秘密を守れますか?U
□◇イチニツイテ
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――6人がトリップして早1週間・・・
未来「だーかーらー、あれはれっきとした戦略なんだっての」
瑠璃「だとしても、上手くいく可能性が低いって分かってたくせに実行するのはどうかと思う」
未来「何ですか、お前はまだヴァリアー隊員のつもりでいるんですか。
成功確率が90%もなかったらやらねぇのか」
瑠璃「いや、そーいうわけじゃなくて・・・。あんなぶっつけ本番みたいなやり方がイヤなの」
未来「バカ。それはアレだよ。お前の力ならヨユーで出来ると思ってだな―――」
瑠璃「驚く程胡散臭い信頼をありがとう!」
未来「どーいたしまして(笑」
瑠璃「あーもー、こいつムカつくー。今すぐ殴りてぇ」
海斗「そんなどうでもいいことより、」
瑠璃「どーでもよくないから」
海斗「上の人達にはどう報告するつもりですか?」
瑠璃「おい、無視か」
未来「う〜ん・・・正当防衛ってことでいんじゃね?」
瑠璃「無理あるでしょ、それ。誰がどう見ても過剰防衛だよ」
未来「俺は・・・俺は悪くねぇ!(テイルズのルーク風」
彼女達がいる場所は何処かの遺跡内。
いつも通りの会話を繰り広げる3人の周りには、―――倒された数人の屈強な男達+巨大サソリ。
海斗は気絶している男達を数秒凝視し・・・
海斗「埋めましょうか」
未来「ナイス・アイディア!」
瑠璃「Σいや、待って!それ証拠隠滅する気満々だよね!?」
海斗「幸いここは荒廃していていつ崩れてもおかしくありません。ですから、」
未来「こいつ等は不慮の事故で生き埋めになったってことで」
瑠璃「なんて恐ろしい偽装工作なの!?」
未来「俺達は何も見てねぇ。何も聞いてねぇ。知らない、知らない、何も知らない」
瑠璃「早まらないで、未来!もっとよく考えて!」
未来「僕にはこうするしかないんだ」
瑠璃「お前は間違ってる!たとえ上手く偽装出来たとしても、」
未来「〈お前の手は一生汚れたままだ〉ってか?フッ、笑止。お前の綺麗事はもぅ聞き飽きたよ」
瑠璃「未来・・・」
海斗「はいはい、火サスごっこはそのへんにして真面目に考えましょう」
瑠璃「いや、お前が最初に〈埋めよう〉なんて言うからでしょ。
こいつのノリの良さを舐めたらこうなるんだって」
未来「ジャジャジャーン!ジャジャジャーッ!」
瑠璃「ほら、見ろ!火サスのBGMまで口にし出したよ!」
海斗「すいません、僕が悪かったです。だから戻って来てください、未来さん」
未来「!あ・・・」
瑠璃「?どーしたの?」
未来「誰か来た」
言って、彼女は後ろを振り返る。
自分達がいる場所に通じる入り口に目を向ければ、ほんの2、3分後に近付いて来る足音が聞こえてきた。
走っているのか、その足音のリズムは早い。
まだ他に自分達が倒した男達の仲間がいるのか、と瑠璃はため息を吐いてクナイを構える。
入り口付近に足音の主の人影が見えた。
警戒する様子もなく、その人物は身を乗り出してくる。
「お前達、無事―――」
瑠璃達3人を確認し、すぐに彼女達3人の周りに倒れている巨大サソリ+屈強な男達を見たその人物の時間が一瞬止まる。
「――のようだな」
強い日差しを防ぐために頭と左顔面を覆うように布をし、
砂隠れの額当てとベストを着た右顔面に隈取のようなものがある男―――バキはホッ、と安堵の息を漏らす。
未来「無事なもんか。こんな奴等がいるなんて聞いてねぇぞ」
ビシッ、と。
自分達が倒した男達を指差して上忍である彼に噛み付く。
海斗「僕達はまだ信用されていない、そういう解釈でいいですか?」
瑠璃「え、それってあわよくばうち等を殺しちゃおう、って上の人達が考えたってこと?」
バキ「それは違う。その抜け忍部隊が隠れ家としていたのは、ここから東に30キロ離れた洞窟のはずだったんだ」
未来「誰かに偽の情報掴まされたってことか?」
バキ「あるいは、味方に内通者がいるか・・・だな」
瑠璃・未来「「マジでか」」
バキ「まぁ、それは目を覚ましたこいつ等に詳しく聞けばいい。とにかく、ご苦労だった。
お前達には次からBやAランクの任務についてもらうこともあるだろう。備えておけ」
瑠璃「了解」
未来「抜け忍部隊ってことはさー、今回の任務のランクもCからBに変わるよな?」
海斗「そうなりますね」
未来「ってことは、だ。その分の報酬もちゃんと貰えるんだよな、バーキ」
彼女達が倒した抜け忍部隊を縛り上げようとしていたバキの手がピタリ、と止まる。
そして、数秒して・・・
バキ「無い袖は振れん」
瑠璃・海斗「「(確かに・・・)」」
風の国は忍五大国の中で1番貧しい。
しかも、この国の大名は軍縮の方針を打ち出し、他国の隠れ里に任務を依頼するなど自国の里の力を重視していない。
その為に砂隠れの里の運営は弱体化を始め、戦力は衰えつつある。
まだこの世界に来て1週間しか経たないが、その風の国と砂隠れの現状を彼女達はよく理解している。
無い袖は振れない。正にその通りだ。
未来「んなもん、あの大名から貪ればいい。あいつの食費を真っ先に削ぎ落とせば財政難も解消するだろ」
バキ「口を慎め。相手は国のトップだ。そう簡単にいく問題ではない。それぐらいお前も分かっているだろう」
未来「それでも、俺は断言するよ。いつかゼッテーあの大名から金を巻き上げるってな」
バキ「何をバカなことを言って―――」
未来「よーし!そんじゃぁ、瑠璃、海ちゃん、里まで修行を兼ねて競争しよーぜ」
瑠璃「えー!任務終わらせたところなんだからゆっくり帰ろうよ」
未来「位置についてー!」
瑠璃「聞けよ、おい」
海斗「この人には何を言っても通用しませんよ。諦めて走りましょう」
瑠璃「ハァ・・・。分かったよ」
未来「用意・・・
―――ドンッ!!」
ダッ!と。
里に向かって駆け出す3人。
1秒も満たない時間でいなくなった彼女達を横目で見送り、残っているバキは深いため息を吐く。
バキ「まったく・・・あいつ等は」
そこで、はたと気付いた。
バキ「待て。俺1人で5人も運べるわけが―――」
返事はない。
3人は風の如く逃げて行った。
1番面倒な仕事を上司であるバキに押し付けて(笑
そのことで怒られ、罰任務に行かせられるのはそれから6時間後のこと・・・
未来「職権濫用、はんたーい!下忍が生き易い里作りを強く望む!
里の下忍の為に署名お願いしま―――」
ゴンッ!
社会運動を始めようとしていた彼女の頭に瑠璃の拳骨が炸裂する。
瑠璃「バカなことやってないでさっさと済ませるよ!」
海斗「罰任務は3つもあるんですから」
未来「おかしい・・・。ツッコミが日に日に暴力的になってる。
だが、しかし!俺は負けん!こんなところで負けては、一流のわらわせしの名が廃る!」
海斗「猿ぐつわと首輪とリードが必要ですかね、未来さん?(黒笑」
ぐわしっ、と。
彼女の首に腕をかけてそのまま引っ張って行く。
ズルズルと引き摺られていく少女は、尚も口を開いた。
未来「俺はここで自由と解放を求めてみる!」
瑠璃「諦めろ。そんなもの今のお前にはないんだから」
未来「Σ何ですと!?アルカディアが・・・俺のアルカディアが遠ざかっていくぅぅぅ!」
※アルカディア=古代ギリシアの南部ペロポネソス半島の中央丘陵地帯にあった土地。
高山によって他の地方から完全に隔離し、後世、理想郷の代名詞となり、牧歌的な楽園に例えられた。
瑠璃「脚注出さなきゃいけないようなボケかますな!」
海斗「あなたもツッコミじゃなくて世界観無視のボケになっていますよ」
瑠璃「Σハッ!しまった!」
未来「洗脳成功(ニヤリ」
瑠璃「こ、こいつっ・・・更なるボケの高みへ上がろうとしてる、だと!?」
海斗「だから・・・!そういうのが未来さんの思う壺だと言ってるんです!」
砂組3人の毎日は、大体こんな感じ(笑
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