合わせ鏡
□◆誰ガ為ニ
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―――君・・・この村の人間じゃないね?
言われた言葉を理解して、僕が出した答えは・・・
希空「いえ、この村の人間です(キッパリ」
瞬間ピリッとした痛みが左の頬に走る。
頬を伝って顎から地面に落ちた赤い液体を見て理解。
風か何かで頬を斬られたよ☆
鋭い痛みからジクジクした痛みに変わって内心で顔を歪める。
目の前の紫の騎士がニタリと笑って言う。
サレ「次は首が飛ぶよ」
希空「ウソじゃ、ないです」
サレ「君は自殺願望者?」
希空「たった今、この村の人間になりましたから」
そう言ったら、キョトンとするサレ。
え、この人でもこんな顔するんだ・・・。
とか僕が思ってたら急に目の前の紫騎士さんが噴き出して笑った。・・・Why?
サレ「なかなか面白いことを言うね」
希空「ウソは言ってないんですから、怪我をさせた分の慰謝料払ってください。1万ガルドでいいです」
騎士「お前、何を言って・・・!自分が置かれている状況が分かっているのか!」
希空「あらゆる資源や食糧が少ない今、それを採掘、栽培する労働者を無闇に殺したり、腕や足を切り落としたりするほど・・・あなた達騎士さんはバカじゃないでしょう。
まぁ、僕1人の労働力が減ったところであなた達の国、ウリズン帝国は困りはしないでしょうがね」
サレ「それが分かっていて、大胆な発言をするなんて・・・随分肝が据わっているじゃないか。それとも、ただのバカかな?」
希空「それを決めるのは僕ではなくあなたです。
ほら、質問には答えたんです。もう行ってもいいでしょう、放してください」
サレ「もう1つ・・・これが最後の質問だ」
希空「何です」
サレ「君の名前は?」
希空「・・・・・・」
☆今考えた答え・・・☆
@本名を名乗る
A偽名を名乗る
Bはぐらかして煙に巻く
C名前を当てさせる
希空「(とりあえずCはないな・・・)」
出来れば本名も名乗りたくない。
じゃあ、やっぱりAかBかな〜・・・
サレ「正直に答えてくれたら慰謝料を2万ガルドにしてあげるよ」
希空「ノアですっ!」
Give me money!
サレ「ノアちゃんか・・・。覚えておくよ」
ノア「2万ガルド、プリーズ」
くれなきゃ喉を掻っ切るぞ☆って内心で続けたのは秘密。
そしたらサレははいはい、って言って紙幣を2枚僕のスカートのポケットに入れてくれた。
ノアは2万ガルドを手に入れた!
サレ「君は不思議な子だね。この村の住人になって、自ら僕等の国の奴隷になるなんて」
ノア「衣食住を提供してもらえるところなら僕は何処にだって行きますよ」
サレ「君・・・もしかして戦争孤児かい?」
ノア「さぁ、どうなんでしょうね。もう10万ガルドくれたら教えてあげてもいいですよ?」
サレ「生憎持ち合わせがなくてね」
あれば10万本当にくれるの?
この人、金銭感覚マヒしてるんじゃ・・・
サレ「だから、」
ノア「?」
サレ「続きは国でゆっくり聞かせてもらうよ。
・・・と言っても、僕は次の仕事に向かわなきゃいけないから、次に会えるのは1ヶ月後だけど」
ノア「分かりました。
じゃあ、仕事先であなたが不慮の事故、もしくは誰かに殺害、または重傷を負わせられることを毎日教会でお祈りしておきますね」
ニッコリ笑顔でそう言い捨てて、僕は荷馬車へGet away!
・・・で、
ノア「(今に至る、と・・・)」
長い回想を終えて息を吐く。
荷馬車が動き出して、村を出てからどれくらい経っただろう・・・?
もう6時間は経つんじゃないかな?
この荷馬車を・・・僕や村人の人達という奴隷を運ぶのを任せられてる騎士の人達は何人なんだろ?
サレがいないことは確か。多分、その後ろについてた2人の騎士さんも。
ノア「(確か・・・村についたのが10時半ぐらいだっただろうから、今は5時ぐらい?)」
あの村からウリズン帝国までどれくらいかかるんだろう・・・。
分からないことは聞いてみるべし。
外にいる騎士さん達に聞こえない声で傍にいる村の人に尋ねる。
ノア「村長さんはどなたですか?」
急に話しかけられたからか、僕が話しかけた人は目を丸くする。
でも、すぐに言葉の意味を理解したのか視線で村長さんを教えてくれた。
それはぐずってる子供達を、怯えてる子供達を励まし、慰めてる初老の男の人。
立ち上がらずに、膝をついた状態で僕はその人の許へ行く。
ノア「村長さん、」
村長「!君は・・・」
ノア「ノアです」
村長「そうか。・・・すまない、君まで巻き込んでしまって」
ノア「それは別にいいです。おかげで分かったこともありますし」
村長「?」
ノア「お尋ねしたいのですが、あの村からウリズン帝国まで徒歩でどれくらいの時間がかかりますか?」
村長「最低でも丸1日はかかるだろう」
丸1日・・・。
じゃあどこかで絶対違う街か村に寄るね。
村人全員分の食料を騎士さん達が持ってる風ではなかったし、村の人達が飢え死にしても騎士さん達は困るだろうから・・・
ノア「食料調達に寄るとしたらどこですか?」
村長さんは何でそんなことを聞いてくるんだ、って感じの顔をしたけど丁寧に答えてくれた。
村長「おそらく水の街メアーゼだな。そこを経由し、チェサムズ橋を通るルートが1番の近道だ」
ノア「その街からその橋までは徒歩でどのくらいでいけますか?その橋はどんな橋ですか?」
村長「橋までは30分弱・・・だろう。全長2kmある大きな跳ね橋だ」
ノア「、跳ね橋?」
村長「洪水の際、橋を上げられるように作られていると聞いた」
ノア「それはメアーゼ方面に上げ下げをするスイッチのようなものが?」
村長「ああ。メアーゼの人間が橋のすぐ側にある管理室に待機していて、洪水の時に橋を上げるから・・・」
ノア「なるほど・・・。
因みに、村から今6時間ぐらい進んだところだと思うんですけど、その水の街までは後どれくらいかかるか分かります?」
村長「あの街までは村から9時間ぐらいかかるだろう。だから、」
ノア「後3時間ぐらい、ですか。分かりました」
村長「?君はどうしてそんなことを・・・?」
ノア「そんなの必要なことだからに決まっているでしょう」
村長「必要・・・?」
手の中に隠してた折り畳みナイフで自分の両腕を縛る縄を切って、(ちょっと身まで切っちゃって軽く痛かった)
僕は驚いた顔をする村長さんにニッと笑顔を浮かべる。
ノア「―――皆で逃げる為に、ね・・・」
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