奇奇怪怪

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瑠璃「じゅ、朱里のって・・・何で?だって、朱里は―――」


悠香「楓達と一緒の班だよね」


くるみ「うん。1人で先に行く拓篤を追いかけてうち等より早く登って行ったはずだよ」


紗那「泰雅がいたら止めてくれたんだけどね〜」


瑠璃「それを言うなら紗那達の班だってそうでしょ。未来がいたら撮影マニアを止められたし、すぐ休憩しよう、休憩しようって言う運動苦手コンビをどうにか出来たよ」


悠香・紗那・慎司「「「テヘペロ☆」」」


瑠璃「おかげでうち等が面倒みるハメになったんだから・・・」


健矢「!そうか、分かったぞ!」


他一同「何が?」


健矢「朱里達もここに雨宿りしに来たんだ!で、俺達が来たのに気付いてどっかに隠れて脅かそうとしてるんだ」


瑠璃「まぁ・・・拓篤と楓はともかく、」


くるみ「華澄と・・・特に朱里はやるね(苦笑」


健矢「肝試しみたいになってきたー!面白そう!先行こうぜ!先!」


紗那「え〜・・・」


悠香「ホント、ノリノリだね・・・」


和則「じゃあこのボイスレコーダーはあれか?自分達もここにいるぞー、っていう?」


健矢「そうだろ、絶対。ほら、行こう。さぁ、行こう」


瑠璃「ちょっと待ってよ、も〜」



健矢に半ば強引に急かされて皆は教室から出て行く。しかし1人足りない。

慎司だけが教室に残っていた。


彼は健矢に倣って取り出したのか、懐中電灯を付けて、ある1点を見つめていた。



瑠璃「健矢、ストップ。慎司が来てない」


健矢「へ?」


悠香「慎司ー、何してるのー?置いてっちゃうよー」



呼びかけるも慎司は動かない。

1点を照らし、見つめたまま教室の外にいる皆に向けてこう言った。




慎司「黒板に何か書いてある」


くるみ「え?何かって・・・何?」


和則「お、地図か?このルートで進め的な?」


慎司「ううん、違う。これは・・・正の字?」



画線法。

線を引くことによって線の本数で数を表現するソレが黒板に書かれている。


赤のチョークで書かれた正の字が2つと、その横に同じ赤でTが書かれていた。

教室の外に出ていた面々が顔を出してくる。



悠香「何これ?」


くるみ「12・・・?」


紗那「何の回数?」


健矢「もしくは・・・―――ハッ!暗号か!?」


和則「12で暗号って言ったら・・・時計とか?」


悠香「暦も12だよ」


瑠璃「十二星座もあるしね。あ、後干支もか」


慎司「十二天もある」


和則「あー、それな」


紗那「色々あり過ぎて分かんないね〜」


健矢「俺はこの謎を解き明かしてみせる!じっちゃんの名に懸けて・・・!」


瑠璃「どこの高校生探偵?」


健矢「見た目は子供、頭脳は大人!その名も―――」


瑠璃「うん、それまた違う方の名探偵だね」


慎司「ん〜・・・何だろう。何か見覚えがあるんだよね、これ」


和則「正の字を見かけることなんてよく・・・はないだろうけどたまにあるだろ?何かとごっちゃになってないか?」


慎司「この構図がなぁ〜・・・」


和則「ダメだ、聞いちゃいねぇ」


悠香「いつものことだよ。また始まったね」



自分の世界に没入する慎司。

いくら声をかけたところで彼がこちらの世界に戻ってくることはない。



慎司「(いつだっただろう・・・どこだっただろう・・・・?誰かが、)」



誰かが、この黒板に指を差して笑っている。

記憶と呼ぶにはあまりにも曖昧で、思い出とも言えない。本当に断片的なもの。



慎司「ねぇ、拓篤憶えてな―――」



振り返って幼馴染の名を呼ぶが、そこには当然のように誰もいない。

口を半開きにさせて慎司が固まる。



紗那「何言ってるの、慎司。拓篤はここにいないよ」



慎司「ア、ハハ・・・そう、だったね。バカだなぁ、僕。つい、いつもの調子で話しかけちゃった」


慎司「(どうしていると思ったんだろう。いて当たり前なんて言う風に話しかけたんだろう・・・)」



健矢「・・・慎司、大丈夫か?」



慎司「うん、平気。朱里達を捜すんだよね?―――行こう」













――――――
――――――――――
――――――――――――――












健矢「ここは・・・」



先程入った教室の近くの教室を7人は見て回っていた。

どうやらこの学校はコの字型の校舎らしい。昇降口から入って、左に進んでいた彼等は今突き当りを左に進んだ最初の教室の前にいる。


今まで見てきた教室はどれも普通教室で特に変わったモノはなかった。

次は何かあって欲しいな。そろそろ朱里達が脅かしにくるかな、といった期待を抱きながら健矢は目の前の教室の引き戸を開ける。


懐中電灯を中に向けると、見えたのは今までと違う光景。

どうやらここは、



健矢「家庭科室みたいだな」


くるみ「ガスってまだ通ってるのかな?」


慎司「水道も使えたりしないかな?」


瑠璃「水はともかく、ガスはさすがにないんじゃ―――」


和則「元栓ON!点火!」


瑠璃「Σ本能の赴くままか!?」



ボッ、とコンロに灯る青い炎。

それを見た悠香と紗那が感歎の声を上げる。



紗那「温か〜い」


悠香「丁度寒かったんだよね」


瑠璃「なにもそんな暖のとり方しなくてもいいでしょ。上着を着ろ、上着を」


和則「火を見るとホッとするよなー。何でだろう」


くるみ「水はどう?」


慎司「いやぁ〜・・・それがね、」



蛇口を捻っていた慎司にくるみが声をかけると、彼は困ったような曖昧な笑みを浮かべた。

そうして、その笑顔のまま・・・



慎司「蛇口、取れちゃった」













・・・・・・。












他一同「うーわ・・・」


慎司「ちょっとその目止めてよ。まるで僕が怪力みたいに・・・」


くるみ「さすが地天」


和則「さすが鬼神の主」


慎司「止めて、お願い」


健矢「何か他ねーか、他。朱里達が何か仕掛けてるー、とか」



火で暖をとる悠香と紗那以外の5人が家庭科室を見て回る。

当時のままなのだろうか。引き出しや棚を開ければ調理器具がまだ入ったままだった。



和則「カズはなべのフタを手に入れた!(笑」


悠香「ブブー。木製じゃないとなべのフタとして認められません。やり直し」


和則「ジーザス!」


健矢「よし!じゃあ俺はお玉を装備する!」


瑠璃「おい、そこ遊ぶな」


くるみ「お玉ならこっちにあったよ、健矢」


健矢「でかした!」


瑠璃「ちょっと、くーちゃんまで・・・」


くるみ「後、1つ気になることもあって・・・」


健矢「?どうした?」


くるみ「お玉とか、しゃもじとかはちゃんとあるんだけど・・・ないものがあって、」


紗那「ないもの?」


くるみ「うん・・・。1番なきゃおかしいもの」


和則「なきゃおかしいもの・・・?」



首を傾げ、考えるような素振りをする。

なきゃおかしいもの、おかしいもの・・・とブツブツ呟きながら考えていた和則とお玉を装備した健矢の視線がある1人の人物へ向く。


ハッ、と息を呑む男子2名。閃いた、とばかりに彼等は同時にその答えを口にした。



和則・健矢「「まな板か!」」


瑠璃「お前等、今うちを見て言ったな。―――コロス!」


和則「Σうわー!?瑠璃オーガの強襲だ!」


健矢「くそっ!なべのフタとお玉じゃ太刀打ち出来ねぇ!」


慎司「アハハ!カメラ目線お願いしまーす!」


瑠璃「誰か、包丁。包丁持って来て。こいつ等刻むわ」


くるみ「うん、それ」


瑠璃「へ?」


くるみ「それがないの」


悠香「それ、って・・・包丁?」


くるみ「うん。1本もないんだ」



包丁がストックされていたであろう場所。

そこを皆に見えるように見せたくるみが頷く。



健矢「た・・・拓篤の仕業か!あいつ、ナイフだけじゃ飽き足らずついに包丁にまで手を―――!」


慎司「いや・・・違うと思う。拓篤だったら切れ味のいい新品を使うよ」


悠香「包丁にまで手を出すかも・・・っていうのは否定しないんだ(苦笑」


慎司「そりゃ拓篤だからね」


和則・くるみ「「うん、あの拓篤だからな/ね」」


紗那「じゃあ何で包丁だけ?」


瑠璃「危ないからそれだけでも、って回収されたんじゃない?」


慎司「それだったらガスだって切られてないとおかしいよ」


瑠璃「それもそっか・・・」


くるみ「・・・・・・」


健矢「まぁ気にはなるけどさ、考えるのは後にして進もうぜ」


紗那「そうだね。朱里達を見付けて早く出よう」


和則「・・・?」


悠香「カズ?」



何かが気になったのだろうか。和則は健矢と紗那を見て怪訝そうな顔をした。

そんな彼に気付いた悠香が声をかけると、和則は「いや、」とすぐに首を横に振る。



和則「何でもない」


悠香「そう?」


和則「ああ」


瑠璃「ほら、紗那、悠香。火消して。元栓もちゃんと閉めてよね」


悠香「あ、うん」



コンロの火を消そうと、彼女がスイッチに手を伸ばす。

その瞬間のことだった。


フッ、と。

悠香がスイッチを押す前に火が消えた。それと同時に、



健矢「え・・・?」
慎司「あれ?」



2人が持っていた懐中電灯の明かりが消えた。

急な暗闇に驚いた紗那が短い悲鳴を上げる。



紗那「な、何々、何〜!?(泣」


健矢「マジかよ・・・」


慎司「点かない・・・」


和則「電池切れ?」


くるみ「2人同時に?」


悠香「うち・・・今、スイッチ押してないのに消えたんだけど、」


瑠璃「とりあえずスイッチ押して!で、元栓切って」


悠香「うん」



瑠璃に言われた通り、悠香はコンロのスイッチを押し、手探りに元栓を探す。



悠香「(あった)」



手に触れた栓を回し、ガスを切る。

健矢と慎司は懐中電灯を付けようと何度もON、OFFを繰り返すが、そこに明かりが灯ることはなかった。



慎司「誰か他に明かり持ってない?」


瑠璃「持ってないよ、そんなの」


悠香「うち等、懐中電灯担当じゃないもんね」


和則「ハハ・・・未来だったら持ってたかもな」


紗那「これ、悠香?悠香だよね!私から離れないで〜!」


  ガシッ


悠香「うーわ、憑りつかれた」


瑠璃・くるみ「「ドンマイ」」


健矢「とりあえず廊下に出よう。ここは色々物があって危ない」


慎司「賛成」


くるみ「暗いから気を付けてね、皆」



家庭科室から出ようと7人は動き出す。

1番出入り口に近かった慎司とくるみが開けっ放しにしていた引き戸から廊下に出る。その後に健矢と和則が続く。



瑠璃「ほら、2人共早く」


悠香「紗那、もう少し離れて。動き難い」


紗那「ヤダ〜!無理〜!怖い〜!!」



彼女達3人も先に出た4人に続こうと出入り口に近付く。

瞬間、







  ゾワリ。







悠香「!!(ビクッ」



背筋が泡立った。

肩を跳ね上げる悠香。その彼女にしがみついていた紗那が「悠香?」と声をかける。


それに悠香が返事を返そうとした時―――










  ピンポンパンポーン













一同「!!」












不気味な甲高いチャイムの音が響き渡った―――・・・












To be continued...
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