秘密を守れますか?U
□強制的な招集
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昔の話です。
ヒーローになるはずだった、主役になるはずだった1人の子供がいました。
弱きを助け、強きも助ける。
そんな心優しい子供の傍らには、1匹の獣がいました。
子供と獣はいつも一緒、いつも互いにないものを補い合っていました。
しかし・・・
しかし、それは長くは持ちませんでした。
ある時、子供が見付けてしまったのです。
自分の知らない世界を。
自分が見たこともない世界を。
見付けてしまいました。
心優しい子供は1人、足を踏み出しました。
・・・獣は、
獣は―――間に合いませんでした。
いつも一緒だった子供と獣。
どこにでもいるような子供と獣。
しかしその世界には欠かせなかった子供と獣・・・。
1人と1匹が離れたことで、小さな、とても小さな歯車が狂ってしまいました。
だけど誰もそれには気付かない。
小さな歯車は全体を揺らし、何もかもを狂わせていきました。
やはり誰もそれには気付かない。
間に合わなかった獣は1匹、子供のために石を積みました。
1人で行ってしまった子供の道標になるように。
間に合わなかったことを悔やみ、守れなかったことを嘆き、力を欲した獣は武器を取りました。
何度も何度も失敗を繰り返しましたが、そうしている内に知らず知らずの間、獣を支えてくれる人間が集まってきました。
入れ代わり、立ち代り。
気付けば、獣はもう1匹ではありませんでした。
そんな獣の〈今〉を見て、1人で行ってしまった、主役になるはずだった子供は―――・・・
昔の話はここでおしまい。
さて、それじゃあ〈今〉の話を始めましょうか。
秘密1 強制的な招集