秘密を守れますか?U

□◇ドン!
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何もない、穏やかな時間。


空には白い雲、太陽は温かく私達を照らす。



カコン、カンカン、ガチャガチャ、ガンガン・・・


色んな音が鳴り響く橋の建設場で私とサクラちゃんは何度目か分からない欠伸をする。

橋を作ってる人達には・・・本当に申し訳ないけど(苦笑


隣で爆睡してる希君よりはマシだと思うから・・・どうか怒らないでください。



「暇そうだな」



サクラ「あ、」


紗那「タズナさん」


タズナ「あの金髪小僧とすかした小僧、元気な小僧はどうした?」


サクラ・紗那「「修業中/です」」


タズナ「お前達はいいのか?」


紗那「えっと・・・」


サクラ「私達は優秀だから。カカシ先生がおじさんの護衛しろって!」


タズナ「ホントか・・・?」


サクラ「・・・・・・」


紗那「アハハ・・・」



でも、一応修業として課されたことは私達出来てるよね・・・?


なんて心の中で言い訳をしながら、私はタズナさんの作業を見守る。

そしたら同僚?の人がタズナさんの許へやって来たの。



「ちょっといいか・・・タズナ」


タズナ「ん・・・?どうした、ギイチ?」


ギイチ「色々考えてみたんだが・・・橋作り・・・・俺、降ろさせてもらっていいか・・・」



紗那「!」



タズナ「な・・・何でじゃ!?そんな急に・・・・お前まで!!」


ギイチ「タズナ!あんたとは昔ながらの縁だ。協力はしたいが、無茶をすると俺達までガトーに目をつけられちまう!

それにお前が殺されちまったら元も子もねェ!ここらでやめにしねーか・・・橋作りも・・・・」



紗那「、」


サクラ「・・・・・」



橋作りを止めればタズナさんもガトーっていう人に命を狙われたりしない。

タズナさんに協力して橋作りをしてる人達も安全。


ギイチさんの言うことは正しい。


私だったらそっちを選ぶ。

だけど、



タズナ「そーはいかねーよ」



タズナさんは違うみたい。



タズナ「この橋はわし等の橋じゃ。

資源の少ないこの超貧しい波の国に物流と交通をもたらしてくれると信じて、町の皆で造ってきた橋じゃ」


ギイチ「けど、命までとられたら・・・!」


タズナ「もう昼じゃな・・・。今日はこれまでにしよう。

ギイチ・・・次からはもう来なくていい」


ギイチ「っ、」



紗那「タズナさん・・・」


「良くも・・・悪くも・・・・率先して、何かを・・・成し、遂げようと、した奴にしか・・・・人はついて、いかない」


サクラ・紗那「「!」」


紗那「希君、」


サクラ「起きてたの?」


希「ん、つい・・・さっき」


紗那「何かを成し遂げようと・・・かぁ」


希「まぁ・・・もっとも、

国のため、だとか・・・里のために、っていう・・・・意志をもった人間は、大抵・・・悲惨な、末路を迎えることが、多い・・・・けどな」


サクラ「何であんたはそこで落とすのよ」


紗那「怖いこと言わないで〜」


希「だから、」


サクラ・紗那「「?」」



私達の言葉は気にしないで・・・ううん、きっと耳に入ってないんだろうね。


作業を進めるタズナさんを真っ直ぐ見ながら、希君は真剣な顔で続けるの。



希「だから・・・俺達が、いるんだ。悲惨な、末路を・・・・迎えさせるのを、阻止、するために・・・俺達忍が」


サクラ・紗那「「!!」」



だろ?って希君は私達の方を見て、微かに・・・ほんの微かに口角をあげる。


あぁ・・・ダメだ。



紗那「っ・・・////」



私ばっかり・・・好きになってく。

今は任務中。そんなこと考えてる場合じゃないのに・・・私ばっかりが、









―――あなたに溺れていく。









――――――
――――――――――
――――――――――――――










「待てーーー!ドロボー!!」



なんて大声で叫ぶ人。


仕事何でもやります、なんて書いたベニヤ板みたいなものを首から下げて歩いてる人。


道の端で座り込んでる人。


俯いて下ばかりを見て歩く笠を被った人達。



そんな人達が行き交う町の中を私達3人はタズナさんの後に続いて歩く。



タズナ「帰りに昼飯の材料を頼まれとったからな・・・」


サクラ「(何なのこの町・・・)」


紗那「(暗い・・・。皆、生気を失ってるみたい・・・・)」


希「・・・・・」


タズナ「おお、ここじゃ」



そう言ってタズナさんは八百屋、って看板がある店に入って行く。

八百屋だから、たくさんの野菜や果物があると思ってたんだけど・・・



サクラ「(ほとんど何もないじゃない・・・)」


紗那「(店に出せるような作物じゃない・・・)」



そこにあったのは瑞々しいからかけ離れたしなびた野菜。

これがこの町の・・・この国の実態。


苦しいのでも悲しいのでもないけど・・・そんな感じの暗い気持ちに嫌でも私もなっちゃう。


そんな時だった。



サクラ「キャーーー!!チカーン!!」



サクラちゃんが近くに来てたらしいスリを痴漢と間違えて、華麗な回し蹴りをお見舞いしたのは。



タズナ「いやー、さっきは超びっくりしたぞい」


希「1番・・・びっくり、したのは、あの・・・・スリ男の方、だろうな・・・」


紗那「痛そうだったね・・・」


サクラ「一体、この町どーなってんの・・・?」



買い物を済ませて、歩きながら私達はそんな会話をする。

そしたら今度は私とサクラちゃんの服を誰かが後ろから引っ張ってきた。



紗那「え・・・?」


サクラ「また・・・?」



振り返ってみたら、そこにいたのは小さい男の子?ううん、女の子?

どっちか分からないけど、とりあえず小さな子が私達に向かって両手を出して来た。


これは・・・物乞い?



紗那「(えっと・・・お金をあげればいいのかな?)」



どうすればいいんだろうって戸惑ってたら、サクラちゃんがその子の手いっぱいにキャンディを渡すの。

目を輝かせる小さい子。


だから私もその手にチョコを乗せてあげる。


嬉しそうな顔で頭を下げて、その子は走って行っちゃった。



タズナ「ガトーが来てからこのざまじゃ」


紗那「あんな子まで・・・」


タズナ「ここでは大人はみんな腑抜けになっちまった・・・」


サクラ「・・・・・・」


タズナ「だから今・・・あの橋が必要なんじゃ・・・・。勇気の象徴・・・。

無抵抗を決め込んだ国の人々に、もう一度「逃げない」精神(こころ)を取り戻させるために」


希「、」


タズナ「あの橋さえ・・・あの橋さえ出来れば・・・・。町はまた、あの頃に戻れる・・・。皆戻ってくれる・・・・」



悲痛さを含んだ決意の言葉に、私は何も言えなくなる。

本当に命懸け。命懸けでタズナさんは橋の建設に取り組んでる。


それは自分の利益のためじゃなくて、この国にいる皆のために・・・。


タズナさんも・・・誰かのために自分の命を懸けられる強い人なんだ。



・・・私は、どうだろう。



紗那「(懸けられるかな・・・命)」







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