合わせ鏡
□◆始まりの朝
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ノア「え?今・・・何て、」
「だから、王都に武器や防具を送るから今は何も売ってやれないんだ」
出て行く準備をしようと武具屋に立ち寄ったらこれ。
申し訳なさそうに言う店主のおじさんの言葉が一瞬理解出来なかったよ。
ノア「何で、ですか・・・?何で、王都に?」
おじさん「近々ガルバンゾ国と戦争になるらしくてな。その準備をしてるらしい」
ノア「!!」
そうでした・・・!
ゲームでもサレがエステルに言ってたね。「近々、君の国とは戦争になる」って・・・すっかり忘れてたよ。
ノア「でも、僕も防具とかが入用なんです。何とかなりませんかね?」
おじさん「そう言われてもなぁ・・・。こればっかりはどうしようもない」
ノア「王都よりお金出しますから」
おじさん「ん〜・・・」
ノア「国中から集められてるんでしょう?1人分ぐらい減っても大丈夫ですよ」
だから、売ってください!って目で訴える。
腕を組んで渋るおじさんは「んー、んー」唸って何かを考えてるみたい。
おじさん「よし、こうしよう」
ノア「?」
おじさん「魔物を倒してきてくれ」
ノア「はぃ?」
また突然過ぎて理解出来なかった。
詳しく話を聞いてみるとこういうことだった。
王都に行く道が先日の大雨による土砂崩れで塞がれて通れないらしい。だからもう1つの道、森を越えて行く方法しかないんだって。
だけどそこにはどうやら凶暴な魔物が1匹いるらしくて、王都に行こうとした人達は皆その魔物に襲われたらしい。
土砂で塞がれた道は当分回復しない。
でも王都に物資を送らなきゃいけない。でも魔物がいて送れない。
だから、
ノア「その魔物を僕に倒してこいと?」
確認のためにそう言ったら、おじさんは笑顔で親指を立てた。何そのいい笑顔。
ノア「そしたら防具も武器も装飾品も売ってくれる?」
おじさん「ああ、約束しよう!」
ノア「安値で?」
おじさん「うっ・・・(汗」
ノア「こっちは命懸けで魔物退治しに行くんですよ?勿論、安値ですよね?」
おじさん「わ、分かった・・・約束しよう」
ノア「あざーっす」
頭を下げて、さっそく森へ―――行こうとして、頭にディラスさんの顔が過った。
一応、報告した方がいいかな?
黙って行って、ケガをして帰って来たりしたら絶対怒られる・・・と思う。多分だけど。
ノア「(もうすぐ出て行くとはいえ、喧嘩別れ?みたいなのはしたくないし・・・)」
な、の、で・・・
ノア「いらっしゃいませー」
ディラスさんが経営してる酒場に来ました。
僕が入ると、グラスを拭いてたディラスさんが呆れたように言ってくる。
ディラス「ミズチ、それは俺のセリフだ」
ノア「じゃあいらっしゃられました」
ディラス「酒はダメだぞ、未成年。ジュースにしろ」
ウリズン帝国は18歳からお酒が飲めるらしいけど、僕は16だから元の世界でもここでも飲めない。
レモネードにするか?って勧めてくるディラスさんの厚意に首を振って、伝えに来たことを伝える。
ノア「僕、ちょっと東の森に魔物退治に行ってきます」
ディラス「何?(ピクッ」
グラスを拭く手を止めたディラスさんの表情が真剣なものになったのを僕は見逃さなかった。
あ・・・これは報告しても怒られるパターン?
ディラス「誰かに依頼されたのか?」
ノア「はい」
ディラス「魔物ってのはどんな魔物だ?」
ノア「凶暴な魔物だそうです」
ディラス「お前は兄貴を探すんじゃなかったのか?剣術も魔法もただの護身用じゃなかったのか?」
ノア「はい」
ディラス「ならっ・・・何で自分からそんな危ねぇことをしようとする!」
ノア「旅の最中、どんな魔物が襲ってくるか分からないんですから・・・。経験は積んでおいた方がいいでしょう?」
ディラス「っ・・・!」
ノア「死にはしませんよ。回復魔法も使えるし、グミもあるんですから。、ヤバくなったらすぐ逃げます。
だから・・・森の魔物を倒すのを卒業試験にしてください」
お願いします、って言って頭を下げる。
卒業試験っていうのは勿論、「もうすぐ出て行く」っていうことを伝えるためのものだよ。
ディラスさんは頭もいいからそれだけで察してくれたと思う。
大きく息を吐くのが聞こえてきた。
ディラス「頭上げろ」
ノア「、」
ディラス「死ぬつもりはねぇんだな?」
ノア「勿論」
ディラス「ちゃんと帰って来るんだろうな?」
ノア「まだまだ準備が残ってますからね」
ディラス「そうか・・・」
ノア「はい」
ディラス「じゃあ、倒して依頼人に報告が済んだら・・・真っ先にここに来い。祝勝会ぐらい開いてやる」
ノア「!」
ニッ、と笑うディラスさん。
つられて僕も笑う。
ノア「はい!楽しみに・・・腹を空かせて帰って来ます!」
行ってきますって大声で言ったら、力強い声で行って来いって返された。
それにまた笑って僕は店を出る。
・・・うん、なんか元気出た。
ノア「(よーし!頑張るぞ!)」
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