合わせ鏡

□◆謎の事件
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ルミナシア、ウリズン帝国内の1つの街、アルミアは今日も快晴。


早朝に新聞配達を終えた僕は休む暇もなく次の仕事をしています。

その仕事っていうのは・・・



セド「兄ちゃん!次、鬼ごっこ!鬼ごっこしよう!」


メル「えー!かくれんぼがいい!」


「川で遊ぶのも楽しいよ!カニとかザリガニとかいっぱいとれるんだ!」


「達磨さんが転んだがいいなー!」


「私は縄跳びがしたーい!」


「虫取り!虫取りがいい!」



移動サーカス団アレクトに拾ってもらった・・・ううん、引き取られた10歳前後の子供達10人の遊び相手。


アレクトは14歳以上の子じゃないと訓練や公演をさせてもらえないらしいんだ。

だから14歳以下の子達はご飯の支度の手伝いとか、食料の買い出しぐらいしかやることがない。


遊び盛りの子供達に寂しい想いをさせてしまってるから、って団長のサファトさんに昨日この仕事を頼まれたんだ。



ノア「(それにしても・・・)」



次はどの遊びをするかでジャンケンをしてる子供達を見て僕は息を吐く。


この子達、底なしの体力過ぎるわ〜。

4、5年前の僕もこんな感じだったのかな・・・?若いっていいね。



遊び決めジャンケンの結果、次は川遊びをすることになった。

バケツと網(虫取り用)を持って街の中に流れてる小川に行く。今の僕、小学校の先生みたいな気分だよ・・・。



「キャハハ、冷たーい!」


「あ!魚!魚いたよ!」



川は比較的浅くて、深いところでも水深50cmぐらい。

これなら溺れることもないか、って僕は川に入らずに砂利の上に腰を下ろした。


後20分ぐらいしたら水を飲ませて塩飴なめさせないとなぁ・・・。

夏みたいに暑くはないけど、この日差しの中ずっと遊んでたら熱中症になっちゃうよ。


水切りをしようとしてるセドを初めとする男の子達に、絶対人に向かって投げちゃダメだよって注意して、遊ぶ皆を見守る。



ノア「(こうしてると・・・世界が危機に陥ってる、なんて全然思えないよね)」



笑顔で遊ぶこの子達を見てたら平和そのもの。

だけど、世界のどこかでは星晶(ホスチア)を巡って国同士が戦争をしてる。飢えで苦しむ人達がいる。救世主を望んでいる人達がいる。


今楽しそうに遊んでるこの子達だって、住んでた場所と家族を戦争で奪われた戦争孤児。


世界のどこかでは今日も悲しみや不安が生まれてる。



ノア「(世界は・・・こんなにも綺麗なのに)」



メル「お兄ちゃん、見て見て!ファートがお魚捕まえたよ!」


ノア「お、じゃあ生け簀作らないとね」



笑顔で応えて、僕は女の子達と一緒に石を使って生け簀作りを始める。

カニに指を挟まれたー、とか足に変な水草が絡まったー、とか水切り15段いったー・・・とか、子供達の笑顔が絶えることはなかったよ。


そうして20分・・・いや30分は経ってたかもしれないけど、僕は「きゅうけーい」って言って皆を日陰に集める。



ノア「はい、水分と塩分補給しましょうねー」


子供達「はーい!」



川に来る前に各自に用意させてた水筒。

それを飲んでる皆に塩飴を配って僕も一息吐く。


僕が一人旅をしても大丈夫かどうか、それをこの仕事で見極めさせてくれ、って感じのことをサファトさんは言ってたけど・・・



ノア「(これで本当に見極められるのかな・・・?)」



大体、サファトさんは訓練をしてる団員の人達を見てるから、僕の仕事っぷりも何も分からないと思うんだけど・・・。

子供達に聞くのかな?


なんてことを考えて、自分の水を飲んだ時だった。





  〜〜〜♪





ノア「?」


ノア「(笛の音・・・?)」



遠くから、微かに高い音が聞こえてきて眉を顰める。


フルートとか、そういう煌びやかな楽器の音色とは違う。人に聞かせるのを目的にした音楽でもなさそう。

何て言ったらいいんだろう・・・。言い表す言葉が出てこない。


とにかく、落ち着いた音色なんだけど綺麗・・・って言うか明るいものじゃない感じがしたんだ。



ノア「(何だったんだろ・・・今の)」



聞こえたのはその1度だけで、耳を澄ましてももう聞こえてこなかった。

チューニングか何かだったのかな?



セド「兄ちゃーん」


ノア「?どうしたの?」


セド「ライト、寝ちゃった」


ノア「あらら・・・」



最年少、8歳の男の子のライトがセドが言った通り砂利の上で寝てた。

プールとか水遊びをした後は物凄い倦怠感がくるからね。それにプラスして塩分多めの糖分っていう飴をなめたからだろう。睡魔に勝てなかったんだ。


仕方ない。



ノア「今日はもう戻ろうか」


ファート「えー!まだ遊びたーい!」


ノア「戻って、テントの中で遊ぼう。トランポリンとか、フラフープとか貸してもらって」



って言ったら喜んで、すぐに帰り支度をしてくれる。

聞き分けがいい子達で助かるよ、本当。


自分のカバンと剣を担いで、ライトを抱き上げながら「忘れ物はない?」って皆に確認させる。

うん、持ってきたバケツや網もちゃんと持ってるね。



ノア「よし、じゃあテントにしゅっぱーつ」


子供達「しゅっぱーつ!」



ちびっ子を引き連れて街を歩く。


ここ、アルミアの街は今日も平和―――







「キャーーー!!」








  ガッシャーン!!








ノア「・・・・・・」








前言撤回。







全然平和じゃなさそうです。







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