秘密を守れますか?U

□並行世界
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イクマ「さて・・・どうするよ?」



穢土転生によって蘇らせた初代火影と二代目火影。

その2人の後ろで〈選り人〉ダグに受けた右肩の傷を押さえながら音の忍、イクマは尋ねた。


肩で息をしている三代目火影はこの場の戦力にサッと目を通す。

洋一はイクマの幻術を受けて見るからに疲労困憊。

自分よりも若い風影はまだ少し余裕がありそうだ。

砂の協力者らしい闖入者、ダグに至っては怪我1つ負っていなければ、息1つ乱していない。戦力としては申し分ない。


しかし、相手はいくら攻撃をしても再生する死者。しかも先代と先々代だ。持久戦になれば敗北するのは確実に自分達だろう。




だから―――




三代目火影は、ここで覚悟を決めた。



火影「すまんな、洋一」


洋一「!!」


火影「わしにはもうあの手しかないらしい」


洋一「まっ―――!」


火影「術比べはもう止めじゃ!ここからは血みどろのおぞましき戦いじゃ・・・。忍らしくのぉ!!」


洋一「待ってくれよ、三代目!!」



叫ぶが、それは三代目火影の耳に入れてもらえない。



火影「(穢土転成・・・。これは、術者を殺したところで術は解けぬ・・・・。

なれば・・・初代様、二代目様お許しくだされ・・・・。あの術をかけまする)」


風影「、」



両手を合わせ、チャクラを練り始める三代目火影。

そんな火影を必死に止めようと叫んでいる洋一。


そんな2人の姿を交互に見た風影は1つの仮説を立てた。



風影「(やはり火影は・・・)」


イクマ「俺を殺すか?俺1人が死んだところで大蛇丸サマは何も感じないだろうが・・・まぁ、里の脅威を1人でも多く消し去れるならあんた等はそれでいいわけだ」


火影「イクマと言ったな。貴様、それ程の力を持っていながら何故大蛇丸の下につく?」


イクマ「、・・・それが俺の生まれた意味だから、ってところだな」


火影「何・・・?」


ダグ「、」


イクマ「従ってた方が、逆らわねぇ方が楽なんだよ。不死の術、なんておっそろしい術まで完成させちまうお人なんだからよ」


火影「!不死の術じゃと・・・!?」


猿魔「奴め、やりおったか・・・」



不死の術とは、自らの精神をこの地に永劫留める法。

つまり、新しい肉体を見付け、その肉体に自らの精神を入れ込み乗っ取る転生術のことだ。


大蛇丸は里にいた頃よりその術を完成させようとしていた。

里の同胞を実験体に研究していたのだが、それが三代目火影に見付かり、結果、里抜けする理由となった。



イクマ「あの人の野望にはあんたが邪魔なんだよ、三代目」


火影「―――!

なるほど・・・。うちはサスケか!」


イクマ「ああ、大蛇丸サマは写輪眼にえらくご執心のようだからな」


火影「・・・・・・」



今まで動かなかった初代が印を組む。

途端、彼の秘術による木遁で生み出されたうねる樹海が屋根を埋め尽くした。


生き物のように蠢く枝が三代目火影達に襲い掛かる。


風影は砂金で、三代目火影は金剛如意で枝を防いだが、疲労困憊の洋一はまともに動けない。



洋一「っ!」


ダグ「手のかかるガキだ」


洋一「へ―――」


ダグ「舌噛むなよ」


洋一「って、Σえぇっ!?」



枝を避けながらやって来たダグがすぐに胸倉を掴んできたかと思うと―――

次の瞬間、洋一は空に向かってぶん投げられた。



ダグ「マナ!後は頼む」



マナ「はーい!」



パシッ、と。

空へ投げ飛ばされた洋一を受け止めたのは、背中から蝶の羽のようなモノを生やした緑の少女だった。


さすがの洋一もこれには戸惑わざるを得ない。



洋一「えっ、羽!?飛んで・・・え!?」


マナ「?羽が気になる?

1番短かったから後遺症はないと思ってたんだけど・・・そうでもなかったんだよねー」


洋一「は?後遺症?」


マナ「とりあえず回復させちゃうね」



足場の良さそうな枝の上に降り立ち、彼女は医療忍術で洋一にチャクラを送っていく。

見ず知らずの人間にそんなことをされて洋一は疑問符を頭上に浮かべるばかり。



洋一「あんた達は・・・何なんだ?」


マナ「泡の忍者だよ。私はマナ。あなたを投げ飛ばしたのがダグさんで、あのターバンの人がリュイさん、角を生やしてる人がミナヅキ様」


洋一「(泡・・・?泡なんて原作には出て来ねぇよな・・・・?)」


洋一「何で一緒に戦ってくれるんだ?」


マナ「砂の人達にはすっごくお世話になったの。だからその恩返し」


洋一「イクマは・・・あのコウモリ使いは、あのダグ?って人を〈えりびと〉って呼んでたんだけど・・・・何なんだ、それ?」



顔だけを軽く振り返らせ、後ろからチャクラを送ってくれる少女に尋ねる。

すると、マナはフッと笑って小さく首を横に振った。



マナ「私達の事情をあなたが知る必要はないし、あなた達の事情を私達が知る必要もない。

私達とあなたを結びつけてるのは砂っていう共通の味方。友達の友達みたいなそんな希薄な関係でいいんだよ」



遠回しの拒絶。

砂は受け入れているが、だからと言ってその砂と同盟を組んでいる木の葉を受け入れているわけではない、ということだろう。


洋一は押し黙る。

数秒の沈黙の後、彼はこう言った。



洋一「でも・・・ありがとう。一緒に戦ってくれて」


マナ「うん、―――どういたしまして」



チャクラを送り込まれている間、洋一は戦況を見てじっと考える。

このままでは原作通り、三代目火影があの術を使ってしまう。



洋一「(どうすればいい・・・?)」



止める方法はないか。

あの術を三代目が使わなくても何とか出来る方法はないか。



洋一「(俺が三代目の代わりにあの術を使う・・・?けど、影分身が使えねぇ俺じゃ何とか出来るのは1人だけだ。

何か・・・何かねぇのかよ!)」



考えに考えを巡らせるがいい案は浮かんでこない。

それどころか、




未来「諦めろ。お前に出来ることは何もねぇ」




去年、〈REBORN!〉の世界で彼女に言われた言葉が蘇ってくる。




未来「何かを成し得たきゃもっと前に動け。当日にドタバタしたところで、足掻いたところで何も変わりゃしねぇ」




洋一「(分かってる!それでも原作通りの展開なんて・・・あんな悲しい現実は迎えたくねぇんだ!)」






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