DEATH GAME
□束の間の休息
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未来「次は三次試験・・・か」
月明かりが照らす通路を歩きながら、俺はポツリと呟いた。
あの試験では使うことに・・・いや、また代わってもらうことになるかもしれねぇな。
頭の中なのか、心の中なのか・・・ざわざわと騒ぎ、息を潜めてる〈奴等〉に声に出さずにそう告げる。
未来「(出来れば、あいつ等の前で見せたくはねぇけど・・・)」
そのまま歩き続けてたら、急に体が重くなってその場に倒れそうになった。
足が動かねぇ・・・。
両足とも腱と筋が切れてやがる・・・
未来「一次試験で体を酷使させ過ぎたか・・・」
壁に左手をついて体を支えながら、右手で片方ずつ足に触れる。
そうすれば一時的ながらも腱と筋が元に戻る。
少し休憩すれば完全に治るだろう。
・・・俺の〈能力〉は規格外だから。
やろうと思えば何だって出来るんだ。それなりのリスクは伴うけどな・・・
未来「(さて、どこで休もうかな)」
どっかに座るとこねぇかなぁって探し出す俺。
空き部屋とかあったらそこに忍び込もう、とかマジで考え出した時、通路全体がひんやりと涼しくなった。
未来「・・・そこにいるのは誰だ」
曲がり角のところに気配を感じてそう言えば、そこにいた奴がス・・・と出て来る。
そいつが姿を現すのと同時に、何故か窓や通路がパキパキッと音を立てた。
ラップ音・・・いや、違う。これは、
未来「(凍ってる・・・?)」
ちょっと涼しくなったって思ってたのが、急に冷凍庫の中にいるみてーに凍える寒さになる。
吐く息も白くなって、温かさを感じねぇ。
間違いなくこれは〈参加者〉の〈能力〉・・・
俺は目の前に姿を現した奴に視線を向ける。
11番のプレートを胸につけた、白銀の短髪に鋭いスカイブルーの瞳・・・
首に火傷の痕がある背の高い、俺より2、3歳上の男―――
未来「こんな狭いとこで殺り合おうってか?」
少年「敵意は今のところない」
未来「じゃぁ何で〈能力〉全開なんだよ。寒ぃじゃねぇか」
少年「交換条件だ」
未来「?」
少年「俺は自分の〈能力〉を教えた。次は、」
未来「俺の〈能力〉を教えろって?そりゃ随分勝手な交換条件だな。同盟を組めってことか?」
少年「違う。俺の質問に答えろということだ。
―――〈五獣〉を知る者よ」
未来「、」
まさかここでその〈チーム〉のことが出て来るとは思ってなくて、俺は軽く目を見開く。
カマをかけられてるんじゃねぇ。
こいつは、確信を持って言ってきてやがる。
未来「お前は?」
少年「・・・名は捨てた。今はケセドと名乗ってる」
未来「ケセド・・・慈悲、ねぇ」
ケセド「答えろ。〈五獣〉の本名は何だ」
未来「・・・そんなの知るわけねぇだろ。
青龍、朱雀、麒麟、白虎、玄武・・・そぅ呼ばれてることしか俺は知らねぇよ」
ため息混じりにそう答えれば、左半身の表面を凍らされる。
わぁ、スッゲー〈能力〉・・・
ケセド「ウソをつくな。お前は知ってるはずだ」
未来「何を根拠に」
ケセド「それはお前が〈五獣〉によって壊滅させられた最初の〈チーム〉・・・
―――ナンバーズの生き残りだからだ」
未来「!」
「お願いね、未来・・・。僕、未来のこと―――大好き」
「すいません・・・何度謝っても許されることじゃないというのは分かっています。
ですがあなたは、あなただけはっ・・・!生きてください!生き続けてください」
「ねぇ、未来ちゃん・・・―――信じていいんだよね?」
未来「っ・・・誰に聞いた」
ケセド「それは言えない。お前が生き残りであることも他言するつもりはない」
未来「・・・・・」
ケセド「言え、奴等の本名は何だ」
未来「・・・・・その首の火傷・・・〈朱雀〉にやられたのか」
ケセド「・・・〈チームメイト〉と一緒にな」
未来「本名を知ってどうする?現実世界で殺しにいくか?」
ケセド「お前には関係ない」
未来「―――勝てねぇぞ。お前じゃ〈五獣〉にゃ勝てねぇ」
ケセド「〈玄武〉と〈白虎〉ぐらいなら殺れる」
未来「無理だな。この程度じゃ・・・この程度の〈能力〉じゃ」
凍らされた左半身の氷を溶かして言えば、ケセドって奴は目を見開いて驚く。
気にしねぇで俺は淡々と言葉を続けるのみ。
未来「無駄死にをするよーなもんだ。そして俺はお前を無駄死にさせるわけにゃいかねぇ」
ケセド「だから本名は答えないって言うのか?」
未来「あぁ、だからそれと釣り合いがとれるとっておきの情報をやろう」
ケセド「?」
未来「〈五獣〉の〈能力〉は風・火・雷・土・水だけじゃねぇ」
ケセド「!!」
未来「〈五獣〉と名付けられる程だぞ?そんな単純でちゃちな〈能力〉なわけねぇだろ。
お前が氷単体の〈能力〉じゃねぇようにな・・・」
ケセド「・・・・・」
未来「分かったか?分かったら〈五獣〉に挑もうなんて考えは捨てるんだな。
―――あいつ等は俺が倒すんだからよ」
ケセド「お前・・・!」
未来「そこは誰にも譲らねぇよ。それだけは誰にも譲ってやらねぇ。
それが俺がこのふざけた〈ゲーム〉に今もまだ〈参加〉してる大きな理由の1つだからな」
ケセド「・・・だからって、こっちも引き下がるわけにはいかない。
今は殺り合うつもりはないが、お前とはいずれこの〈ハンター試験〉とやらでぶつかるだろう」
未来「それはお互い何もなく進んでいけたら、な」
ケセド「その時は容赦しない。必ず本名を吐かせてやる」
未来「期待しねぇで待ってるよ」
不敵に笑ってそう言えば、ケセドって奴は背中を向けて去って行く。
凍ってた窓や通路が元に戻って、平温になる。
メンドーなことになったな・・・。
俺達やあいつの他にもまだ10人の〈参加者〉がいるし、次の三次試験で当たる可能性も高い。
いちいち相手すんのがめんどくせぇよ・・・
未来「――で、いつになったらお前は出て来るんだ?」
背後に向けて声をかければ、個室から出て来る毛布を持った1人の人物・・・。
〈参加者〉ではねぇ。こいつは・・・
クラピカ「すまない。立ち聞きする気はなかったんだが・・・」
未来「出るに出られなかったんだろ。別にいいよ」
クラピカ「・・・生き残り、というのはどういうことなんだ」
未来「言葉の通りだろ」
自分のクルタ族と重ねちまったか?
俺の〈生き残り〉ってのはこいつより重いことじゃねぇんだけどな・・・
クラピカ「お前も仇討ちをする為にハンターを志望しているのか?」
未来「〈も〉っていうのは?」
知ってるけど、敢えて知らねぇフリして会話を続ける。
クラピカの口から出て来たのは思った通り、クルタ族のことだった。
未来「悪ぃけど、俺はお前みてーに大それた話じゃねぇよ。
俺達がやられたのも、油断が原因。自業自得ってやつだ」
クラピカ「だが、大切な者達だったんだろう」
未来「・・・大切、か。どうだろうな」
クラピカ「何・・・?」
未来「そんな陳腐な言葉で語れるような奴等じゃなかった・・・ってのは確かだ」
クラピカ「!そうか・・・」
未来「気にしてくれてサンキューな。
けど、1つ忠告するなら・・・自分のこと、特にそんな世界7大美色なんてことはそぅ簡単に人に言わねぇ方がいい。
それを聞いて、目の色変える奴だって中にはいるんだからな」
クラピカ「そうだな・・・。しかし、私は私が信用出来ると思った者にしかこの話をしていない」
俺が信用出来る・・・?
それは大変な間違いだぜ、クラピカさんよぉ。
未来「それでも、注意はしといた方がいい。
信用してた相手が裏切る・・・なんてのはよくあるパターンだ。俺達がそれでやられたように・・・・な」
クラピカ「!!」
未来「じゃぁな、お互いゆっくり休みましょーや」
ヒラヒラと手を振って、俺は休める場所探しを続行する。
出来るだけ1人になれるところがいいな・・・。
こー見えて、ケセドって奴やクラピカに若干過去に触れられて、心穏やかじゃねぇんだぜ?
未来「体だけでなく、心の休息も必要か・・・」
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