奇奇怪怪

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健矢「いっちばんのりー♪」


和則「にっばんのりー♪」


慎司「下駄箱があるってことは・・・ここは昇降口だったみたいだね」



暗めの木材で作られたいくつもの下駄箱。

その奥に見える廊下には大きな柱時計があった。時刻は1時17分で止まっている。


古びたそれらの姿を慎司はポラロイドカメラで撮っていく。



慎司「悠香、はいチーズ」


悠香「ウェ〜イ」



外履きと上履きを履き替えるためのパレットの上。

そこに座って、靴下を履き替えようとしていた悠香はカメラの前でピースをする―――に入り込むバカ男子2名。


彼等はシャッターが切られるコンマ数秒前に見事入り込み、変顔までするという余裕っぷりを見せた。



慎司「うわー、酷い顔」


健矢「おい、ナチュラルにディスられたぞ」


和則「酷いわ、慎司君!」


慎司「でもこれを結婚式に流せば大爆笑間違いなしだね」


和則「俺もうお婿にいけないっ・・・!」


悠香「え、何?そんな凄い顔したの?」


慎司「うん、それじゃあ瑠璃達もはい、チーズ」


紗那「Σへ、ちょっと待って―――」


瑠璃「慎司のバーカ!」


くるみ「イェーイ!」



パシャリ。

また1枚の写真が撮れた。


カメラを遮ろうと手を伸ばす紗那と、急にカメラを向けられて怒る瑠璃、そしてそんな2人の肩から身を乗り出し、ウインク付きで両手ピースを決めるくるみ。

三者三様のその姿。



瑠璃「もー!今、髪くりんくりんになってるんだから撮らないでよ!」


紗那「私も湿気で髪膨らんでたのに〜!」


くるみ「あ、ごめん。慎司、うち半目だったかも。もう1回撮って」


瑠璃・紗那「「もういいって!」」


慎司「アハハハ。大丈夫、大丈夫。3人共綺麗に撮れてるよ」



出て来たフィルムをパタパタと仰ぎながら、(見てもいないのに)適当なことを言う。


いつものこと過ぎてツッコむ気にもなれない。

瑠璃は深いため息を吐き、悠香と同じようにパレットに腰を掛けて靴下を履き替えだした。

慎司以外のメンバーもそれぞれ荷物の中から靴下と上履きを出し始める。



慎司「(あれ・・・?)」



皆が靴や靴下を履き替えているところを何とはなしに見ていた彼がそこでハタと気付いた。



慎司「ここ、廃校だよね?」


健矢「うん?」


瑠璃「今更何?自分が廃校探検してみない、とか言い出したんでしょ?」


慎司「いや、そうなんだけどさ・・・」


くるみ「どうかした?」


慎司「うん・・・。そのパレットも廊下も・・・・何で、















―――何で埃が積もってないんだろうと思って」














静寂と沈黙が場を支配する。

口を開いたのは、和則だった。



和則「誰かが管理してるんじゃないか?公民館とかにして会議に使ってるんだろ。

田舎のじーちゃん家の近くにも同じようなのあるし。まぁ、ここまでデカくはないけど・・・」


瑠璃「え、じゃあ入っちゃダメ系じゃない?」


紗那「そ、そうだよ!怒られちゃうよ!」


健矢「バレなきゃだいじょーぶ!」


悠香「出たよ・・・(呆」


くるみ「まぁ、この雨を言い訳にしたら許されるでしょ」


健矢「何てったって子供だしな!無知を装えば水に流してもらえる!」


和則「犯人は計画的犯行に及んだのです」


健矢「完全犯罪 成り立たせるわ
   勢いあまって I kill you ってな」


悠香「うち等殺されるってさ」


瑠璃「じゃあ殺られる前に殺らないとね」


紗那「刑は?」


瑠璃・和則「「勿論、てるてる坊主の刑で(笑」」


健矢「Σまだ続いているだとっ・・・!?」


悠香「あれ?それだとやっぱりうちまで吊るされるんじゃ・・・」



騒ぎ出す5人。

それを笑いながら見ていたくるみは傍にいる慎司に声をかける。



くるみ「今のはないよ、慎司。紗那が本気で怖がっちゃう」


慎司「怖がらせようと思って言ったわけじゃないけどね」


くるみ「うん、だから尚更」


慎司「思っても口に出すなって?手厳しいね」


くるみ「これは指摘じゃなくてお願いだよ。君にだから頼めるの」


慎司「僕はこれでも言葉を選んでるんだけどなぁ・・・」


くるみ「うん、知ってる。本当はちゃんと周りの空気が読めるってことも」


慎司「、頭が良いのにバカだね、くるみは」


くるみ「?」


慎司「空気は吸うものだよ」


くるみ「アハッ。それもそうだね」













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――――――――――
――――――――――――――












健矢「ここはなーんだ、っと」



歩く度に軽くギシギシと軋む廊下を進み、彼はとりあえず近くにあった部屋の引き戸を開ける。

持っている懐中電灯で中を照らす。


どうやらここは教室だったのだろう。机と椅子が乱雑に並んでいた。



健矢「面白そうなもんはないなー」


瑠璃「廃校に面白さとかないでしょ」


健矢「人体模型とかあったら面白いじゃん」


悠香「あー、動くやつ?」


健矢「そう。七不思議の定番、動く人体模型!」


和則「歩く二宮金次郎像」


健矢「うん、それも定番」


くるみ「トイレの花子さんも」


慎司「真夜中の音楽室に響くピアノとか」


悠香「赤い紙、青い紙もあるね」


紗那「止めようよ、そういう話〜・・・」


瑠璃「でも机とか椅子が置いたままなんてね。こういうのって回収されないのかな?」


健矢「何か文字とか彫られてるのないかな?(ワクワク」


和則「最強!とか天才!とかな」


くるみ「ピー、公共物破損です」



健矢は1つ1つの机を照らし始め、和則と一緒に面白いもの探しを始める。

女子4人は呆れつつもそれを見守り、慎司はそんな彼等、彼女達や教室の中を撮っていた。








健矢「ん?何だこれ?」



真ん中辺りの机を照らしていた彼が不思議そうな声を上げる。

机の中から何かがはみ出していた。隣にいた和則がソレに手を伸ばす。


掴んで、凝視して固まる。



和則「え、これって・・・」


悠香「何々?何かあったの?」


健矢「カズ、何だったそれ?」


和則「・・・・・・」


健矢「カズ?」


瑠璃「ちょっと、どうしたの?」


和則「・・・コレ、何に見える?」



自身が掴んでいるソレを皆に見えるように突き出す。


黒い長方形の物体。

懐中電灯の明かりに照らされたソレの名称は、



紗那「ボイスレコーダー?」


和則「ああ。それも・・・」



彼はそのまま持っているボイスレコーダーの裏面を見せる。

赤系のラインストーンでデコられた唯一無二のボイスレコーダー。


それを見て「え、」と声を漏らす者、息を呑む者がいた。無理もない。7人には酷く見覚えがあったのだ。

彼等は知っている。このボイスレコーダーを愛用している者を。このボイスレコーダーの持ち主の名前を。

















和則「―――朱里のだ」
















それは、この場にいない者の名―――・・・














To be continued...
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