奇奇怪怪

□18
2ページ/2ページ

.




拓篤から問われた質問。

1階の柱時計の前で、くるみは後からこの廃校に入って来た拓篤、朱里、楓の3人に事情を説明し始めた。



くるみ「うち等は、雨宿りのためにこの廃校に来た。全然雨が降り止みそうになくて、待ってる時間暇だから中を探検してみようって話になったんだ」


朱里「うん、そんな気はしてた」


くるみ「中に入った時のこの柱時計の時間はさっき言った通り1時17分。そこから探検を始めたの。最初に2−1教室に入って、」


拓篤「そこは慎司の写真を見て知ってる」


くるみ「写真・・・。そっか。拓篤達が見付けてくれたんだ、アレ」


拓篤「あの写真に写ってた黒板の正の字は何だ?何を表してる?」


くるみ「多分・・・回数」


拓篤「回数?」


くるみ「後で説明する」


楓「あ・・・そういえば、あたし達が見た時13になってたよな」


朱里「うん」


くるみ「え?」


朱里「写真は12だったけど、あたし達が見た時は線が1本増えて13になってたの」


くるみ「それ・・・どういうこと?」


拓篤「お前等がやったんじゃないのか?」


くるみ「知らない。だってうち等は・・・少なくともうちとカズは、最初に入ったっきりあの教室には入ってないもん」


楓「じゃあ他の誰かってことか・・・」


くるみ「多分・・・。

正の字を見付ける前にうち等は・・・・っていうか、カズがそこで朱里のボイスレコーダーを見付けて、」


朱里「え、あたしの?あたしのならここにあるよ」



ボイスレコーダーを取り出し、くるみに見せる。

ラインストーンでデコられた朱里だけのソレ。


うん、とくるみが頷く。



くるみ「カズが見付けたのは朱里のだけど・・・朱里のじゃなかったんだ」


朱里「?」


楓「どういう意味・・・?」


くるみ「順番に説明していくね。とにかく、朱里のボイスレコーダーを見付けて4人もこの廃校の中にいるんじゃないかってうち等は考えたんだ。

4人が、うち等を脅かそうと色々悪戯してるんじゃないかって・・・」


拓篤「んなバカなことすんのはこいつ(朱里)と華澄だけだ」


楓「激しく同意」


朱里「否めない」


くるみ「2−1の教室を出て、うち等は2−2の教室、そして・・・・家庭科室に行った。4人が何か仕込んでるんじゃないか、って色々探したんだ」


楓「それがあのコンロで温まってる悠香と紗那・・・後、おたまとなべのフタで遊ぶ健矢とカズの写真か」


くるみ「包丁だけがなくて、おかしいねって話をして・・・」


朱里「え、包丁?」


くるみ「?」


朱里「あたし達が行った時、あったよね?いっぱい」


楓「ああ。今もあるな」


くるみ「今も、って・・・?」



朱里が鞄を下ろし、そこからタオルでグルグル巻きにしている包丁を数本取り出した。

これでしょ?と言ってくるみに見せれば、彼女は目を丸くさせた。


そして、すぐに何かに気付いたように「そっか」と呟いた。



くるみ「4人が家庭科室に行ったのは、うち等が行った時よりも前の時間軸だったんだね。

朱里達が包丁を持ち出したから、うち等の時間にはそれがなかったんだ・・・」


楓・朱里「「あぁ、なーるー」」


くるみ「でも、何で包丁を持ち出したの?」


朱里「それは―――」


拓篤「まずはお前の話からだ。まだ続きがあるんだろ?」


くるみ「・・・分かった。

包丁がないのは不思議だったけど、朱里達を見付けようって話になってコンロを悠香が消そうとしたら・・・勝手に消えて、それと同時に健矢と慎司が持ってた懐中電灯も消えちゃったんだ」


楓「原因は?」


くるみ「分からない・・・。暗くて危ないから早く出ようってうちと慎司、健矢とカズが廊下に出たまではよかったんだ・・・」


拓篤「また何か起こったのか」


くるみ「うん。放送が鳴ったんだ。変な校内放送。〈校長先生、校長先生―――〉」


朱里・楓・拓篤「「「〈―――大きな箱が届きました〉」」」


くるみ「そう!その放送!4人も聞いたんだね・・・。

その放送が聞こえた後にすぐ家庭科室の扉が閉まっちゃって、それで・・・それで・・・・次に開けたら、中にいた瑠璃と紗那、悠香の3人が・・・」


朱里「3人が・・・?」


くるみ「―――消えてたんだ」


朱里・楓・拓篤「「「!?」」」


楓「消えた?どっかに隠れてたとかじゃなくて?」


くるみ「探したけどどこにもいなかった。

カズが、扉が閉まる瞬間に窓の外に誰かいたって言ってたけど・・・窓は割れてなかったし、開きもしなかったから外から何かされたわけじゃないと思う」


朱里「華澄と同じ・・・」


くるみ「うん・・・。その時も、時間が狂ってたんだと思う・・・・」


楓「3人は違う時間軸に行った・・・?いや、もしくは飛ばされた・・・・か」


くるみ「うち等は3人を捜すことにした。物置みたいな部屋を見て、」


拓篤「鍵は?」


くるみ「へ?」


拓篤「俺達がその部屋に行った時、留め金と南京錠で鍵がかかってた。その鍵はどうやって開けた?」


くるみ「鍵・・・?南京錠?何のこと?鍵なんてかかってなかったよ」


朱里「え・・・?」


くるみ「留め金だってついてなかったし・・・」



それを聞いて拓篤は眉を上げた。


今のくるみの言葉を信じ、くるみ達が自分達より先にあの物置部屋に行っていたのだとしたら誰かが後から鍵を取り付けたことになる。

逆にくるみ達が自分達より後にあの部屋に行っていたのだとすれば、誰かが自分達の後にあの部屋に訪れ、鍵を取り払ったことになる。


誰が?いつ?どうやって?何のために?

疑問はいくつも浮かび上がるが、答えは導き出せない。



拓篤「・・・・・・」


楓「なんか・・・頭おかしくなりそう・・・・」


くるみ「続けても大丈夫そう?」


楓「うん・・・頑張る」


朱里「あたしはもう深く考えるの止める」


楓「確かに・・・話を聞くだけならそれがいいかもな」


くるみ「物置にはいっぱい物があって、中にも入れなかった。うち等はその奥にあったショーケースを見て、そのまま昇降口に引き返した」


朱里「ショーケース・・・?―――あ、そういえばあの写真。拓篤、ショーケースの写真出して」


拓篤「ん、」


朱里「ありがと。

くーちゃんに聞きたいことがあったんだ」


くるみ「何?」


朱里「この写真のショーケースに写ってるくーちゃん達、凄く驚いた顔してるけど何で?」



彼女は拓篤から受け取った写真をくるみに渡す。

くるみが手にした写真に目を落とす。瞬間、目を見開いた。



くるみ「ウソ・・・」


朱里「やっぱり慎司に後ろから急に撮られたから?」


くるみ「違う・・・。けど、何で?何で何も写ってないの?」


楓「写ってないって・・・何が?」


朱里「ちゃんとショーケースも皆も写ってるよ?」


くるみ「中が写ってない・・・。ショーケースの中!何で何もないの?あの時は、ちゃんと―――」


拓篤「俺達が見た時は空だった。お前等の時は違ったって言うのか?」



彼の言葉を聞いて、くるみはまた驚いたような顔をする。

写真を凝視し、どういうこと?と口の中で呟く。


彼女は戸惑いつつも、自分の返事を待っている3人にぽつりぽつりと説明を始めた。



くるみ「中に何が飾られてるのか・・・。それが知りたくて、うち等は慎司のカメラのフラッシュを明かり代わりにしたんだ・・・・。

フラッシュで照らされて見えたのは・・・」



そこで彼女は僅かに言い淀む。

出来れば思い出したくなかった。口にするのもどこか悍ましい。それでも彼等にはちゃんと話さなければならない。


深呼吸を1度して、複雑な表情で自分達が見たモノを口にする。



くるみ「見えたのは・・・














―――人骨」








楓・拓篤「「!?」」


朱里「じん・・・こつ・・・・?」













くるみ「うん・・・子供の髑髏」













To be continued...

.
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ