奇奇怪怪

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朱里「誰かいるー?」



行方知れずの幼馴染7人。

彼等を捜してこの廃校にやって来た4人は、慎司が下駄箱に残していた写真を頼りに先へ進んでいた。


薄暗闇が広がる廊下の向こうへ朱里が声を飛ばすが返事は返ってこない。



朱里「反対側にいるのかな?それとも、上の階?」


華澄「口がきけない状態なのかしら」


楓「だからそーいうヤバイ想像するなって」


拓篤「出て来ーい、ニート、マゾ、陰キャ、まな板、単細胞、サイコ、八方美人」


楓「Σ流れるように悪口を吐くな!」


拓篤「うるせぇ、オタク」


楓「お前だってナイフオタクだろうが」


華澄「あらあら、喧嘩はダメよ。両成敗よ」



穏やかな笑みを浮かべてそう言う彼女の右手が上下に振り回される。

その手の中でカシャカシャと音を立てているのは、紛れもなく彼女が常備している催涙スプレー。


それを見た拓篤と楓は顔を引き攣らせる。

催涙スプレーを振りながら華澄は笑顔で続ける。



華澄「それと拓篤、他の皆の悪口はいいけど慎司の悪口だけは許さないわよ(ニッコリ」


拓篤「へいへい」
拓篤「(そいつが捕まってるかも、とか殺されてるかもって変な想像してたのは誰だよ)」


朱里「♯1.廃校探索」



自身が愛用しているボイスレコーダーのスイッチをRECに押し上げ、彼女は自分の声を録音し始める。



朱里「我々4人の捜索隊は今、2つの明かりを頼りに薄暗い廊下を進んでいます」



彼女は自分以外の声がレコーダーに入るのを嫌う。

それを知っている楓達3人は口を閉じ、心の中で「また始まった」とぼやくのだった。



朱里「未だ行方の分からない慎司が残した何枚もの写真。昇降口、下駄箱、柱時計、2−1教室、2−2教室・・・そして、次に写されている場所はここ、―――家庭科室でした」



閉め切られた家庭科室の扉。

その前で朱里はレコーダーに向かって続ける。



朱里「ここにあの7人はいるのでしょうか。それとも、また新たな手掛かりや新たな謎が残されているだけでしょうか。♯2へ続く」



RECにしていたスイッチレバーを下げ、レコーダーを切る。



朱里「さ、入ろっか」


楓「ソレ(録音)、こんな時でもやるのかよ・・・」


朱里「こんな時だからこそ、だよ。ブラックボックス然り、ドライブレコーダー然り、何かあった時に必要になるのが記録っていうものなんだから」


楓「念には念をって?」


朱里「そーいうこと♪」


拓篤「ただ録音したいだけ、ただ自分の声が好きなだけだろ、お前は」


朱里「否定はしない(笑」



ハァ、とため息を吐く楓と拓篤。

クスッと笑う華澄。


そんな3人を後ろに引き連れ、朱里は家庭科室の扉を開け、中に入る。

拓篤が朱里の隣に並び、すぐに2人のライトで辺りを照らした。



朱里「う〜ん・・・見たところ変わったところはないね」


華澄「この中を写したもので、写真には他に何が写ってるの?」


拓篤「アホが2人写ってる」



ほら、と言って彼は1枚の写真を女子3人に見せる。


そこに写っているのは、コンロの火で暖をとる悠香と紗那の2人だった。



華澄「平和ね」


朱里「他には?」


拓篤「バカが2人写ってる」



次の写真を見せる。


そこに写っているのは、なべのフタを構えるカズとお玉を剣のように持つ健矢の2人。

写真の中の彼等は揃ってキメ顔のカメラ目線だった。



楓「楽しそうだな、おい」


朱里「なんか・・・探検を楽しんでるって感じだね」


華澄「電気は通っていないのに、ガスは通っているのね」



引き戸の近くにある電気のスイッチ。

華澄がON、OFFを何度繰り返しても点く気配はない。



楓「水はどうだ?」


朱里「蛇口が固くて動かな〜い!」


拓篤「ゴリラのくせに何かわい子ぶってんだ」



と一蹴した彼の脇腹にすぐさま朱里の肘鉄が入る。

ぐっ、と呻き声を漏らし、体をくの字に曲げる幼馴染など無視して、朱里は何事もなかったように笑う。



華澄「朱里で無理なら私もダメね。拓篤はどう?」


拓篤「俺・・・そいつ(朱里)と、握力一緒・・・・」




楓「マジか




華澄「あらあら。じゃあ拓篤以上となると・・・後は慎司とカズ、泰雅ぐらいしか回せそうにないわね」


朱里「うん、諦めるしかなさそうだね」


楓「朱里、お前マジか。握力26って・・・マジか?」


朱里「ヤダなぁ、楓ったら拓篤の言うこと真に受けちゃって・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・右手だけだよ(ボソッ」




楓「マジか!




朱里「左!左は18ぐらいしかないから!本当だから信じて!」


華澄「それでも左が利き手の私と同じぐらいなんだけど・・・」


朱里「Σ!?」


拓篤「だからゴリラだっつってんだよ」


朱里「うぅ〜〜〜・・・(泣」


楓「22で喜んでたあたしの立場は・・・」


華澄「大丈夫。それでも強い方だから、自信持って楓」



ゴリラ、という言葉にショックを受ける朱里と、朱里に負けていたことにショックを受ける楓。

そして楓を慰める華澄。


そんな女子3人を放って、拓篤は家庭科室の中をざっと見て回る。

窓ガラスは2−1、2−2教室の時にも試したが割れそうにない。



拓篤「・・・ここには手掛かりも何もなさそうだな。さっさと次行くぞ」


朱里「ゴリラじゃないもん」


拓篤「へいへい」


楓「次は負けない・・・!30いってやる」


華澄「その意気よ」



などと拓篤と華澄は軽くあしらいながら、復活した2人と一緒に家庭科室を出る。





家庭科室の後に撮られている慎司の写真を見れば、物置のような場所が写っていた。

廊下の奥、少し離れた場所にある部屋がそうだろう。中を確認するために引き戸を開けようとした拓篤だったが・・・



拓篤「・・・?」



いくら引こうと力を入れても目の前の引き戸が開くことはなかった。

何かがつかえているような感覚。手元から視線をやや上に向けると、戸が開かない原因が分かった。



拓篤「鍵・・・か」



錆びた掛金とその掛金の丸い部分にこれまた錆びた南京錠がかかっていた。



朱里「慎司達がやったのかな?」


楓「けど、写真を見る限りただの物置だろ?鍵をかける意味が分からない」


華澄「・・・誰かを閉じ込めてるとか、」


楓・朱里「「!」」



華澄の言葉に楓と朱里の2人はゾクッと身を震わせる。

数十分前に見た階段のバリケードが、自分達の他に誰かがいることを知らしめているだけに否定出来なかった。


顔を青くさせる少女2人の前で拓篤は数秒扉を凝視し、



拓篤「蹴破るか」


楓「Σ止めろ!!」


朱里「今の話聞いてた!?」


拓篤「誰かが閉じ込められてりゃ、俺達の声を聞いて呼びかけてくるか物音出すだろ」


朱里「それは・・・そうかもしれないけど。だからって蹴破る必要なくない?」


華澄「あら、私は賛成よ?」


楓「華澄まで何言ってんだよ・・・」


華澄「だって閉じ込められていないのなら、隠されている可能性があるでしょう?」


楓「隠されてるって何が・・・」



問いかける楓に華澄はニッコリと笑う。

その口から次に紡がれる言葉は楓や朱里をまた震えさせるものだった。














華澄「死体とか」














To be continued...
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