合わせ鏡

□◆黒の団長
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人はよく人生を道に例える。

曲がりくねってるとか、山あり谷ありとか、暗いトンネルの中をゴールもなく走ってるとか何とか。


そう考えるなら―――・・・



ノア「僕の道は・・・夢幻回廊だね」



鬱蒼とした森の中で呼吸を整えながら僕はそう呟いた。


イナンナさん達のいるフィーニスを出て、ガルバンゾ国に向かうこと早5日。

未だ僕は国境越えをすることは疎かウリズン帝国から出られてない。


それどころかこの森で迷子状態だ。



ノア「(やっぱり近道なんて考えずに普通の道を通ればよかったなぁ・・・)」



この森で迷ってからそればっかりを考えてる。


コンパスを使って森を抜けようにも、ここは樹海か何かなのか針がグルングルン動いて使い物にならない。

食糧は後2日程度余裕はあるけど、このまま迷い続けたらそれも底をつくだろう。精神的にもそろそろしんどいし・・・



ノア「(何とかして森を抜けないと・・・)」



襲い掛かってくる魔物達を剣や魔法で蹴散らしながら、僕はまた森を徘徊する。











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ノア「!これは・・・」



僕がソレを見付けたのは、さっき休憩してた場所から数十分ぐらい歩いた場所だった。

太陽や広い空が見えるポカッリ開けた場所。


クローバーや色んな花がいっぱい咲いてる。

その中に、1つの異物が自分の存在を主張するようにあったんだ。



ノア「ジルディアの植物か・・・」



この世界、ルミナシアのものではない植物。

その植物の傍に生えてるクローバーや花は既に枯れてる。変化に適応出来なかったんだ。



ノア「急いで、ディセンダー」



ルミナシア滅亡のタイムリミットがもう目に見える形にまでなったよ。

だから、急げ。



ノア「(早くラザリスを救ってあげて・・・)」



胸元のペンダントを握りしめて、そう願ってた時だった。

風に乗って、あの匂いがしたんだ。


この世界に来てから、僕も何度か流して、何度も吸ったことがあるあの―――



ノア「血の匂い・・・」



大きく鼻で息を吸い込む。

匂いのもとを辿る。


こんなところに僕以外の人間がいるとは思えないけど・・・一応、ね。



ノア「(あれ?でもそもそもこれって本当に人間の血の匂いなのかな?)」



動物とか、魔物の血の匂いだったらどうしよう・・・。


立ち止まってう〜んと考える。



ノア「(まぁ、行くだけ行ってみよう)」



ずーっと森を彷徨い続けてることに、ちっとも変わらない風景にそろそろ飽き飽きしてきたところだからね

(それもこれも自業自得なわけだけど・・・)




スンスン匂いを嗅ぎながら歩くこと数分。今度は匂いじゃなくて声が聞こえてきた。





「ごめんっ・・・アト!私達の・・・・私のせいでっ・・・!」


「もういい、メル!アトと一緒に逃げろ!」


「でも、それじゃセドが・・・!」






ノア「(女の子と・・・男の子?)」



かなり切羽詰まったような声だった。

生い茂ってる草を掻き分けて、僕は血の匂いが今もするその声が聞こえてきた方向に向かって歩いて行く。


魔物にでも襲われてるのかな?

鞘から2本の剣を抜いてとりあえず臨戦態勢。



ノア「いた・・・」



リンゴがなってる木に登ってる男の子と、その下にいる女の子。それから・・・



ノア「ガルムウルフ・・・?」



体から血を流してるガルムウルフが女の子を庇うように立って、前にいるアックスピークの群れ(って言っても5匹程度だけど)を威嚇してる。


何でこんなところにガルムウルフが?エミルみたいにあの子達が契約してるとか?

よく分かんないけど、1つだけ分かるのは―――



ノア「(あの子達がピンチに陥ってる、ってことだよね)」



僕は即座に詠唱を開始する。

足元に浮かぶのは赤の魔法陣。アックスピークの弱点は火属性。だから、そこを突く。



ノア「燃えろっ!」



ファイアーボールをアックスピークの足元に飛ばす。

なるべく殺生は僕もしたくないから。


予想通り、アックスピーク達はその火にビックリして一目散に逃げていく。

それを確認してから剣を鞘にしまって、僕は子供達の前に出る。



ノア「大丈夫?」



そう聞いても男の子と女の子は放心状態。

だから「おーい」って軽く手を振ってみる。


そしたら、女の子より先に我に返った男の子(未だ木の上)が目を見開きながら聞いてきた。



少年「い、今の・・・兄ちゃんがやったの?」



兄ちゃん・・・?

あ、そっか。僕、男装してるんだった。



ノア「うん、そうだよ。君達は―――」


少年「回復の魔法も使える!?」



僕の言葉を遮って男の子が前のめりになって聞いてくるもんだから、ちょっとだけ面喰っちゃった。

小さく頷く僕。それに対して顔を綻ばせる男の子と女の子。


な、何なんだろ・・・?



少年「お願い、兄ちゃん!アトのケガを治して!」


少女「私を庇ってケガしちゃったの!」


ノア「アトって・・・そのガルムウルフのこと?君達の、えーっと・・・・お友達?」



ペット?って聞くのはどうかと思ってそう言ったら2人は何度も頷いた。


僕は女の子の傍にいるガルムウルフを見る。

急に現れた見知らぬ人間(僕)を警戒してるのか今にも噛みついてきそうな目だ。


体の傷は・・・そう深くはなさそうだけどまだ血が止まってなかった。








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