合わせ鏡

□◇紫の騎士
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ルイ「アンジュさん、何かクエスト入ってますか?」


アンジュ「そうね・・・。今あなたに振れる仕事は、これだけあるよ」



そう言ってアンジュさんが出してくれた数枚の依頼書を1枚、1枚見ていく。

4枚目の依頼書、そこに書かれてる依頼人の名前を見て、私は手を止めたの。


だって、この依頼を出したのは―――クレアだったから。

ヘーゼル村に物資を。重要任務の判が押されたその依頼書を私はアンジュさんに見せる。



ルイ「これ、やります」


アンジュ「あなたが引き受けてくれるのね」


ルイ「はい。クレア達の力になりたいから・・・」


アンジュ「今回、行ってもらうのはコンフェイト大森林。そこで、ヘーゼル村の人と接触し、必要な物資を届けることが仕事よ。同行者は、ヴェイグ君、ミント、それからシング君。

ヘーゼル村は今、ウリズン帝国により星晶(ホスチア)の搾取と採掘の労働を強いられいているの」


ルイ「(カノンのが言ってた通り・・・)」


アンジュ「だから畑仕事や狩りも出来ないみたいで・・・。こんな形でしか助けられないのだけれど・・・・。

ヘーゼル村の人は、ヴェイグ君を知っているから。それじゃあ、お願いね」


ルイ「はい!」












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ヘーゼル村に物資を届ける為、私達4人がやって来たのはコンフェイト大森林。

そこに着くなりシングが憤ったように言うの。



シング「ウリズン帝国の奴等、どれだけ星晶(ホスチア)を奪い取るつもりなんだ!」


ミント「そういえば、シングさんの故郷もでしたね・・・」


ルイ「え、そうだったの?」


シング「あいつ等、突然村に押しかけて来たんだ。村を封鎖した上に、星晶(ホスチア)を採り尽くすまで男の人は皆働かされて・・・。

残された女の人や子供だけじゃ狩りが出来ないから、食べ物も足りなくなったんだ。星晶を失った土地はやせ衰えて、森からは動物がいなくなったんだよ。

俺の村で有名だった果物も、さっぱり採れなくなってしまったし」


ヴェイグ「ヘーゼル村も同じ運命を辿る、ということか・・・」


シング「!えっ!!そ、そういう意味で言ったんじゃ・・・!!」


ヴェイグ「分かっている。行くぞ。仲間が先で待っている」


シング「よーし、ガンドコ行こう!」


ミント「ガンドコ、ですか?」


ルイ「どういう意味?」


シング「「ガンガン、どこまでも」で「ガンドコ」さ!」



元気なシングを先頭に私達は森の中を歩いて行く。










ミント「ヴェイグさん、ヘーゼル村というのは本来どういった雰囲気の村なのですか?」



突然襲い掛かってきたチュンチュンとか、プチプリを退治し終えた時、ミントがヴェイグにそう尋ねた。

私はプチプリが落としたこくもつをカバンに詰めながら耳を傾ける。



ヴェイグ「・・・・・資源豊かで小さいが温かな村だ。近くの清流から水を引いている為、家庭料理は、どこのも旨い。素材の味が締まり、引き立つ」


シング「へぇ、美味しそうだなぁ・・・。ねえ、何か名物料理みたいなものってあるの?」


ヴェイグ「名物・・・?そうだな・・・・」


ミント「クレアさんから聞いたことがあります。ヴェイグさんはヘーゼル村のピーチパイに目がないそうですね」


ルイ「ピーチパイ?」


ヴェイグ「ピ・・・ピーチパイは別に名物料理じゃない」



頬を染めるヴェイグ。

いつも無表情なこの人がそんな顔をするのが珍しくて、私はバレないように微笑んだ。


ヴェイグ、可愛い・・・。



ヴェイグ「近所の馴染みのおばさんが親切で持ってきてくれているだけだ」


シング「ヴェイグの為に、わざわざピーチパイを作ってくれるおばさんがいるの?凄いや。マダムキラーなんだね、ヴェイグ!」


ヴェイグ「違う!」


ルイ「私も食べてみたいなぁ・・・」


ヴェイグ「・・・機会があれば、おばさんに頼んでみる」


ルイ「本当?ありがとう、ヴェイグ!」



材料はこっちで用意するから、って慌てて付け足せばヴェイグがほんの微かに笑った気がした。


ヴェイグが笑うところも初めて見た・・・。

なんか・・・



ルイ「なんかいいね。こうやって皆で仕事するの」


シング「そうだね。あ、考えてみたらさ、4人でこうやって仕事をするのって初めてだよね」


ミント「そういえばそうですね。同行者の選定は、アンジュさんが適性を見て毎回判断されていますから」


シング「適正、か・・・。なるほどね。俺が賑やかし担当、ルイが天然系担当、ミントが癒し系担当、ヴェイグがむっつり系担当って事だね!」


ルイ「(え、私、天然?)」
ヴェイグ「!」


ミント「シングさん、それはちょっと・・・。「むっつり」ではなくせまて「だんまり」と・・・・」


ヴェイグ「・・・それはフォローのつもりなのか?」






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