奇奇怪怪

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  ピンポンパンポーン







突如、暗闇の中響き渡った甲高いチャイムの音。

反射的に7人は顔を上げる。この暗い中では見えるわけもないのにその音源を探し、視線を彷徨わせる。



悠香「チャイム・・・?」


瑠璃「何で!?ここ、廃校でしょ!?」


紗那「朱里なの!?今度こそ朱里なの!?お願い、怖いから止めてー!!(泣」



健矢「いいからお前等はさっさと来い!」


和則「ビ、ビビった〜・・・!何だよ、これ」



数名がパニックに陥り始めた時、前回同様“ソレ”が聞こえてきた。







≪校長先生、校長先生、大キナ箱ガ届キマシタ。至急、宿直室マデオ越シ下サイ。繰リ返シマス、至急、宿直室マデオ越シ下サイ≫








健矢「(くそっ・・・!)」



流れてきた放送に首を傾げる瑠璃達。

慎司の言葉で、これは不審者放送なのではないか、という話になる。



悠香「何でそんな放送が・・・」



慎司「分からない。けど・・・これは朱里達の仕業じゃないってことは確かだよ」



健矢「(瑠璃達を出すより、俺が残って一緒に行動した方がいいかもな・・・)」



和則「何かヤバそうだな、ここ・・・。健矢、瑠璃も紗那も悠香も、早く出―――」



出て来い、と言おうとしたのかもしれない。

しかしその言葉は最後まで続かなかった。


視たのだ。

彼等を急かそうと家庭科室の中へ向けたその目で。



和則「っ・・・健矢!!」



健矢「―――え?」



目を見開いた和則が、家庭科室へ、その中で1番近くにいた健矢の腕を掴み、彼を外へ引っ張り出した。



健矢「(おいおい、待て待て。違う。これじゃダメだ。これじゃ3人が・・・!)」



和則「瑠璃!お前等も―――!」



そして、和則は次に瑠璃達に向けて手を伸ばす。




だが、





それよりも早く、









  バタンッ!








家庭科室の引き戸がひとりでに閉まった。




慎司・くるみ「「!?」」


健矢「あ・・・」


和則「―――ざけんなっ・・・!」



前の世界と同じように、和則が「3人共、離れてろよ!」と言った後にドアを蹴破る。

ガシャン、と音を立てて倒れる扉。蹴破った本人が勢いよく中に入る。



すぐに瑠璃達がいない、という騒ぎが起こる。そして、和則が窓の外に誰かを見たという話も出て来た。


話に参加しつつも、廊下に引っ張り出されてしまった健矢は愕然としていた。



健矢「(ダメだった・・・)」



ドアの近くにい過ぎたことが原因だろう。

和則の行動を見誤ったのも然り。


あの状況なら、和則は全員を助けようと動くに決まっている。彼は、そういう人間だ。



健矢「(もっと中に、瑠璃達の傍にいれば良かった。そしたら、あいつ等と一緒にいられたのに・・・っ、)」



くそ!くそっ!と心の中で吐き捨てる。

全然上手くいかない。思った通りに行動出来ない。これでは記憶を持っている意味がない。


左腕に爪を立て、健矢は奥歯を噛み締める。



無理だね、という慎司の声が聞こえてきた。どうやら、窓の外に見たという人間の話をしているらしい。



慎司「窓を割らなきゃ外からは入れない」


くるみ「外にも・・・誰もいなさそう」


和則「けど俺は確かに・・・!」


慎司「うん、信じるよ」


和則「!」


くるみ「カズは健矢とか朱里、未来と違ってこんな時までふざけないもんね」



健矢「(ハハッ・・・ひっでぇな)」



内心を悟られまいと、健矢はポーカーフェイスを装う。



健矢「えー、これでも俺、時と場合は選んでるぞー。選んだ上でふざけてるぞー」


慎司「健矢、僕達にツッコミを期待しても無意味だよ」


健矢「くっ・・・!ツッコまぬなら、ツッコませてみせよう、三奇人!」


くるみ「攫われたのか消えたのか、どっちか分からないけど・・・とりあえず3人を探そう」


慎司「うん、まだ見て回ってないところもたくさんあるしね」


和則「さっきの放送の宿直室?だっけ?も気にかけつつ、だな。了解」



健矢「Σスルースキル発動、だとっ・・・!?」



慎司「宿直室かぁ・・・。2階とか3階だとかにあるイメージってないよね」


和則「確かに。じゃこの階のどっかか」


くるみ「健矢、何してるの。置いてくよ」



健矢「俺は・・・俺は負けない・・・・!この学校を出るまでに絶対こいつ等にツッコませてやる・・・!」



と彼が1人で意気込んでいると、くるみと慎司が先に廊下に出たのを見計らって和則が声をかけてきた。



和則「ところで健矢、」


健矢「ところで、で片付けられた・・・!(ガクッ」


和則「健矢、真面目な話」


健矢「?」



何だ?と言うように不思議そうに視線を向けると、和則は僅かに視線を彷徨わせた。

話す内容がまとまっていないのか。それとも言うべきか言わないべきか迷っているのか。そのどちらでもない何かなのか。健矢には判別出来なかった。


和則はポケットの中で、そこに先程入れた幼馴染のボイスレコーダーを握り締めていた。

小さく息を吐き、彼は健矢にこう尋ねた。



和則「・・・朱里達は、ここにいると思うか?」


健矢「、」



健矢「(先に来てるのか、後から来るのか分からないけど・・・そこは絶対なんだ、カズ。

俺達11人は、決まってこの中に入っちまう・・・)」



健矢「・・・ああ。いるだろ。あいつ等なら、きっと」


和則「そっか・・・。分かった。なら俺もそう思っとく」


健矢「、」


健矢「(ここで全部話したら、何か変わるかな・・・)」



その考えを、今までの世界の記憶が否定する。

彼、和則はどの世界でも自分達を庇い、助けて命を落としてきた。


問題はそれだけではない。

和則だけは自分達と違って何故か記憶を引き継がない。引き継げないから、経験も積めずやられてしまう。


どうしてそうなっているか、理由は分からない。

だからこそ、健矢は笑顔を作った。いつものように和則の前でおどけてみせた。



健矢「何だ、何だ、そんなにあいつ等が恋しいか?(笑」


和則「恋しいわ〜。恋しくて身が震えるわ〜」


健矢「ハハッ!俺も・・・















俺も今切実に瑠璃のツッコミが恋しいわ」










和則「ガチじゃん、それ」





くるみ「健矢ー、カズー、早くー。慎司が待ちくたびれてフィルム現像しようとしてるんだからー」





健矢「Σそれ長引くやつ!」


和則「ってかこんなとこまで持って来てたのか、ソレ!」










To be continued...
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