秘密を守れますか?U
□厄介なる同士
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―――現実はいつだって唐突で残酷だ。
それが、ナルトと自来也と一緒に綱手探しの旅から帰って来た洋一の口から告げられた“真実の話”を聞いた俺の頭に過ったこと。
・・・ダメだ。思考がままならない。
体の痺れはとっくに治ったはずなのに―――・・・
思えば、
今日は最悪な日だった。
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今日、俺に命じられたのは鎮圧任務。
何でも、他国の盗賊団とも考えられる不審な男達が海岸沿いの町に集結している、らしい・・・。
それを鎮め、事の真相を調査するよう言われたんだ。
その海岸沿いの町に赴き、調査をした結果―――分かったことは2つ。
だから後は鎮圧するだけ。
盗賊団の一員らしい赤と黄土色の服を着た2人の男の後を追って、蔵が立ち並ぶ人通りの少ない場所にやって来た。
隠れて様子を窺いながら、隙をつこうと考えていた時に―――その最悪がやって来た。
俊「やぁ、どういう状況?」
場違いな程に爽やかな笑顔を浮かべて、能天気な声でやって来たソイツに俺は自分の目を疑った。
同じ木の葉の忍。
同じ、だけど違う異世界人。
俺達の世界を狂わせた同じ〈参加者〉―――。
希「何でお前がここにいる?」
俊「君1人じゃ心配だからって同じ任務をやらされる羽目になったんだよ」
希「、」
いけしゃあしゃあと語るコイツに自分の顔が歪むのが分かった。
何でよりによってこんな奴と・・・。
俊「で、状況は?」
希「チッ・・・」
俊「、」
希「あいつ等は波の国の盗賊団だ」
俊「へぇ。それはまた遠いところから」
希「様子を見た限り、この町を襲おうとしてる・・・」
俊「不知火ゲンマの情報通りってわけか。
・・・どうする?里に報告して後から来るらしい上忍に任せる?」
品定めでもするように俺を見てくるこいつに、苛立ちが募る。
希「その間に動かれたら厄介だ。そんなこと、お前だって分かってるだろ・・・」
俊「別に僕はこの町の連中が襲われようが襲われまいがどうでもいいからね」
希「ゲスが」
俊「誉め言葉として受け取っておくよ」
って、こいつは笑ってそう返してくる。
ほとんど反射的に俺の口からまた舌打ちが漏れる。
・・・俺は未来や海斗のように〈参加者〉のことを割り切れない。
〈参加者〉がいなきゃ、姉ちゃんは生きていたかもしれないんだ。生きて、俺の隣に・・・。
そんな姉ちゃんが今の俺を、〈参加者〉と一緒にいる俺を見たらどう思うだろう・・・。
希「(止めよう・・・。今は、任務に集中)」
今はお前の作戦にのってやる、っていう俊の言葉を聞き流しながら、俺は盗賊団の男達に視線を向ける。
声を潜める気がないのかもしれない。2人の会話が耳に入ってきた。
「奴等、そろそろ町長の館に着く頃だな」
「こんな田舎だ。さぞかし仕事も楽だろうよ」
「だが町長は金持ちだ。当分は遊んで暮らせるぜ」
「あーあ、こんな時に見張りなんてついてねぇな」
希「(町長の・・・館?)」
俊「ねぇねぇ、如月希。一足遅かったみたいだけど?君、本当にちゃんと様子見てたの?」
希「っ、うるさい。やるぞ」
隙を見て捕まえるつもりだったけど・・・こうなったらもう仕方がない。
俺は千本を構えて建物の影から出て行く。すぐに俊も後からついてきた。
盗賊団の男2人がそんな俺達に気付いて勢いよく振り返る。
「誰だ!?」
その声に反応して近くから仲間が飛び出してきた。
1・・・2・・・3・・・4・・・・まだ増える。全部で15人・・・ってところか。
俊「多くない?」
希「二手に分かれた方が良さそうだ・・・」
こんなところで時間をくってる間にも、他の連中が町長の館に着く。
それだけは避けないと・・・。
希「俺は館へ向かった連中を追う。ここは任せた。
けど・・・絶対殺すなよ」
俊「フフ、どうしようかな」
希「、」
俊「そう睨むなよ、冗談じゃないか」
ウソだな。
危機感も何も感じられない。こいつにとってこの世界の住人や俺達はきっとどうでもいい存在なんだろう。
だから傷付け、殺すことに何の躊躇いもない人間。
そんなことをしたら許さないぞ、って俺はこいつを睨んで念を押す。
今は、町長が最優先だ。後ろ髪を引かれつつ、俺は走り出した。
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