秘密を守れますか?U

□遠過ぎる背
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未来「ハァ〜ア・・・」



木の根元にしゃがみ込んだ彼女は空を見上げ、声を出しながら大きく息を吐く。

さわさわと木々を揺らす風を感じながら、ぼんやりと空や雲を眺める。


そんな彼女に声をかけたのは、近くにいた1人の少年だった。



洋一「なぁ、未来ー。いつになったら始めるんだー?」



第三の試験、その予選を終えた彼等2人は修業のために演習場に来ている。

洋一が傷の手当を受けてここへやって来た時には、未来は既に今の状態になっていた。


休憩でもしているのか、と5分程待ってみたが一向に立ち上がる気配がない。

しびれを切らした洋一がそう声をかけると、彼女は相変わらず空を見たまま口を開いた。



未来「アンニュイに何かを考え込みてぇ年頃なのさ」


洋一「、・・・また何か企んでんのか?」



やや不安げに彼がそう尋ねると未来はくつくつと喉を鳴らして笑った。

悪戯っ子のような笑顔。だけど彼女が考えていることはいつだって悪戯、などという可愛らしいものではない。



未来「皆、俺に対してだけ警戒心が強くなったな」


洋一「そりゃ前科何犯もあるからな。悪巧みとか控えねぇとまた海斗に監禁されるぞ(笑」


未来「現実になりそうなジョーダンはよしなんせ。

今、考え込んでたのはアレだぞ。お前の修業プランを構築してたんだ」


洋一「え、俺の修業プラン?一緒に修業するんじゃねーの?」


未来「俺の修業をやったって、お前の身にはならねぇ。逆に俺がお前の修業をやっても、俺の身にはならねぇ。戦闘タイプっつーかスタイルが違うからな」


洋一「う・・・う〜ん?」



分かったようでよく分からなかったのか彼は眉を寄せて首をひねる。

これはもっと分かり易く噛み砕いて教えた方がいいな、と未来は小さく息を吐く。


さて、どこから説明したものか・・・と考え、彼女は話し出す。




未来「まずお前は回避力だけはずば抜けてるだろ?」




洋一「そこまで強調しなくてもいいと思うけど・・・うん、ベルとの修業で回避力はスゲェ伸びたと思う」


未来「基本的な回避力は多分、俺よりお前の方が優れてるよ」


洋一「!」



初めて未来に褒められた!と彼は目を輝かせる。

その時、未来には彼が耳をピーンと立てて尻尾を振る犬に見えたとか、そうでないとか(笑


そんな彼を見て彼女はやや心苦しそうに「けど、」と続けた。



未来「お前は攻撃を読んで回避してるわけじゃねぇ。

相手が攻撃しようとする初期動作を見てから回避してるからタイムラグが生じて予選の試合の時みてぇに攻撃を受けちまうんだ。ここまでは分かるか?」


洋一「うん、凄く・・・(泣」


未来「それは何でだ?お前が攻撃を読めねぇ理由は?」


洋一「戦闘中冷静になれてねぇから・・・?」


未来「それもあるな。他には?」


洋一「え・・・う〜んと・・・・攻撃の読み方?がいまいちよく分かんねぇから、かな・・・?」


未来「それはつまりどーいうことだ?」


洋一「つまり?え?え?つまり・・・え〜っと・・・・つまり、つまり・・・?うぅ〜・・・・」


未来「答えは1つ。実戦経験が無さ過ぎて予測が立てられねぇから」


洋一「!!」


未来「なら、お前が修業で伸ばすべきところは何だ?鍛えなきゃいけねぇところは何だ?そのためにどんな修業をすればいい?」


洋一「ひたすら・・・実戦に近い組手?をして、経験を積んで予測出来るように体に覚えさせる?」


未来「体の前にまずは頭だ。予測のショートカットなんて今のお前にゃ無謀過ぎる」


洋一「う゛っ・・・」


未来「やるべきことは分かったな?最初の話に戻るぞ。お前のその修業をやって、俺の身になると思うか?」


洋一「・・・・・・」



問われた彼はじっと未来を見る。


自分より遥かに実戦慣れし、経験も豊富であろう彼女。

相手の攻撃の予測が出来、ショートカットという反射だけで避けれてしまうであろう彼女。


その彼女が自分と同じ修業をする。それは反復練習、という意味ではいいことなのかもしれない。しかし、



洋一「(俺と同じ修業をやってたら、未来は自分の伸ばしてぇところを伸ばせねぇ・・・?)」



だとしたら、



洋一「身には・・・ならねぇと思う」


未来「だろ?だから俺はお前に合った修業プランを構築してやろうとしてんだよ」


洋一「あざーっす!」


未来「その上で聞きてぇんだけど・・・お前、こっちの世界に来てからどんな修業してきた?あの試合を見た感じ、クソ神に貰った術はまだ体得してなさそーだけど・・・・」


洋一「ア、ハハ・・・うん、まだ神様に貰った術使えねぇんだ。

チャクラは足りてると思うんだけど・・・・何か上手くいかなくて」


未来「その術の修業しかやってこなかったのか?」


洋一「いや、ナルト達と一緒に木登りして、チャクラコントロールの修業とか・・・

その術の修業でチャクラ全部使い切ってから走って、スタミナアップの修業とか・・・だな」


未来「・・・、」



バカを見るような目で、可哀想な者を見たというような顔で彼女は口を手で覆う。



洋一「え?何か俺、間違ってる?」


未来「チャクラコントロールの修業はまだしも、スタミナアップの修業は古典的っつーか・・・原始的修業法過ぎて言葉にならねぇだけだ」


洋一「Σ酷ぇ!」


未来「(そりゃそれだけしかやってなかったらこぅなるわな・・・)」


未来「俺・・・お前にREBORN!の世界で言ったはずだけどな・・・・」


洋一「へ?」


未来「〈ただ漠然としたことはすんなよ〉って・・・言ったよな?言ってたはずだよな?」


洋一「あ・・・」



確かに、と彼はそこで思い出した。

ただ、自分(未来)に追いつくだけの目標は曖昧過ぎる。目標設定はしっかりやれ・・・ということを遠回しに彼女に言われたのを。


目標設定、伸ばすべきところをちゃんと見れていなかった。ちゃんと考えられていなかった。

情けねぇ、と彼は片手で自分の顔を覆う。



洋一「うぅ〜〜〜・・・ごめん」


未来「別に俺はそれで困らねぇから謝る必要はねぇよ。それで困んのはお前自身だからな」


洋一「(て、手厳しい・・・)」



それに、と未来は続けた。



未来「お前にはもぅ見えてるだろ?明確な目標ってやつがさ」


洋一「!ああ!」


未来「よーし。そいじゃ、そろそろ修業始めっか。

実戦形式の俺との組手だ。俺は刀や忍具っていった武器や忍術を使わねぇ。ホントの体術だけでいく。全部避けて、お前も攻撃してこい」


洋一「え・・・でも、いいのか?お前はお前で伸ばそうと思ってるところがあるんじゃ、」


未来「あぁ。あり過ぎて困るぐらいだ」


洋一「えぇ!?未来でそれだったら俺はどーなんだよ。困るレベルじゃねぇじゃん。あり過ぎて倒れるぐらいじゃん」


未来「だから言ってんだろ。お前と俺とは戦闘スタイルが違うって。

お前が1番伸ばすべきは、完璧にすべきところは回避力だ。そこを極めりゃ他も自然と伸びていくさ。頭もスタミナもスピードもな」


洋一「そー言うお前は今何を1番伸ばそうとしてるんだ?」









未来「全部さ」









洋一「!!」


未来「パワーもスピードも回避力も、瞬発力も、持久力(スタミナ)も、反射速度も、

思考や解析、処理速度も、チャクラコントロールも、印を結ぶスピードも、忍術も体術も武器術も幻術も忍耐力も・・・全部伸ばそうと思って・・・・いや、伸ばそうとしてる」










驚き、言葉をなくす洋一に未来はクスリ、と笑った。











未来「俺は―――欲張りな奴だからな」










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