DEATH GAME
□睥睨する狂気
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― Aqua green 硝子ノ風景 ―
望「ここが・・・ツェペシュ村?」
洋一「何つーか・・・殺風景なところだな」
デーメの樹海方面からの村の入り口。
そこで俊達4人と、髪と顔を隠すようにフードをすっぽり被ったルスは夕闇に染まる村を見ていた。
首都から大分離れた山に囲まれた辺鄙な田舎。
一見平穏な村に見えるがそこに温かみはなく、あるのは廃れたような冷たさと寂しさだけだった。
村を見回している望の隣で希が両腕を擦る。見ると、その顔は青くなっていた。
俊「、どうしたの?」
希「・・・なんかここ・・・・寒い」
洋一「確かにちょっと肌寒いな。日が沈む前に宿見付けねーと」
ルス「それならあっち。古いけど美味しい料理が出てくる宿がある」
望「そーいうところって高くない?」
ルス「大丈夫。都会よりは数段安価」
洋一「ならそこで決まりだな」
ルスの案内で宿に向かって洋一と望は歩いていく。
その後に俊も続こうとしたのだが、一向に歩き出そうとしない希の姿が目に付いた。
行かないの?と彼が尋ねようとした時だった。ボソリ、と希が顔を俯かせて呟いた。
希「そういう・・・寒さじゃない」
俊「(え・・・?)」
どういう意味だ、と考える俊の前で希が息を呑んだ。即座に、自身の右隣の虚空を仰ぐ。
俊「?」
希「異物・・・?」
虚空を仰いだまま、希は不思議そうに言葉を発す。
それはまるで、誰かが言った言葉をそのまま聞き返したようで。
まるで、そこに通常の人間には見えないナニカが誰かがいて、その人物と会話しているように俊には感じられた。
希「何が言いたい・・・」
不快そうに虚空を睨む。
しかし、やはりそこには誰もいない。俊には何も見えない。
俊「如月希、」
希「!」
名を呼ばれた彼が弾かれたように俊を見る。
初めてその存在に気付いた、というような顔で目を見開いていた。
俊「君・・・誰と話してるの?」
希「っ・・・何でもない。ただの・・・・独り言」
俊の横を通り抜けて、彼は洋一達の後に続く。
その背を見送った後、俊は彼が先程まで見ていた虚空を見つめる。
何もいない。誰もいないそちらに向けて言葉を放つ。
俊「誰か・・・いるなら答えてくれる?君は彼の何だ」
答えは、ない。
俊は踵を返し、先へ行った4人の後を追う。
その時、木々をざわつかせる風が女の笑い声に聞こえたのはきっと気のせいだろう。
≪クスクス。本当に・・・ここはいい村ね≫
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洋一「も、もう動けねぇ・・・」
俊「食べ過ぎだよ」
うっ、と悶えながら洋一は宿のベッドに倒れ込む。
その隣のベッドには既に希が横になり眠りにつこうとしていた。
この宿は老夫婦が切り盛りをしており、歳のせいで10ある部屋の半分しか掃除が出来ないことからもう半分は今は使われていない。
客も月に1度来ればいい方だ、と夫婦は言っており、2部屋をとった俊達を大変歓迎してくれた。
それはもう注文していない料理を無償で提供してくれる程。
洋一はその厚意を無下に出来ず、出された料理を全てたいらげた―――その結果がコレだった。
ベッドに横たわる2人に俊は小さくため息を吐き、窓辺に寄りかかる。
俊「(結局何も分からなかったな・・・)」
宿に着くなりルスは部屋にこもってしまった。
同室の望の話では、ケガの痛みと体調の悪さが重なってベッドに臥せっているらしい。
デーメの樹海で襲ってきた暁霞という蛍光色の少年。
彼がルスの肩に刺した鍼。あれは何だったのだろう。
俊「(アレで魔法が封じられた・・・?状態異常の封印か?だとしたら、パナシーアボトルで回復出来そうなものですけど・・・・違うのかな?)」
窓に映る自分の姿。
外は夜の帳に包まれている。街灯の1つもないらしいこの村は室内から見てもしんと静まり返っているのが分かる。
誰も外に出歩いていない。否、娯楽のないこの村ではこの時間に誰も出歩かないのかもしれない。
月明りもなく暗く沈んだ村。
黒一色の世界。そこに1つの白が浮かんだ。
俊「・・・?」
真っ白、というよりは青白い光の玉。
人魂を思わせるソレが暗闇の中に揺蕩う。揺らめき、何かに吸い込まれるようにフッ、と消えた。
俊「(今のは・・・?)」
人魂のようなものが消えた場所をもっとよく確認するために彼は窓の鍵に手を伸ばす。
その瞬間―――
「キャアアアア!!」
何処かから叫び声が響いた。
洋一「!」
希「んぅ・・・?」
俊「悲鳴・・・?」
微睡んでいた希が起き上がり、俊が窓から振り返る。
彼等2人が何か行動を起こすよりも先に洋一が部屋から飛び出した。
さっきまで動けないと言っていた奴がよくあれだけ俊敏に動けるものだ、と呆れながら俊は希と一緒に洋一の後を追う。
部屋から出ると、同じように悲鳴を聞いて飛び出したのだろう。丁度階段を降りようとしている望と合流した。
希「今の悲鳴は・・・?」
望「望達じゃない。多分、下」
3人はそのまま階段を駆け下りる。
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