奇奇怪怪

□03
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  ピンポンパンポーン







突如、暗闇の中響き渡った甲高いチャイムの音。

反射的に7人は顔を上げる。この暗い中では見えるわけもないのにその音源を探し、視線を彷徨わせる。



悠香「チャイム・・・?」


瑠璃「何で!?ここ、廃校でしょ!?」


紗那「朱里なの!?今度こそ朱里なの!?お願い、怖いから止めてー!!(泣」



健矢「いいからお前等はさっさとこっちに出ろ!」


和則「ビ、ビビった〜・・・!何だよ、これ」



数名がパニックに陥り始めた時、“ソレ”が聞こえてきた。







≪校長先生、校長先生、大キナ箱ガ届キマシタ。至急、宿直室マデオ越シ下サイ。繰リ返シマス、至急、宿直室マデオ越シ下サイ≫








瑠璃「何・・・?この放送?」



和則「大きな箱?」


慎司「!これって・・・不審者放送じゃない?」



紗那「え・・・?」



和則「俺達のことか?」


健矢「違う!」


くるみ「そっか。そーいうこと」



悠香「ど、どういうこと?」



慎司「ほら、僕達の学校なら、いない先生の名前を呼んでどこどこに来て下さいって訓練の時に流れてるでしょ?」


くるみ「例えば昇降口に来て下さい、だったら、不審者は昇降口から入って来たからそこには近付くな、ってこと。だから今の放送は、」


健矢「不審者が宿直室にいるから近付くな、避難しろってことだ」



悠香「何でそんな放送が・・・」



慎司「分からない。けど・・・これは朱里達の仕業じゃないってことは確かだよ」


和則「何かヤバそうだな、ここ・・・。瑠璃、紗那、悠香、早く出―――」



出て来い、と言おうとしたのかもしれない。

しかしその言葉は最後まで続かなかった。


視たのだ。

彼女達を急かそうと家庭科室の中へ向けたその目で。



和則「!!」



目を見開いた彼が、家庭科室へ、その中にいる瑠璃達に向けて手を伸ばす。




だが、





それよりも早く、









  バタンッ!








家庭科室の引き戸がひとりでに閉まった。




慎司・健矢・くるみ「「「!?」」」


和則「―――ざけんなっ・・・!」



引き戸に手をかけてこじ開けようと試みる。

しかし、何かがつかえているのか全く扉は開かなかった。


くそっ、と和則が口の中で呟く。



和則「3人共、離れてろよ!」



中にいる3人にそう声をかけて。

手で開かないと分かった彼はすぐに家庭科室の引き戸を足で蹴破った。


ガシャン、と音を立てて倒れる扉。蹴破った本人が勢いよく中に入る。



和則「無事か!?」



肩で息をしつつ、閉じ込められた3人にそう尋ねた。

そう尋ねたはずだった。なのに返事が返ってこない。



和則「おい、瑠璃・・・?悠香?紗那?」








中に、彼女達がいない。








和則「は・・・?」



頭の中が真っ白になる。

そういえば、扉が閉まった時、彼女達の悲鳴は聞こえたか?紗那だったらすぐに悲鳴を上げただろうに。その声はしたか?


扉を蹴破る前、離れてろと言った自分の言葉に返事は返っていたか?



和則「い・・・いやいや!冗談よせよ。いるんだろ!?」



くるみ「え・・・瑠璃達、いないの?」


慎司・健矢「「!?」」



和則「隠れてるんだろ」



と言って、彼は彼女達を探し始める。

廊下に出ていた3人も中に入って来た。


暗くてハッキリと見えるわけではないが、人がいればシルエットで分かる。

だけどそのシルエットはどこにもない。気配すらない。


どこにも、瑠璃達3人はいない。



和則「タチ悪いぞ、お前等。俺を驚かせようったって・・・」


慎司「カズ、違うよ。隠れてるんじゃない。ましてや、僕達の目がおかしいわけでもない。瑠璃達は・・・いないよ」


和則「そ、んなわけ・・・そんなわけないだろ!?だって、さっきまで・・・・!いただろ、ここに!?慎司達だって見ただろ!?」


健矢「落ち着け、カズ」


慎司「そうだけど・・・いないんだよ、どこにも」


くるみ「な、んで・・・?消えた、ってこと・・・・?そんなの、」


慎司「あり得ない。僕だって、信じられないよ。でも・・・」


健矢「今見たものが真実、か」


慎司「うん・・・」


和則「・・・アイツだ


くるみ「え・・・?」


和則「アイツが3人を・・・!」


健矢「?」


くるみ「アイツって?」


慎司「何か見たの?」


和則「いたんだ・・・!ドアが閉まる瞬間!見たんだよ!窓の外に・・・―――誰かいた」


3人「「「!!」」」


慎司「、」



それを聞いた慎司が窓に近付く。

古びているが、割れている箇所はどこにもない。かかっている鍵は錆びて動かせそうになかった。


そこから導き出される答えは1つだけ。



慎司「無理だね。窓を割らなきゃ外からは入れない」


くるみ「外にも・・・誰もいなさそう」


和則「けど俺は確かに・・・!」


慎司「うん、信じるよ」


和則「!」


くるみ「カズは健矢とか朱里、未来と違ってこんな時までふざけないもんね」


健矢「えー、これでも俺、時と場合は選んでるぞー。選んだ上でふざけてるぞー」


慎司「健矢、僕達にツッコミを期待しても無意味だよ」


健矢「くっ・・・!ツッコまぬなら、ツッコませてみせよう、三奇人!」


くるみ「攫われたのか消えたのか、どっちか分からないけど・・・とりあえず3人を探そう」


慎司「うん、まだ見て回ってないところもたくさんあるしね」


和則「さっきの放送の宿直室?だっけ?も気にかけつつ、だな。了解」



健矢「Σスルースキル発動、だとっ・・・!?」



慎司「宿直室かぁ・・・。2階とか3階だとかにあるイメージってないよね」


和則「確かに。じゃこの階のどっかか」


くるみ「健矢、何してるの。置いてくよ」



健矢「俺は・・・俺は負けない・・・・!この学校を出るまでに絶対こいつ等にツッコませてやる・・・!」



と彼が1人で意気込んでいると、くるみと慎司が先に廊下に出たのを見計らって和則が声をかけてきた。



和則「ところで健矢、」


健矢「ところで、で片付けられた・・・!(ガクッ」


和則「健矢、真面目な話」


健矢「?」



何だ?と言うように不思議そうに視線を向けると、和則は僅かに視線を彷徨わせた。

話す内容がまとまっていないのか。それとも言うべきか言わないべきか迷っているのか。そのどちらでもない何かなのか。健矢には判別出来なかった。


和則はポケットの中で、そこに先程入れた幼馴染のボイスレコーダーを握り締めていた。

小さく息を吐き、彼は健矢にこう尋ねた。



和則「・・・朱里達は、ここにいると思うか?」


健矢「、・・・ああ。いるだろ。あいつ等なら、きっと」


和則「そっか・・・。分かった。なら俺もそう思っとく」


健矢「何だ、何だ、そんなにあいつ等が恋しいか?(笑」


和則「恋しいわ〜。恋しくて身が震えるわ〜」


健矢「ハハッ!俺も・・・















俺も今切実に瑠璃のツッコミが恋しいわ」










和則「ガチじゃん、それ」





くるみ「健矢ー、カズー、早くー。慎司が待ちくたびれてフィルム現像しようとしてるんだからー」





健矢「Σそれ長引くやつ!」


和則「ってかこんなとこまで持って来てたのか、ソレ!」






“ ―――ナ・・・イ―――・・・・ナ ”








和則「―――え・・・?」



廊下に出てすぐ。

彼は何かに反応するように再び家庭科室の中へ視線を向けた。


あるのは暗闇だけ。

窓の外にも、教室の中にも誰もいない。誰もいないはずなのに、



和則「(何だ・・・?今の声・・・・)」



傍にいる3人の顔色を窺ってみるも別段変わった様子はない。

アレを耳にしたのは自分だけだったのだろうか?



和則「(気のせいか・・・?)」



家鳴りか何かだったのだろう、と自己完結し、彼は健矢達3人と一緒に歩き始めた。


今度こそ、振り返ることなく。

耳を、傾けることなく。











“ ―――ナ・・・イ―――・・・・ナ。ウラ゛・・・ャマ―――シ゛ィ ”














To be continued...
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