
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Chapitre.25 御伽の国



じろじろ じろじろ


フ「なんか注目されてるねー。」

あははーといつもの笑顔でそう言うファイ。

小「やっぱりこの格好がいけないんでしょうか。」

フ「全然違うもんねぇ。ここの国の人達と。特に黒たんがー。」

黒「あー?」

黒鋼は使い慣れないナイフとフォークで食事をしていたのだが…。

『黒鋼さん、独創的な使い方ですね。』

黒「仕方ねぇだろ。」

ファイとアリシアの言う通り、この場に浮くような使い方でガチャガチャと音を立てていた。

いつも食事で黒鋼とケンカするモコナは今は大人しく座っている。

モコナはいい子で動かないでいるもんねー。とファイがモコナを褒めていた。

小「あの大丈夫なんでしょうか?」

フ「んん?」

この食事と付け足す小狼。

そんな二人のやりとりの側でモコナは黒鋼のお肉を吸い込んだ。

小「この国のお金ないんですけど。」

フ「大丈夫だよー。ねっサクラちゃん。」

サ「え!?」

急に話を振られたサクラは目を丸くした。

『あっ、なるほど。』

サクラの隣で納得というポーズをしたアリシア。

その隣では黒鋼がモコナに怒っていた。



―――――



ザワザワ


「お嬢ちゃんのカードは?」

サ「えっと、こうなりました。」

サクラが手に持っている5枚のカードを相手に見せた。

そのカードには全てクラウンが書かれていた。

「何度やっても負けないなんて!どうなってるんだ一体!?」

「イカサマじゃないのか!?」

勝負していた二人が怒鳴りあげた。

フ「イカサマしてるヒマなんかなかったでしょー。」

ファイはそう言いながら勝負にかけられたお金を回収していく。

フ「文句あるならあの黒い人が聞くけどー?」

ファイが指差したのは、少し離れた席にいるモコナにお肉を取られ続けて不機嫌な黒鋼。

その側ではアリシアがファイ達を見ていた。

黒「あぁ?」

不機嫌な黒鋼は呼ばれたことにギロッと睨みながら振り返った。

「い…いや!」

「う、疑って悪かった!」

男は黒鋼の怖さに怖じ気づいてしまった。

フ「はい、サクラちゃんお疲れさまー。これで軍資金ばっちりだよー。」

ファイはサクラを先程食事をしていたテーブルまでエスコートした。

三人が席に着くと店の男がそれぞれに飲み物を置いた。

「しかし凄いなお嬢ちゃん。」

サ「ルールとか分かってなかったんですけど、あれで良かったんでしょうか。」

「あははは、面白い冗談だな!」

本当はルールを知らなければ勝てないゲーム。

しかしサクラは強運の持ち主で関係ないのだ。

「変わった衣装だな。旅の人だろう?」

小「はい、探しものがあって旅を続けています。」

「行く先は決まってるのかい?」

小「いえ、まだ。」

「…だったら悪いことは言わん、北へ行くのはやめたほうがいい。」

疑問を浮かべる五人。

フ「なんでかなぁ?」

ファイが尋ねた。

「北の町には恐ろしい伝説があるんだよ。」

小「どんな伝説なんですか?」

小狼が身を乗り出した。

∽∽∽

昔、北の町のはずれにある城に金の髪のそれは美しいお姫様がいたらしい。

ある日、姫の所に鳥が一羽飛んできた。

輝く羽根を一枚渡してこう言ったそうだ。

「この羽根は『力』です。貴方に不思議な『力』をあげましょう。」

姫はその羽根を受け取った。

そうしたら王様とお后様がいきなり死んで姫がその城の主になった。

そしてその羽根にひかれるように次々と城下町から子供達が消えていって二度と帰って来なかったそうだ。

∽∽∽

フ「それはーおとぎ話とかいうヤツかな。」

「いいや、実話だよ。」

ファイの言葉に店の男は首を横に振った。

小「実際に北の町にその城があるんですね。」

「もう三百年以上前の話だからほとんど崩れちまってるがな。」

フ「で、そんなこわい話があるから北の町には行っちゃいけないのー?」

夜寝られなくなるからー?とファイが冗談めかして言った。

ファイの向かいにいるアリシアはただ黙って話を聞いていた。

「いや、伝説と同じように、また子供達が消えはじめたんだよ。」
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