長編 -ツバサ RESERVoir CHRoNiCLE-

□霧の国
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黒「で、どこなんだ、ここは。」

春香達とお別れして次に着いた世界は、沢山の木と大きな湖と深い霧の森だった。

フ「おっきい湖だねぇ。」

小「人の気配もないみたいですね。」

『人がいないせいか、空気が凄く澄んでる。』

アリシアは深呼吸した。

フ「モコナどう?サクラちゃんの羽根の気配するー?」

モ「強い力は感じる。」

モコナはファイの問いに、考える素振りをして答えた。

小「どこから感じる?」

モ「この中。」

モコナが指したのは大きな大きな湖だった。

黒「潜って探せってのかよ。」

こっくりと頷いたモコナ。

意外と鬼畜なのかもしれない。

サ「待って。わたしが行きま……す。」

バッと飛び出したサクラだったが、ふら〜と後方に倒れた。

黒「おっと。」

丁度後ろにいた黒鋼が片手で頭を支えた。

『黒鋼さん、もうちょっと優しく抱き止めないと。』

黒「仕方ねぇだろ、いきなりだったんだから。」

アリシアの文句に言い返す黒鋼は、抱き直す素振りを見せなかった。

アリシアの頬が膨らむ。

モ「サクラ寝てるー。」

フ「春香ちゃんの所で、頑張ってずっと起きてたからねぇ。」

『限界がきちゃってたんですね。』

全員でサクラの顔をのぞきこんだ。

フ「取りあえず手分けしようかー。小狼君は…。」

ファイはサクラを木の根元に横たわらせ、自分の上着をかけながら言った。

小「湖に入って、サクラ姫の羽根がないか探してきます。」

『じゃあわたしは体を温めるためにも、薪を取ってきて火をおこしますね。』

フ「分かったよ。オレはこの辺に人がいないか探索してこようかな。黒ぽんはオレと一緒ねー。」

黒「はっ!?なんで俺がお前と一緒に行かなきゃならねぇんだよ。」

フ「それは黒様が寂しがりやでー、照れ屋でー、怖がりさんだからー。」

黒「て、てめぇ…。」

黒鋼の額に青筋が立つ。

モコナはファイ達に付いていくようで、ファイの肩で‘怖がりさーん’と囃(はや)し立てている。

フ「というわけで、黒ぴーはオレがいないと駄目だから、一緒に行ってあげるよー。」

ファイの最後の言葉と笑顔にキレた黒鋼。

黒「てめぇ!いい加減にしやがれー!!」

フ・モ「わー!」

ファイとモコナは声をあげながら森へと進み、黒鋼もその後を追いかけていった。

《…死体を連れて来なければいいけど。》

アリシアは溜め息をついた。

『それじゃあ、わたしは薪を取ってくるので、小狼さんはそれまでサクラ姫と、荷物を見ていて貰っても良いですか?』

小「分かりました、お願いします。」

アリシアはその言葉を聞くと、森の中へと姿を消した。



―――――



ガサ ガサ ガサ


『やっぱり空気が綺麗。妖精達も住んでる。』

サ〈ルナと出会ったのもこんな森だったな。〉

[キュー]

『そうだったね。遠い昔のように感じちゃうよ。』

アリシアは口を動かしながらもテキパキと薪となる枝を拾っていく。

シ〈主様ー、果物ですー!〉

シルヴィアが指差した先には、確かに橙色の果物が木にぶらさがっていた。

『あれ、食べられるの?』

ウ〈同じような物を鳥が食べたり、小さな動物達が運んだりしていたので、食べられるのでは。〉

サ〈じゃあ俺が取ってくる!〉

サラディーノが飛んでいくと、ノーラもその後を追った。

サ〈お、結構重い…。ヌシ、投げるぞ!〉

『えっ、よし来い!』

アリシアは薪を降ろし構えた。


パシ パシ パシ


投げられる果物を全てキャッチしていく。

サ〈おい、ノーラ手伝えよ。〉

ノ〈美味しい…。〉

ノーラは優雅に果物の味を堪能していた。

『これくらいで良いよー。』

果物をバッグに詰め、再び薪を抱えた。

『じゃあそろそろ戻ろうか。』

アリシア達は来た道を戻っていった。
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