奇奇怪怪
□Prologue
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土砂降りの雨。
晴れ間ならば見事な新緑を輝かせるであろう周りの木々も、この雨の中では酷く淀んで見える。
バシャバシャ、
バチャバチャ、と音を鳴らして水溜りを踏み歩くはいくつもの足。
それぞれの種類、それぞれの色のカッパを着た7人は雨宿りのために近くにあった建物に避難した。
バサバサ、と。
カッパの上の雨粒を払いながら1人の少女が吼える。
瑠璃「あーもーっ、最っ悪!」
紗那「林間学校初日で雨に降られるなんてね〜」
くるみ「ちょっと誰ー?雨男、もしくは雨女ー」
慎司「まぁ、山の天気は変わり易いって言うし。仕方ないんじゃない?」
悠香「・・・・・・もしかすると、」
他一同「?」
悠香「昨日、うちが家でした雨乞いが原因かも―――」
瑠璃「吊るせ、そいつ!今すぐに!」
和則「イェッサー!」
悠香「Σうぇぇっ!?」
くるみ「軒下に吊るせば晴れるね、絶対」
健矢「てるてる坊主〜てる坊主〜あ〜した天気にしておくれ〜(笑」
紗那「それでも曇って泣いたなら〜(笑」
健矢・紗那「「そなたの首をチョンと切るぞ〜」」
悠香「ちょっ、怖い怖い怖いっ!ごめんって!林間学校潰れろドチクショー!とか・・・昨日のうちはうちじゃなかったんだよ」
瑠璃「いや、それがいつものお前だよ。むしろそうじゃないお前を見たことがないよ、この7年間」
紗那「でも・・・どうするの?この雨じゃ登山なんてもう出来ないよ」
健矢「皆どうしてるんだろーな。今で・・・中腹?ぐらいだったし。途中に山小屋とかあったっけ?」
くるみ「先生が下山させてるか・・・勢いで登ってるか、じゃない?」
健矢「登山コースまでの帰り道分かる人ー?」
と、挙手をするように促せば、一様に視線を背ける幼馴染達。
健矢「・・・慎司、」
慎司「僕、カメラ守るのに必死だったから」
健矢「くるみ、」
くるみ「うちは遅れる悠香を引っ張るので必死だったから」
健矢「フッ・・・
華澄ーーー!楓ーーー!朱里ーーー!拓篤ーーー!迎えに来てくれーーーっ!!」
瑠璃「おい、何でうち等には聞かない?」
和則「ヒーキだ、ヒーキ」
健矢「お前等みたいな成績平均組が道なんか憶えてるはずないだろ!?」
瑠璃「言いやがった、こいつ!」
和則「吊るせ、吊るせ!てるてる坊主の刑だ!」
健矢「止めろ!俺がここで死ねば世界は大きな損失を受ける!」
瑠璃「悠香共々吊るせ!」
悠香「あれ!?うち、まだ許されてないの!?」
紗那「逆に、成績上位組の健矢が何で道分かんないの?」
健矢「それはっ・・・」
紗那「それは?」
慎司「石蹴りに夢中だったからだよね。この石が落ちれば死ぬ、草むらに入れば罠にかかるとか言って、」
瑠璃「小学生かっ!」
健矢「小学生だわ!」
和則「健矢、健矢。で、その石は?」
慎司「見事、ここに来る途中に水溜りの中に蹴飛ばしてたね」
健矢「ぐっ・・・息がっ・・・・!」
瑠璃・紗那・和則・悠香「「「「(溺死っ・・・!)」」」」
慎司「これが実際の写真です(笑」
彼はポラロイドカメラで撮った3枚の写真を掲げる。
そこには石を蹴る健矢、その石が木にぶつかって跳ね返る瞬間、その後に水溜りに入る瞬間がバッチリ写されていた。
瑠璃「お前カメラ守ってた割には余裕だな!」
慎司「うんうん、僕って凄いよね。この雨の中、ここまで綺麗に撮れるなんて」
瑠璃「Σまさかの自画自賛!?」
悠香「あぁ〜あ・・・こんなことだったらうちも未来と泰雅みたいにバスで酔っとけば良かったな〜。そしたらペンションのベッドで休めたのに」
くるみ「アハハ・・・そうだね」
紗那「あの2人も酔いたくて酔ったわけじゃないんだけどね〜。弱過ぎる三半規管の問題だもん」
瑠璃「泰雅に至っては酔い止め持って来てたのにそれを飲み忘れたバカだからね」
慎司「そんな酔った2人の写真がここに」
紗那「色々撮ってるね、慎司」
慎司「思い出作りだよ、思い出作り。主に人が思い出したくないようなね(笑」
瑠璃「相変わらず最低だな、こいつ」
健矢「それよりどうする、これから?」
和則「お、健矢復活」
紗那「誰も帰り道憶えてないんじゃね〜」
瑠璃「闇雲に動いても迷子・・・っていうか遭難?するだけだしね」
健矢「迎えを待つか、道が見え易くなってから進むかだな」
くるみ「どっちにしろ待たないとね。雨が止むまでは向こうも、こっちも動けないし」
慎司「あ、それならさぁ」
他一同「?」
慎司「時間つぶしにこの中・・・探検してみない?」
悠香「え、この中って・・・」
慎司「うん。この・・・
―――廃校の中」
他一同「!」
和則「おっ・・・」
和則・健矢「「面白そう!!(目キラキラ」」
瑠璃「はい、バカ2名釣れましたー」
紗那「ヤ、ヤダ!廃校って響きだけで既に怖いのに!中に入るなんて無理!怖過ぎるよ!私、無理!ヤダ!」
くるみ「うちも・・・遠慮したいかな〜、なんて・・・・(苦笑」
慎司「でも多少の雨風は凌げるよ?」
瑠璃「確かに、ここにこのままいたら風邪ひくだけだよね・・・」
紗那「えぇ・・・ちょっと、瑠璃」
悠香「探検じゃなくて、うちはとりあえず中で濡れた靴下履き替えたいかも。さっきから足の指の感覚ないんだよね。皆もそうでしょ?」
紗那「それはそうだけどぉ・・・」
和則「―――ハッ!このままだと全員水虫に・・・!?」
瑠璃「なくはないだろうけど止めて、その想像」
健矢「行くぞ、お前等ぁ!廃校探検だ!!」
和則・慎司「「おー!」」
悠香「ノリノリだね・・・」
俺が隊長だ!と言わんばかりに先頭を歩き出す健矢とその後に続く和則と慎司。
悠香はそんな3人の後ろに苦笑しながら続いた。
進み出す4人。
瑠璃は振り返り、後ろにいる2人に声をかける。
瑠璃「行こう、2人共。こうなったらもうあいつ等止まんないよ」
紗那「うぅ〜〜〜・・・お化けが出たら守ってね、瑠璃」
瑠璃「はいはい、出たらね」
それを聞いて、紗那は不貞腐れながらも瑠璃の腕に自分の腕を絡める。
くるみ「・・・、」
瑠璃「ほら、くーちゃんも」
くるみ「!・・・うん、分かってる・・・・。分かってるよ。―――今、行く」
諦めたようにフッ、と笑って。
彼女は瑠璃と紗那の隣に並んで歩き出す。
―――これは彼等、彼女達の物語。
林間学校1日目、土砂降りのこの雨の日から始まる長い永い悲しい物語―――・・・
To be continued...