合わせ鏡
□◆謎の事件
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セド「今、凄い音したね」
ノア「うん。何かあったのかもしれない」
広場の方から聞こえてきた女の人の悲鳴と大きな音。
馬の嘶きみたいなのも聞こえた気がしたけど・・・馬車か何かが倒れたのかな?
まぁ、僕には関係な―――
「ま、魔物だぁ・・・!!」
ノア「!」
「衛兵を呼べ!早く!!」
「女子供は家の中に!!」
ノア「チィッ・・・!セド、ライトを頼む」
セド「に、兄ちゃん・・・」
ノア「絶対ここから動かないで。いいね?」
子供達「う、うん!」
頷いてくれたのを確認して僕は広場へ駆けた。
担いでる2本の剣をさっと鞘から抜いて、横転してる馬車、そこから出ようとしてる男の人に襲い掛かろうとしてたウルフを切り捨てる。
ノア「次、」
残りはサイノッサス1匹とキラービー3匹、スケルトン1体か・・・。
何このまとまりのない魔物の群れ。
突進してくるサイノッサスをいなして、とりあえず3匹のキラービーにファイアボールを当てる。
いくら弱点属性って言っても、1発だけじゃ倒せない。だけどまぁ、怯んでくれたからひとまずよしとしよう。
のそのそ、ゆらゆら動いてるスケルトンに僕は向かっていく。
ノア「虎牙連斬!」
斬り上げの後に連続斬りをお見舞いする技を喰らわせる。
ガシャガシャって音を立てて崩れる骨。それを視界の端で捉えて、また突進してくるサイノッサスをクロスさせた剣で真正面から止める。
ノア「っ、」
ノア「(力強っ!)」
前に戦ったキアノランティスほどじゃないけど、結構な力で押されて後ろに弾き飛ばされちゃう。
後ろは建物の壁。ぶつかったらひとたまりもない。
だから僕は剣を地面に突き立ててブレーキをかける。
そうしてる間に、サイノッサスは馬車から出て逃げようとしてるさっきの男の人と馬丁さんを襲おうとしてた。
で、3匹のキラービーはまたブンブン飛んで広場にいる人、街の皆に避難するよう呼び掛けてた人達に向かっていこうとしてる。
ノア「こんのっ・・・!」
ここから走っても間に合わないと分かった僕は、腰に装着してた鞭でサイノッサスの足を絡めとる。
力いっぱい鞭を引いて転がしてから、意識を集中させて1.5秒の詠唱に入る。
ノア「細やかなる大地の騒めき―――ストーンブラスト!」
瞬間、地面から石礫が巻き上がって、上を飛んでたキラービー3匹に命中。これも弱点属性だからね。
力尽きて地面にボトボト落ちるキラービーから視線を外して、最後の1匹。起き上がろうとしてるサイノッサスに向かって行く。
―――その時だった。
ノア「!」
ノア「(また・・・!)」
川で聞いた、あの笛の音がまた遠くから聞こえてきた。
何なのさ、この音!
気になったけど、今はそれどころじゃないって自分に言い聞かせて突進してきたサイノッサスを地を這う斬撃、魔神剣・双牙で仕留める。
ノア「あぁ・・・疲れた」
両手の剣を一振りして息を吐く。
うん、前のキアノランティス戦はなるべく思い出したくないけどいい経験だったね。
あの魔物と1度やり合ったから、他の魔物と遭遇してもアレ程の強さじゃないって冷静になれるし、あんまり怖いと思わなくなったよ。
ノア「皆さん、大丈夫ですか?」
「あ、あぁ・・・ありがとう」
「助かったよ」
誰もケガっていったケガをしてないのを見て安堵する。
まったく、衛兵は何をやってるんだ。
魔物から街の人達を守るのが仕事だっていうのに全然来ないじゃないか。
未だ来ない衛兵に若干腹を立ててたら、横転してた馬車から這い出て逃げてた男の人が近付いてきた。
「いやぁ、強いな。おかげで命拾いしたよ」
ノア「お怪我がなくて何よりです」
「君は・・・傭兵、か何かか?」
ノア「はぁ・・・まぁ何でも屋的なことを生業とさせてもらってます」
「そうか。それはいい」
ノア「?」
「俺の名前はグロリア・デナーロ。どうだ、君。俺のボディーガードにならないか?」
ノア「はい?」
何言ってるんだろ、この人・・・。
よく見て見たら指には金や宝石のついたリングがいっぱい。服の装飾品も何か高そうだし・・・見るからに金持ちだね。
自分のことを自慢げに話し始める・・・何だっけ?あぁ・・・・グロリアさん?の話を僕は適当に聞き流す。
早く来い来い、衛兵さん。
倒した魔物の処分をお願いして、早く子供達の許に行きたい。
グロリア「―――というわけで、悪い話ではないと思うんだが・・・」
ノア「すみません。僕は、」
言いかけた時だった。
バサバサと羽を羽ばたかせる音が聞こえてきたと思ったら、空からガルーダがグロリアさん目掛けてやって来た。
ノア「危ないっ!」
咄嗟に押し飛ばすように庇えば、左肩にガルーダの爪が当たって肉を引っ掻かれた。
吹き出す血。
止血のためにその左肩を右手で押さえつつ、上に飛翔したあの魔物を目で追う。
ガルーダも旋回してこっちの様子を窺ってるみたいだ。
鳥系の弱点属性は地。
だけど、あんなに高く飛ばれちゃ地属性の魔法は当てられないな・・・
ノア「(よし、こうなったら・・・)」
僕は意識を集中させる。
地面に浮かび上がるのは緑の魔法陣。まずはコレで叩き落す。
ノア「落ちろ!―――ライトニング!」
小さな雷が落ちてガルーダの羽を掠めた。
命中はしなかったけど、そのおかげでバランスを崩して落ちてくる。これなら地属性の魔法を使うまでもない。
僕は左の剣でトドメを刺す。
ノア「フゥ・・・」
もういないよね・・・?
空に視線を向けてガルーダとか、他の鳥系の魔物がいないか確認する。うん、いない。羽の音も聞こえてこない。
また息を吐いて、剣を地面に突き立てる。で、左肩のケガをファーストエイドで治す。
魔法を連発し過ぎたみたいで、いつの間にか僕は肩で息をしてた。
ノア「(にしても・・・)」
今倒した魔物の群れを見る。
これだけの魔物がどうして街に?
近くの森から来たんだろうけど・・・被害はこの広場だけで済んだのかな?
別のところに出た魔物の討伐に衛兵の人が皆駆り出されてる、とか?
そんなことを考えながら2本の剣を鞘に、鞭をまた上着の下(腰)に装備してたら、その衛兵さんが5人やって来た。
倒れてる魔物を見て驚いてるみたい。
ノア「処分はあなた達に任せます」
そう衛兵さんに言って、剣を担いで帰り支度。
何か色々事情聴取的なことをされたら面倒だ。ほら、僕、一応指名手配犯だし。
魔物が倒されたって聞きつけたのか色んな人が広場にやってくる。野次馬根性が凄いよ。
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