番外編

□秘密の日常
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――AM.8:20、

〈男子3人が通う中学校〉


海斗「あ、希、おはよう」



2年3組の教室で、やって来た希に挨拶をする。

彼は海斗の席の後ろ、自分の机の横に鞄をかけ・・・



希「おは、よう・・・そして・・・・おやす―――」


「寝るな、貴様!」



  バシンッ!



希「痛い・・・」



マイ枕を机の上に置いて寝ようとした時、そんな鋭い言葉が飛んできた。

それと同時に、丸められたノートが希にクリーンヒット。


彼にそんな攻撃をしたのは1人の少女。


前髪を留めておでこを出したロングストレートヘアーの巨乳のその少女、

いつも柑橘系の匂いがする――園原美燗(そのはら みかん)は、丸めたノートを片手に腕を組み、希の横に仁王立ちした。



美燗「如月希!貴様は今日、日直だろう!」


希「そう・・・だっけ?」


海斗「そうだよ」


希「ん・・・じゃあ、園原・・・・手、出して、くれ・・・」


美燗「?何だ?」



訝しげな顔をしながら、彼女は律儀に丸めたノートを持っていない左手を彼の前に出す。

差し出されたその手に希は自分の右手をちょん、と重ね・・・



希「バトン・・・タッチ」


美燗「ふざけるな!代行など認められん!」



「美燗、朝からそんなに騒がないの」


「如月君も美燗ちゃんだから頼るんだよ、きっと」



と言って近付いて来るのは2人の少女。


艶のある黒髪のショートに、メガネをかけた知的そうな背の高い少女、純玲(すみれ)は美燗をやんわり制し、

黒髪のセミロング(お姫様結)の少女、舞(まい)はちょっとしたフォローを入れる。



希「うん、そー・・・(棒読み」


純玲「少しはまともになったと思ったけど・・・相変わらずね、あなたは」


希「人間・・・そう、簡単に・・・・変わる、ものじゃ・・・ない」


美燗「その腐りきった根性、私が叩き直してやる!」


舞「ま、まーまー、美燗ちゃん。教室で暴れちゃダメだよ」


純玲「簡単に変わった人間なら、そこに1人いるじゃない」



希に喝を入れようとする美燗と、そんな彼女を止める舞のやりとりを華麗にスルーして彼女は言う。

その視線は希の前の席に座っている少年へ。



海斗「何が言いたいんです?」


純玲「去年の今頃までは人として最低レベルだったのに・・・あなた、急に激変したでしょう?」


海斗「それを面と向かって言うあなたも人として最低ですよ」


舞「わ、私は前の海斗君も今の海斗君も好きだよ」



希は〈如月君〉だったのに、海斗は〈海斗君〉呼び。

それは彼女が彼と幼馴染みだから。

無論、美燗や純玲とは違い、海斗の家庭の事情を知っている。



純玲「私が知りたいのは、何が人として最低レベルだった篠原を変えたのか、よ」


舞「(それは・・・私も知りたいかも)」


海斗「さっきから失礼な人ですね。別にどうだっていいでしょう」


純玲「篠原はこう言ってるけど、実際のところどうなの、如月?」


海斗「余計なこと言わなくていいからね、希。じゃなきゃその枕没収する」


希「御意」


純玲「チッ、」


美燗「・・・あ、そうそう。忘れていた。舞、篠原、今日の生徒会の集まりのことだけど」


海斗・舞「「?」」



生徒会、3人はその役員だ。

因みに海斗は議長、美燗は会計、舞は書記。



美燗「会長と副会長は修学旅行に向けての取り組みで来られないらしい。

そして私も△△中学校に合同練習に行くから出席出来ない」


舞「えぇ〜!じゃあ私と海斗君だけなの?」


美燗「そういうことだ」


海斗「2人しか集まれないのなら、今日じゃなくて明日に変更すればいいじゃないですか」


美燗「それは不可能だ」


舞「どうして?」


美燗「△△中学校の生徒会役員数人が来るらしい」


海斗「何でですか?」
舞「何で?」


美燗「そこまでは知らない。とりあえず、2人で頑張って」


海斗「園原さんが今日部活を休む、というのは出来ないんですか?」


美燗「出来ん。というかしたくない。合同練習は私が頼み込んだものだからな」


純玲「どうしてまた△△中なの?強い学校なら他にも、」


美燗「あそこには奴がいる。勝ち逃げをした挙句、私にふざけたあだ名をつけたアイツが・・・っ!」



ゴォォ・・・と熱い炎を後ろに燃え滾らせ、彼女は丸めたノートを怒りで握り潰した。


「今日こそ奴を・・・」等とブツブツ呟く彼女を海斗や希、純玲は引き気味に見て、舞は苦笑する。



希「燃え、てる・・・」


純玲「何かよく分からないけど頑張って、美燗」









――AM.8:25、

〈とある住宅街〉


瑠璃「うおおおおおおおお!!負けるな、うちーーー!!」



などといった咆哮を上げながら、彼女は学校に向かって全力疾走していた。

キッチンテーブルの上に置かれていたザ・朝飯を完食してからの疾走に胃が悲鳴を上げる。



瑠璃「うぇっ・・・吐きそう」


瑠璃「(でも、ここで走るの止めたら遅刻しちゃうし・・・でも、ここで吐くわけにもいかないし、)」



という葛藤を心の中で彼女がしていれば、後ろから・・・



「何やってんだー、瑠璃ー。おーくれるぞー」



そんな間延びした呑気な声が聞こえたかと思えば、瑠璃の横を自転車がサーッと通り過ぎて行った。

その自転車に乗っている少年が声の主、幼馴染みの和則(かずのり)、通称カズ。



瑠璃「待て、こら!乗せろ!!」


和則「アッハッハ。これがチャリ通(自転車通学)の特権だ」


瑠璃「乗せろォ!じゃなきゃお前の好きな人を校内放送で暴露するよ!

朱里(じゅり)に頼めば1発なんだからね!」



と、小さくなっていく背に叫べば・・・




  ズザザザザッ!




和則「どうぞ、お姫様」



勢いよく自転車をUターンさせて戻って来た。



瑠璃「うむ。分かればよい(笑」



彼女は人の弱味(秘密)を握り、人を動かすタチの悪い者だったりする(笑







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