長編 -ツバサ RESERVoir CHRoNiCLE-

□日本
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ここは願いを叶えるミセ

侑「この子の名はサクラというのね。」

侑子(ゆうこ)は尋ねながら、小狼に近付いた。

小「はい。」

侑「貴方は?」

小「小狼です。」

侑子はすっとサクラの額に触れた。

侑「この子は大切なものをなくしたのね。」

小「…はい。」

侑「そして…それは色んな世界に飛び散ってしまった。このままではこの子は死ぬわ。」

侑子の言葉に、小狼はサクラをギュッと抱き締めた。

侑「四月一日。」

四「は、はいっ!」

侑子の声に返事をしたのは、学ランを着た少年四月一日(わたぬき)。

侑「宝物庫に行って来て、取って来て欲しいものがあるの。」

そう言われた四月一日は二人の少女に連れられ、宝物庫の方へ向かった。

侑「その子を助けたい?」

小「はい!」

侑「対価がいるわ。それでも?」

侑子は小狼を見定めるような目で見た。

小「おれにできることなら!」


キイィィィ


再び耳につく音が辺りに響いた。

侑「…来たわね。」

小狼の左下から、右上から空間が歪み、渦を巻いて現れた。

左に現れたのは黒い影、黒鋼。

右に現れたのは白い影、ファイ。

小狼は二人が出現したことに驚いた。

黒「てめぇ、誰だ?」
フ「貴方が次元の魔女ですか?」

黒鋼は侑子に‘ああん?’とガンを飛ばし、ファイはへにゃっと笑った。

言葉が重なったことにより、黒鋼がファイを睨む。

侑「先に名乗りなさいな。」

黒「俺あ黒鋼。つかここどこだよ。」

黒鋼が辺りを見渡しながら言った。

侑「日本よ。」

黒「ああ?俺がいた国も日本だぜ。」

侑「それとは違う日本。」

黒「訳分かんねぇぞ。」

‘さっぱりだ!’と黒鋼は言った。

そんな会話をする侑子は少し楽しげだ。

侑「貴方は…。」

侑子はファイに問うた。

フ「セレス国の魔術師(ウィザード)、ファイ・D・フローライトです。」

ファイはスッと、優雅にお辞儀をした。

侑「ここがどこだか知ってる?」

さらにファイに問う。

フ「えー、相応の対価を払えば願いを叶えてくれる所だと。」

侑「その通りよ。さて、貴方達がここに来たということは、何か願いがあるということ。」

侑子は三人を見て言った。

黒「元いた所へ今すぐ返せ。」
フ「元いた所にだけは、帰りたくありません。」

二人とも同時に、かつ真逆な願いを言った。

ギロっと黒鋼は再びファイを睨む。

侑「それはまた難題ね、二人とも。いいえ、四人とも、かしら。」
 
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