秘密を守れますか?U
□遠過ぎる背
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― Side Green ―
希「痛っ・・・」
家に帰って来た俺は上着を脱いで、部屋のベッドに仰向けに倒れ込んだ。
予選で珪司に受けた傷が凄く痛い・・・。
傷口に巻かれてる包帯を見たら、思った通り血が滲んでた。
希「まだまだ・・・弱いな・・・・俺は」
〈能力〉を使ってない相手にあんなに苦戦するなんて・・・。
未来や瑠璃は普通に勝ってたのに・・・俺はこの様。
息を吐いて、右腕を額に当てる。
結局アイツは・・・未来は、何が言いたかったんだ・・・・?
未来「・・・憶えてるか?
このブレスレット(神器)とそのペンダントは最初から俺と紗那用だって決まってたんだぜ」
希「(最初から決まってたから・・・何なんだ?)」
天井を見つめながら・・・ぼんやりそんなことを考える。
あの言葉の何がヒントなんだ。
未来「やっぱお前・・・頭良いようで悪ぃな」
希「・・・、」
俺は、また・・・去年みたいに―――分かり切ってることを見落としてるのか?
未来「断言出来るよ。今のお前等じゃその〈真実〉に耐えられねぇって」
希「真実・・・」
・・・ん?
そういえば・・・誰かも真実がどうこうって言ってた気がするな。
希「(誰だった・・・?いつ聞いた・・・・?)」
脳をフル回転させて必死に記憶を辿ってみる。
あれは・・・明け方?いや・・・・夜だった。夜・・・森?林の中?で誰かが・・・・。
男・・・ではなかった気がする。
ハッキリ聞いたわけじゃない・・・凄く小さな声だった。聞き取りにくくて、聞き間違いだと思ってたんだ。
だって、その時は・・・アイツが偽物だって、気付いてなかったから。
紗那「真実を知らないから・・・そんなことが言えるんだろうね」
波の国の任務の時。
1人で修業をしてた俺の許に紗那に化けた〈神の使い〉の誰かが来た。
その時に、確かそいつがそう言ってた。
あの時の、紗那の偽物の言葉は・・・まるで、神を軽蔑してるような感じだった。
真実を知らないから、お前は神の為になんてことが言えるんだ・・・ってことなんだろうけど、
希「(真実って何なんだ・・・?)」
目を閉じて、俺は一旦整理してみる。
偽物のあの口ぶりから、神は俺達にナニカを隠してる。
未来はREBORN!の世界でそれに気付いた。だけどその時、あいつは俺達が・・・俺が壊れるからって何も教えてくれなかった。
だけどさっき、あいつは俺に自分で答えに辿り着けって言った。もしかするとそれは真実とは別の話なのかもしれないけど・・・。
俺は目を開ける。
額に当ててた右腕を挙げて、その手の人差し指にはめてる〈神器〉の指輪を見る。
紗那と未来の〈神器〉は、最初からあいつ等用だって決まってた。
希「(そこに何か理由があるのか・・・?)」
闇を退ける十字架と変幻自在の刀・・・。
それがあいつ等用だっていうなら、それはあの2人のために用意された・・・いや、2人のために作られたものだ。最初から・・・・・
希「・・・最初から?」
ザラリとしたナニカが、俺の頭に引っ掛かった。
最初って・・・どこだ?
希「あ・・・、」
神「お前達を選んだのに深い理由はない。凄く急だったからな。条件に合ったのが丁度お前達6人だったってだけだ」
海斗「条件?」
神「成長途中の10代、普通の一般人。その2つさえ満たしていれば誰でもよかった」
希「あぁっ・・・!」
ソレに気付いて。
未来が俺に気付かせようとしてたことに気付いて、俺は起き上がった。
傷口が痛んだけど・・・今は気にしていられなかった。
希「―――矛盾・・・してる・・・・」
俺達を〈神の使い〉に選んだのに深い理由がない、って言うなら。
凄く急だった、って言うなら。
誰でもよかった、って言うなら。
最初から、紗那と未来用の〈神器〉なんて用意出来ない。
だから、未来が、あの時俺に言いたかったのは―――・・・
希「俺達は・・・最初から〈神の使い〉に選ばれてた?」
最初から、この世界救済の問題に、〈参加者〉とのゴタゴタに巻き込まれることが決まってた・・・?
それは・・・どういうことなんだ?
どうして神は深い理由はない、なんてウソをつく必要があったんだ?
何なんだ・・・?
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