合わせ鏡
□◆誰ガ為ニ
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ガタン、ゴトン・・・
カタカタカタ・・・
なんて音が鳴り響く荷馬車の中で、両腕を縛られた僕は意識を覚醒させる。
・・・うん、
希空「(何故こうなった!?)」
あれだね。
ドナドナを延々頭の中でリピートして軽い現実逃避をしてたのがまずかったんだね。
思考が追い付かないよ。
えーっと・・・確か僕は学校で上から落ちて来た人を助けようとして、でも助けきれずに押し潰されて、
目を覚ましたら何故か森の中にいて、彷徨ってたらウルフに追いかけられて、ここはテイルズの世界だっていうことが分かって、
絶望の街ルインみたいな村に辿り着いて、これまた何故か騎士さん達に捕まって、
その人達の言った言葉でマイソロ3の世界だって気付いて、それから・・・
希空「(あぁ・・・なんか段々思い出してきたかも)」
出来れば思い出したくなかったけど・・・。
はい、じゃあここで回想入りま〜す。
〜 回 想 〜
希空「(マイソロ3か〜。星晶(ホスチア)か〜。アドリビトムか〜)」
僕、会えるならモフモフ三兄弟に会いたいな。それとクィッキー。
「おい・・・」
闘技場に行くことが出来るならモルモにも会いたいな。
「おい、」
オイラはモルモ!っていうのを生で聞きたいな〜。
ウフフ・・・アハハ〜。
騎士「おい!聞いているのか、そこの女!!」
希空「あー、聞いてます。聞いてます。
お年寄りや女子供はあなた達の国で手工業を、動ける男の人達は星晶(ホスチア)採掘でしょ。ちゃんと聞いてます、オーケー」
騎士「その後の話だ!」
希空「オーケー。もう1度お願いします」
騎士「(舐めているな、この女っ・・・!)」
あれ?何でだろ?騎士さんの額に青筋が出て来たよ。
僕、何か癇に障ること言ったかな・・・?
↑無自覚
騎士「お前達をこれから我が国へ連れて行く。分かったらさっさと馬車へ乗り込め。お前以外はもう既に動いている」
希空「Σ何ですとっ!?」
振り返って見てみたら、さっきまで後ろに座ってた人達が騎士の人達に誘導されて荷馬車に乗り込んでた。
え・・・どうしてそんなに従順なの。
希空「あの・・・僕は、」
騎士「無駄口を叩くな。死にたくなければ早く乗れ!うちの隊長は女子供でも容赦をしない」
希空「いや、だから僕は、」
この村の人間じゃないんです、って言おうとした時、嫌な風が吹いた。
胸がザワッとして、体中に鳥肌が立つような・・・ねっとりとした風が。
何で・・・こんな感覚に、
すぐに、そうなる理由に気付いた。
「あれ?まだこんな所でもたもたしてるの?」
右方向から聞こえてきた声。
知ってる・・・。僕は知ってる。
この声の主を・・・
目の前にいる騎士さんや村の人達を馬車へ誘導してた騎士さん達が一斉に姿勢を正す。
そして、呼ぶ。
2人の部下である騎士さん達を従えてやって来た、その人の名前を・・・
騎士「サレ隊長・・・!すみません、この女で最後です」
さっきまで話してた騎士さんが、無理矢理僕を立たせてちょっと焦った感じで言う。
恐怖で支配されてるね。
小さく息を吐こうとした時、紫の髪の長身に死人みたいな青白い肌をした嵐の騎士と目が合った。
希空「チェンジで」
サレ「は・・・?」
しまった・・・!
何でマイソロ3の世界に来て1番最初に会うテイルズキャラがサレなんだ、っていう心の声が漏れちゃった。
慌てて謝罪。
希空「ごめんなさい。何でもないです。気にしないでください」
回れ右をして、僕はそのまま村の人達みたいに荷馬車に乗り込もうと歩き出す。
ガシッ
・・・あれ?
何でだろう。景色が変わらないっていうか、全然荷馬車に近付かない。
足はちゃんと動かしてるのに体が前に進まない・・・Σハッ!
希空「これはもしや金縛り・・・!?」
サレ「違うよ」
すぐ近く。
背後から聞こえた声に僕はビクゥッ!と肩を跳ね上げる。
そして体が前に進まないのは後ろから縛られた腕を掴まれてるからだって気付く。 ←遅い。
なんてこった・・・
希空は悪霊(サレ)に憑りつかれた!
希空「あの・・・放してもらえますか?」
サレ「僕の質問に正直に答えてくれたら放してあげるよ」
希空「・・・何ですか」
サレ「君・・・
―――この村の人間じゃないね?」
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