奇奇怪怪
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―――これは、家庭科室から始まったもう1つの話。
ピンポンパンポーン
場所は家庭科室。
突如、暗闇の中響き渡った甲高いチャイムの音。
反射的に7人の少年少女は顔を上げる。明かりもないこの暗い中では見えるわけもないのにその音源を探し、視線を彷徨わせる。
悠香「チャイム・・・?」
瑠璃「何で!?ここ、廃校でしょ!?」
紗那「朱里なの!?今度こそ朱里なの!?お願い、怖いから止めてー!!(泣」
健矢「いいからお前等はさっさとこっちに出ろ!」
和則「ビ、ビビった〜・・・!何だよ、これ」
数名がパニックに陥り始めた時、“ソレ”が聞こえてきた。
≪校長先生、校長先生、大キナ箱ガ届キマシタ。至急、宿直室マデオ越シ下サイ。繰リ返シマス、至急、宿直室マデオ越シ下サイ≫
瑠璃「何・・・?この放送?」
和則「大きな箱?」
慎司「!これって・・・不審者放送じゃない?」
紗那「え・・・?」
和則「俺達のことか?」
健矢「違う!」
くるみ「そっか。そーいうこと」
悠香「ど、どういうこと?」
慎司「ほら、僕達の学校なら、いない先生の名前を呼んでどこどこに来て下さいって訓練の時に流れてるでしょ?」
くるみ「例えば昇降口に来て下さい、だったら、不審者は昇降口から入って来たからそこには近付くな、ってこと。だから今の放送は、」
健矢「不審者が宿直室にいるから近付くな、避難しろってことだ」
悠香「何でそんな放送が・・・」
慎司「分からない。けど・・・これは朱里達の仕業じゃないってことは確かだよ」
和則「何かヤバそうだな、ここ・・・。瑠璃、紗那、悠香、早く出―――」
瑠璃「?」
出て来い、と言おうとした和則の目が大きく見開いた。
どうしたの?と瑠璃が視線で尋ねようとしたら、そんな彼がこちらへ向かって手を伸ばしてきた。
だが、
それよりも早く、
バタンッ!
家庭科室の引き戸がひとりでに閉まった。
瑠璃「えっ!?」
紗那「Σ何で閉めるのー!?まだ私達いるよ〜!」
悠香「え・・・でも今、誰も戸触ってなかったよね?」
瑠璃「うちにも・・・そういう風に見えた」
不審に思いつつ、瑠璃は引き戸に手をかける。
そのまま右に引けば、ガラッと音を立てて開いた。
しかし、
瑠璃「あれ・・・?」
その先に、和則達4人の姿はなかった。
廊下に出て左右を見渡してもどこにも見当たらない。
瑠璃「カズー?くーちゃーん?健矢ー?慎司ー?どこー?」
紗那「か、隠れて怖がらそうったってそうはいかないんだからねっ」
悠香「そういうのはうちの前に出て言ってほしいなぁ・・・」
瑠璃「くーちゃーん!その他3名、返事しろー!」
呼びかけるも返事はいっこうに返ってこない。
悠香「紗那が泣いちゃうよー」
と言っても、やはり返事はない。
瑠璃「・・・おかしい」
悠香「うん。さすがにここまでタチの悪いイタズラはしないよね」
紗那「じゃ、じゃあ・・・何でいないの?」
悠香「うちに聞かれても・・・」
瑠璃「・・・・・さっき、」
悠香・紗那「「?」」
瑠璃「カズがうち等の方見てビックリした顔してた・・・」
紗那「何で・・・?」
瑠璃「分からない・・・」
彼女は先程まで自分達がいた家庭科室の中を振り返る。
何も、誰もいない静かな教室だ。
ならば和則は何に驚いた?
瑠璃「何か・・・視えたのかな?」
悠香「幽霊とか?」
紗那「こ、怖いこと言わないでよ〜・・・!」
悠香「4人はその幽霊に攫われちゃったとか・・・」
紗那「ひっ、」
瑠璃「そうかな?うち等に向かって手を伸ばしたってことは、うち等の方が危なかったんじゃない?」
悠香「え、じゃあ攫われたのはうち等の方?
さっきと全然変わらない校舎に見えるけど・・・ここは別の次元とか空間ってこと?」
紗那「そ、そんなっ・・・」
瑠璃「悠香、想像力働かせ過ぎだから」
紗那「う〜っ・・・もう帰る(泣」
瑠璃「ほら、始まった」
悠香「うちももう疲れたから家に帰りたい」
瑠璃「だから帰れないんだって。迷子になっちゃったし、おまけにこの雨だしで」
悠香「うちの雨乞いがこれだけ効力を発揮するなんて・・・」
瑠璃「それはホントにね!」
紗那「くーちゃん達がいなくなったのに・・・何で2人はそんなに落ち着いていられるの」
彼女がそう言えば、瑠璃と悠香は顔を見合わせる。
そして、
瑠璃「それはアレだよね」
悠香「うん、アレだね」
2人「「自分よりパニックになってる人を見ると逆に落ち着くっていう心理」」
紗那「・・・ただ神経が図太いだけとも言えそうだけど、」
瑠璃「バイバイ、紗那」
悠香「うち等、先行くねー」
紗那「Σうわぁん!ウソ!ウソ!冗談だから!冗談だから1人にしないでぇ〜!!(泣」
まだ行っていない奥の部屋に向かって歩き出す瑠璃と悠香。
その後を紗那が必死に追いかける。
瑠璃は家庭科室から少し距離の空いた場所にある教室の扉の上を見る。
家庭科室のように部屋の名称が書かれた板はかかっていなかった。代わりにかかっていたのは南京錠だった。
瑠璃「鍵かかってる」
悠香「くーちゃん達がここに隠れるのは無理そうだね。奥も・・・ショーケースがあるだけで行き止まりだし」
紗那「外に出たとか・・・?」
瑠璃「うち等を置いて?それはないでしょ」
悠香「じゃあ2階とか?」
瑠璃「あの短時間で?大体、走る足音だって聞こえなかったじゃん」
自分で言って、はたと気付く。
そうだ。あの時―――ドアが閉まったあの時、足音はおろか彼等の声すらも聞こえてこなかった。
ドアが勝手に閉まった驚きの声も、自分達に大丈夫か、と問いかけてくる声も何も。
彼等の消息は、あの瞬間に完全に途絶えてしまった。
瑠璃「っ・・・」
ゾワリと体中に鳥肌が立つ。
このままだと何かがマズい。何かがいけない。そんな焦燥感に駆られる。
瑠璃「ここから出よう。何か・・・嫌な予感がする」
悠香「うん?」
紗那「さ、賛成・・・!」
そうして彼女達は見る。
引き返し、戻って来た昇降口で。
そこにあるべきものがなくなっていることに気付く。
紗那「!」
瑠璃「何で・・・?」
悠香「あれ・・・?うち等、靴しまったっけ?」
瑠璃「しまってないよ!靴も!カッパも!出したままにしてた。なのに・・・何で?
何でなくなってるの!?」
To be continued...