秘密を守れますか?U

□風道を辿って
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瑠璃「今日はもうこのへんにしない?」



修業を開始して1日目の夕暮れ時。

沈んでいく夕日を眺めていた彼女が汗を拭いながらそう言った。


両手を膝につき、肩で息をしていた少年がそれに頷く。



洋一「あ、あ・・・ハァハァ・・・・っ。そうだな・・・」


瑠璃「大丈夫?歩ける?」


洋一「頑張る・・・」



洋一が呼吸を落ち着かせ、少し回復するのを待ってから2人で短冊街に戻る。



瑠璃「にしても、凄い術貰ったねぇ」



洋一が神に貰った術の巻物。

休憩中にそれを見せてもらった時は目を丸くしたものだ。



洋一「?お前のはどんな術だったんだ?」


瑠璃「洋一のよりは簡単な術。でも、そうだね・・・失敗したら自分がヤバイって意味では同じぐらい危険な術かも」


洋一「マジか・・・」


瑠璃「あの神様(仮)は、どういう基準でうち等に渡す術を決めたんだろうね。この神器にしたってそう・・・」


洋一「あー、確かに。術に関しては何か・・・見極めてる感あるよな。得意性質とか」


瑠璃「ふわふわー、ってした感じだけど、何だかんだでうち等より優れてる〈神の使い〉なんだねー、やっぱり」


洋一「ハハッ、瑠璃があの神様褒めるなんて珍しいな」


瑠璃「いや、褒めてはないから」



他愛無い話をしながら街を歩く。

宿に戻る前にどこかで夕飯にしよう、という話になり2人で店を探している時だった。



瑠璃「ん・・・?」



路地の方で5人の子供達が集まって何かを言い合っているのが目に入った。

皆で遊んでいるのだろう。別に不思議なところはどこにもない。


しかし、空はもうオレンジから紫色に変わっている。子供だけでいつまでも出歩いていい時間帯じゃない。

瑠璃の視線を辿ったのだろう、洋一も子供達に気付いたようだ。その子達に向けて声を飛ばした。



洋一「おーい、もう日暮れたぞー。母ちゃん達心配するから早く帰ってやれ」



声をかけられて驚いたのかもしれない。5人の内の2人の女子がビクッ、と肩を跳ね上げた。

友達を脅かすな、とでも言うように男子3人がムッ、とした顔を向けてくる。そして、その内の1人の少年が口を開いた。



少年「兄ちゃん達にはかんけーないだろ。こっちは忙しいんだ!」


洋一「おー、とんだマセガキだな」


瑠璃「忙しいってどうして?何かあったの?あ、もしかして家出してきたとか?」


少年「そんなんじゃないやい!」


少女「そ、その額当て知ってる。お姉さん達、忍者・・・だよね?」


少年2「え、そうなの!?」


洋一「ああ、そうだぜ。木の葉と砂の忍者だ」


少年2「スゲー!」


少女「忍者って・・・お金を払ったら、何でもしてくれるんだよね?」


瑠璃「凄く語弊があるけど・・・まぁ、そうだね(苦笑」


少女「じゃ、じゃあ・・・お願いがあるの。アメノを・・・・友達を、」


少年「おい!」



余計なことを言うな、とばかりに制止する少年だったが、逆に少女に睨まれた。



少女「だってしょうがないじゃない!私達だけじゃ見付けられなかったんだから!」



怒鳴る少女に隣にいた物静かそうな少女も強く頷く。

押し黙る少年。残りの2人の少年達もそんな友達を見ておろおろしていた。


瑠璃と洋一は互いに顔を見合わせる。

何か訳ありそうだ、と頷き合い、子供達に向き直った。



瑠璃「詳しく話してくれる?」


少女「うん・・・。私達、お昼から6人でかくれんぼしてたの」


瑠璃「、」



かくれんぼ、その単語を聞いた瑠璃の顔が僅かに陰った。

しかしそれに気付く者はいない。


気付かずに、子供達は洋一は話を進めていく。



少年3「ぼ、僕が鬼で・・・ここにいる4人は見付けられたんだけど、アメノ君だけが見付けられなくて・・・・」


少年2「もしかしたら飽きて家に帰ってるのかもー、って見に行ったんだけど・・・まだ帰って来てないって」


少女「それでどうしよう、って話してたの」


洋一「街全体でしてたってことはねぇんだろ?範囲を決めてしてたはずだ。どこでしてたんだ?」


少年2「短冊城の近くで・・・」


洋一「は?あの城は壊されたとこでまだ瓦礫とか色々残ってて危ないんだぞ?」


少年「知ってるよ!だから、城の方には行かない、絶対隠れないって皆で約束してやってたんだ!」


瑠璃「・・・・・・」




「・・・けど、そんな遅くまで遊ぶなよ。最近、物騒なニュースが出回ってるんだからな。

後、なるべく変なところには隠れんな」


「はいはい。分かってるよ、それぐらい」





瑠璃「皆で探しても見付からないってことは、もしかしたら・・・アメノ君はその約束を破っちゃったのかもね」


少年「っ・・・うん。そうじゃないか、って皆で話してた。だから探しに行こうって、」


少女「危ないからダメだよ」


少年3「って、揉めてケンカになっちゃって・・・」


少女2「、(コクコク」


洋一「そこに俺達が声かけてきたってわけか」


少年3「うん・・・」


洋一「で、その友達を見付けてほしい、と」


少女「うん。私達のお小遣い全部あげるからお願い!」


洋一「金で忍者を雇おうなんてホントにませてんなー」



笑ってそう言って、彼は懇願してきた少女の頭を撫でた。



洋一「そのお小遣いは欲しいものを買う時に使えな」


少女「でも・・・」


洋一「だいじょーぶ。こんな可愛いお願いはタダで聞いてやれるから。な、瑠璃」


瑠璃「!う、うん・・・そうだね」



歯切れ悪く答える彼女は、どこか落ち着かない様子で自分の左腕を掴んでいた。

どうしたんだろう、と不審に思う洋一だったが、それよりも子供を探す方を先決させた。



洋一「そーいうわけで、その友達は俺達が責任を持って見付けて家に送り届けるから、お前等はもう家に帰れ」


少年2「えっ!?」


少年「そんなの出来るか!」


少女「私達も一緒に行く!」


少年3「うん!」
少女2「、(コクコクッ」


洋一「ダーメーだっ。家の人も心配するだろ」


少年「俺達の声じゃないとアメノは出てこないかもしれないだろ!」


洋一「う゛っ・・・」


少年「大体!兄ちゃん達が本当の本物の忍者とも限らない!もしかしたらアメノをそのまま誘拐しちゃうかもしれない!」


洋一「Σ誘拐て!しねぇよ、そんなこと」


少年「分かんないじゃん!魔が差したら人は何するか分からないって父ちゃん言ってたぞ!」


洋一「Σ親子でどんな会話してんだよ!?

ちょっ、ちょっと瑠璃ー、お前からも何か言ってくれよ〜!」


瑠璃「んーと・・・そうだねぇ。

うち等のことを信用してくれない、そんな酷いこと言う子の友達は探してあげられないかな〜?」


少年「〜〜〜っ!―――いいよ!じゃあ!俺達だけで探すから!!」


少女「ちょっと、タタミ!」


洋一「それはもっとダメだ!!」


瑠璃「アハハ、振り回されてる」


洋一「笑ってる場合じゃねぇだろ。本当に行く気だぞ、こいつ」


瑠璃「うんうん、そうだね。もううち等が折れるしかないみたい」


洋一「えー、でも・・・」


瑠璃「こーいう子はたとえうち等が信頼出来る忍者だとしても心配で後からついて来ちゃうよ」


瑠璃「(あの時の・・・紗那みたいに、)」


瑠璃「それだったら最初っから一緒に行った方が危険も避けられる」


洋一「そうだけど、」


瑠璃「うん、洋一が渋るのも分かるよ。だからね・・・タタミ君だっけ?」


タタミ「何、」


瑠璃「うち等と一緒に行っていいのは最低2人まで。

後の3人はその2人の親御さんと自分達の親御さん、後アメノ君の親御さんに事情を説明するために残ってくれないかな?」


タタミ「・・・・・・」


瑠璃「その条件が飲めないなら、うち等は本当にアメノ君を探さないし、勝手に危ないことをしに行く君達だって力づくで家に返す。それじゃ困るでしょ?」


タタミ「っ・・・」


少女「タタミ、」


タタミ「〜〜〜っ・・・分かったよ」


瑠璃「決まり!じゃあ、誰がうち等と一緒に来てくれる?」


タタミ「俺と・・・」


少女「私が行く!」


タタミ「お前さっき危ないからダメって言ってたじゃないか!」


少女「私達だけで行くのがダメなの!お姉さん達が一緒に行ってくれるって言うならそりゃ行くよ!」


タタミ「女は来るな!」


少女「お姉さんだって女よ、バカなの?男女差別反対!」


タタミ「ユーゴ、お前が来い!」


少年2「う―――(少女「ユーゴ、」ううん・・・シキミの方がいいと思う(汗」


シキミ(少女)「決まりね!」


タタミ「だぁ〜っ、もう!」



洋一「力関係が一瞬で分かったな・・・(苦笑」


瑠璃「これぐらいの年頃の子達なら普通じゃない?

リーダータイプの女の子ならクラスに1人ぐらいいたでしょ?」


洋一「・・・瑠璃もそーいうタイプだったんじゃ・・・・」


瑠璃「、うちは違うよ。・・・うちは、」


瑠璃「(アメノ君と同じタイプだから・・・)」







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