秘密を守れますか?U
□だが進む時の針
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ドーム型の大きな試験会場。
その場所で今、中忍試験の本選が始まろうとしていた。
本選に出場する13名の少年少女は、戦闘フィールドとなる中央に横1列に並ばされていた。
本来ならば15名いなければおかしい。その場にいない者のことを観客席についたいのが隣に座っているサクラと紗那に向けて言う。
いの「・・・サスケ君、まだ来てないわね・・・・」
紗那「うん・・・」
サクラ「・・・・・・」
ナルト「(何やってんだ・・・サスケの奴・・・・)」
キョロキョロ
シカマル「(アレ?俺とやるドスって奴もいねーじゃん・・・)」
キョロキョロ
いない人間を探し、視線を彷徨わせる2人。
そんな2人を彼等の前に背を向けて立っている試験官―――不知火ゲンマが注意する。
ゲンマ「こら!オロオロしてんじゃねー!しっかり客に顔向けしとけ」
ナルト「!」
ゲンマ「この〈本選〉―――お前等が主役だ!」
ナルト「・・・・・・」
ナルト「(サスケとやるのは確か・・・)」
チラッ、と我愛羅の顔を見る。
ナルト「(・・・あいつ(サスケ)・・・・まだ治ってねーのかな・・・)」
サクラ「・・・・・・」
サクラ「(・・・あの時・・・・病院をホントに抜け出したのかなぁ・・・・。サスケ君の身に、実は何かあったんんじゃ・・・)」
紗那「サクラちゃん・・・」
いの「・・・サスケ君心配なのは分かるけどさー、とにかく、すぐナルトの試合なんだからさー。心配ばかりしないでナルトの応援してあげたら?」
サクラ「・・・・・そうね・・・!」
火影「サスケはまだ見付からんのか?」
観客席よりも高い櫓。
そこで席についていた火影は傍に控えている特別上忍、並足ライドウにそう尋ねた。
ライドウ「暗部数名のチームで、依然捜し回っていますが・・・まったく・・・・」
そこで彼は声を抑え、火影の耳元で話す。
ライドウ「もしかすると、既に大蛇丸の手に・・・そうなっていてはもう、見付けることは・・・・」
火影「・・・・・・・分かった」
すると、そこへ・・・
火影「!・・・・・おお、これはこれは・・・風影殿!」
火影の隣に用意されていた席。
そこに着く風影の姿を観客席にいるバキと、本選に出場する砂の下忍達が見ていた。
瑠璃・海斗「「、」」
カンクロウ・テマリ「「・・・、」」
未来「♪」
洋一「・・・・・・」
洋一「(いよいよ・・・始まるな)」
火影「遠路はるばるお疲れじゃろう」
風影「いえ・・・今回はこちらで良かった。まだお若いとはいえ火影様にはちときつい道程でしょう。早く五代目をお決めになった方が良いのでは・・・・」
火影「ハハ・・・まぁそう年寄り扱いせんでくれ。まだ、5年はやろうと思っておるのに・・・・」
ライドウ「・・・・・・」
火影「では、そろそろ・・・始めるかの・・・・」
スッ、と立ち上がった彼が前に進み出る。
1列に並んでいる下忍達、そうしてこの会場に集まっている者達へ挨拶を始めた。
火影「えー、皆様、この度は木の葉隠れ中忍選抜試験にお集まり頂き、誠に有り難うございます!!
これより予選を通過した14名の〈本選〉試合を始めたいと思います。どうぞ最後まで御覧下さい!!」
風影「・・・14名なら・・・・1人足りないようですが」
火影「・・・・・・」
ゲンマ「試合前に少し言っとくことがある。これを見ろ!」
と言って、彼が取り出したのは1枚の紙。
そこには予選終了時に見せられたトーナメント表と違うトーナメント表が書かれていた。
それを見て、ナルト達は目を見開かせた。
音忍、ドス・キヌタの名前が削除されていたのだ。
ゲンマ「少々、トーナメントで変更があった。自分が誰と当たるのか、もう1度確認しとけ」
シカマル「(ドスって奴、棄権したのか!?)」
我愛羅「、」
ナルト「あのさ!あのさ!」
ゲンマ「何だ」
ナルト「サスケがまだ来てねーけど、どーすんの?」
ゲンマ「自分の試合までに到着しない場合、不戦敗とする!」
ナルト「・・・・・・」
ナルト「(おかしいってばよ・・・。アイツの性格なら、体引き摺ってでも来るハズなのに・・・・)」
ゲンマ「いいか、テメー等、これが最後の試験だ。地形は違うがルールは予選と同じで、一切無し。どちらか一方が死ぬか、負けを認めるまでだ。
ただし、俺が勝負が着いたと判断したらそこで試合は止める。分かったな。
じゃあ・・・1回戦うずまきナルト、日向ネジ。その2人だけ残して・・・・他は、会場外の控え室まで下がれ!」
そう言われた者達は各々控室へ向かう。
その道中・・・
瑠璃「あぁ〜・・・なんか出番まだ先なのに緊張してきた」
海斗「随分気が早いですね」
瑠璃「そんなこと言ったってしょうがないでしょ。相手が相手なんだから」
未来「安心しろ。墓は掘っといてやる」
瑠璃「うん、逆にお前をその墓に埋めるよ?」
未来「なるほど、ミイラになったらご本尊として祀られるわけか。やったね!」
瑠璃「Σ何そのポジティブ!?っていうか、徳も善行も積み重ねてないお前は即身仏になんか絶対なれないからね!」
未来「ダイジョーブ、ダイジョーブ。俺が成るのはあらゆる災厄を地上に降らす邪神だから(笑」
瑠璃「相変わらず最低だな、お前!」
未来「知ってる(笑」
海斗「、・・・緊張は解れたようですね、瑠璃さん」
瑠璃「うん、少し―――ってうっさいよ!こんな解され方しても嬉しくないし!」
などと、彼女達がいつも通りの会話を繰り広げていると、洋一が真剣な顔でふざけている1人の少女の名を呼んだ。
洋一「未来、」
未来「んー?」
洋一「助けるからな、俺は」
その一言で彼が言わんとしていることが伝わったのだろう。
彼女はフッ、と笑う。
未来「我等が風影様の許には行ってくれたのかぃ?」
瑠璃「?」
希「、」
洋一「ああ、そのはずだ。選り好みはもうしねぇ」
未来「凡手1」
洋一「へ?ぼん・・・?何だって?」
未来「さぁの。ま、好きにやれよ。どーせ俺は困らねぇ」
そう言って。
それだけ言って。
彼女は手をヒラヒラと振って階段を上っていく。
洋一「困らねぇって・・・原作を変える気はねぇんじゃ・・・・」
瑠璃「うん、そのはずだよ」
洋一「じゃあ何であんなこと・・・」
海斗「原作を知らない僕達に聞かれてもね」
希「・・・、」
希「(凡手・・・つまらぬ手、か。洋一がとった手がつまらない・・・・そう言いたいのか?)」
募るは異心。
キバ「おい、ヒナタ、ここ空いてんぜ!」
同じ班の一員、シノの応援と試験の観戦に来た彼が、一緒に来た同じ班員の少女を呼ぶ。
ヒナタ「う・・・うん」
キバ「こりゃ見ものだ」
ヒナタ「(・・・・・ナルト君・・・)」
いの「つっても相手がネジじゃナルトに勝ち目は無いわね・・・」
紗那「ナルト君なら・・・きっと大丈夫だよ。心も、体も強いから・・・・」
紗那「(私なんかと違って・・・)」
浮かぶは焦心。
コテツ「・・・しかしあのガキがここまで残るとはな・・・・」
イズモ「んー・・・運だけで残ってきた奴は所詮・・・・ここまでかな。あのナルトって奴、相手が悪過ぎる。・・・日向一族にはいくら何でも勝てねーよ」
隣に座っていた中忍2人のその会話にヒナタはムッ、と顔を顰める。
キバ「(まぁ、最初は俺もそう思ったが・・・あいつをなめてるとビックリするぜ。皆さんよォ・・・・)」
赤丸「クゥ〜ン」
キバ「赤丸どした?」
赤丸「クゥ〜ン、ワン」
キバ「何だって・・・!何処に・・・・」
相棒に何事かを伝えられた彼は辺りを見回す。
そうして、見付けた。白い装束を纏い、猫のような狐のような白いお面を被った人物を。
キバ「(何でこんなとこに暗部がいんだ。・・・何かあんのか!?)」
駆け巡るは人心。
「中忍試験・・・か。わし等が眠っておる間に俗世は目まぐるしく移ろうておったんじゃな」
「見た目ガキなあんたがそれを言うと違和感だらけだな」
ある観客席の一角。
そこで5人の少年少女が今か、今かと試合が始まるのを待ち望んでいた。
「おばあちゃん、お茶どうぞー」
「ばーさん、茶菓子もあるぞ。喉に詰めないようによく噛んで食べてくれ(笑」
「年寄扱いするでないっ!わしはまだ16じゃと何度も言うておろうが!」
「じゃあ年下らしく年上の俺達の言うことを聞くんだな。お嬢ちゃん(笑」
「うわあああっ、止めろ止めろ!お嬢ちゃんなどと言うでない!鳥肌が立つ!」
「面倒臭ぇババアだな、おい」
「お婆ちゃんなのに・・・お嬢ちゃん・・・・?じゃあ・・・おばお嬢ちゃん!」
「ほら見ろ!そち等がそんなことを言うから純粋な子供が変な発言をするんじゃ!」
「おばあちゃん、落ち着かないと血圧が上がっちゃうよ」
「ぐぬぅぅっ」
「天然な良心ほど恐ろしいものはないよな」
「あぁ、怒るに怒れないからな」
「そ、そんなことよりじゃ!為すべきことはちゃんと分かっておるな?」
「勿論!」
「ばーさんより物忘れは酷くないさ」
「そうじゃなきゃこの里に・・・ここに来たりしねぇ」
「うーっ!」
満ちるは義心。
様々な〈心〉が交錯する中、
ネジ「何か言いたそうだな・・・」
ナルト「前にも1度言ったろ・・・―――ぜってー勝つ!!」
中忍試験本選が始まる。
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