番外編

□秘密の日常
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――AM.7:50、

〈東雲家〉


瑠璃「うぅ〜〜〜・・・重い・・・・」



ベッドで眠っている彼女はうなされていた。

腹の辺りに妙な圧迫感がある。


何かが自分の上に乗っている感覚。

体が思うように動かない。


まさか、これが世に聞く金縛りではないか?


と浅い夢の中で考えていた彼女は気付いた。

腹の圧迫感と一緒に温かさが伝わってきていることに。


そう、それは体温を持つ生き物のように―――



瑠璃「Σって、やっぱりお前等かー!!」



目を開けて自分の腹の辺りを見た彼女は今日初めてのツッコミを入れる。

自分の腹に乗っていたもの達。


それは2匹の猫。

その猫達がスヤスヤと腹の上で眠っている。



瑠璃「道理で重いわけだよ・・・」



ハァ、とため息を吐いて2匹の猫を腹から下ろした彼女は見た。

枕元に置かれている時計を。



瑠璃「!ウソ!?もうこんな時間!?何で目覚ましならなかったの!?」



ギャー!と叫んで、彼女は急いで支度を始める。



瑠璃「お母さん達もう行ったわけ!?」



両親は有休を使って2人で温泉旅行に行く、等と昨日言っていたのを思い出し、

リビングに行って2人がいないのか確かめてみれば・・・


キッチンテーブルの上に昼のお弁当とラップがかけられたご飯とみそ汁、焼き魚と一緒に紙が1枚。



瑠璃「まさか・・・」



顔を引き攣らせながら、その紙を手にとってそこに書かれているものを読む。




【瑠璃へ

 お母さんとお父さん、昨日言ってた通り出かけます。

 留守番よろしくお願いします。学校に行く時は戸締りをちゃんとしてね。


 PS.よく眠っているようだったので、騒がしかった目覚ましは止めておきました】




瑠璃「おーこーせーよォォォ!!!



  ビリッ!



瑠璃「止めるなら起こしてよ!!バカじゃないの!?うちの親、バカじゃないの!?」



紙をビリビリに破って、1つにまとめてゴミ箱に叩き付ける。



瑠璃「遅刻するかもって時にこんなザ・朝飯食べられるわけないでしょーが!!」



誰もいない・・・否、ネコ2匹しかいない家に瑠璃のツッコミがこだまする。



東雲家の朝は、いつも瑠璃のツッコミのオンパレード(笑









――AM.8:10、

〈女子3人が通う中学校〉


未来「えぇーっ!何だよ、それー!」



もう少しで校門に差し掛かる、というところで部活の朝練を終えて部員2人と一緒に歩いていた彼女は、

幼馴染みである部員、泰雅(たいが)に言われたことに不満の声を上げる。



未来「何で俺が次期部長なわけ?フツーお前だろ!?」


泰雅「しょうがないだろ。先輩達が決めたことなんだから。ってか、お前も了承したからって新山先輩言ってたぞ?」


未来「了承したのは短距離のリーダーだけだし!」


泰雅「頑張れ部長。応援してる(笑」


後輩「私も応援します!お姉様が適任ですもの!」



黒髪のポニーテールの少女、〈未来様お慕いし隊〉、隊長の七海(ななみ)が力強く言う。



未来「俺は上に立てるよーな奴じゃねぇから」


「まったくだな」



3人で話しながら校門を越えようとした時だった。

横合いからメガネをしたひょろい大人の男・・・生徒指導の相澤(あいざわ)先生が話に割り込んだのは・・・



相澤先生「風紀委員だというのに不要物(腕のブレスレット)を学校にしてくるお前は、

部長になる資格も委員長になる資格もない!」


未来「っるせぇ、ハゲ。生徒に言う前にまずセンセーが不要物であるそのヅラ取れ」


相澤先生「こっ、これはカツラではない!ちゃんと生えてるものだ!」


泰雅「先生、もう皆ヅラだって知ってますから今更何をどう言っても意味ないです」


未来「つか、そもそも俺は風紀委員長にもなるつもりねぇですから」


相澤先生「私だってお前を委員長になどしたくない。しかし、現委員長や委員の皆からの推しが強いんだ」


七海「勿論、私もお姉様推しですVv」


↑彼女も陸上部+風紀委員所属。


未来「何てこったい」



などといった会話を立ち止まってしていれば、また新たな珍入者達が。



「「未来ーーー!!」」



泰雅「あ、健矢(けんや)、くるみ、おはよう」


健矢・くるみ「「おはー!」」


未来「朝から何じゃい・・・」



何故かテンションMAXな幼馴染み2人に若干気圧される。

現れた幼馴染みの2人は満面の笑みで、



健矢「風紀委員の権力を生徒会に貸してくれ!」


未来「はぃ?」


くるみ「今年の文化祭、って言ってもまだ先なんだけど・・・その文化祭を□□中学校と合同にしたら面白いんじゃないですか、

ってうちと健矢と楓が会長と副会長に提案したらOKしてもらえたんだ!だから、未来達風紀委員も手伝って!」


未来「いや、おい・・・待て。□□中はいいですよー、って言ったのか?」


くるみ「ううん。今日、直接行って了承してもらうの」


健矢「ここで巨大プロジェクトを企画、成功させたら次期生徒会長は俺に決まったも同然だからな!」


未来・泰雅「「それが狙いかよ」」


健矢「だから未来も今日一緒に来てくれ!番犬代わりに(笑」


未来「はっ倒すぞ、テメェ」


くるみ「だって楓は今週末試合があるとかで部活に行くし・・・2人だけだと心細いから」


未来「俺も風紀の仕事という名の雑用があるから無理」


くるみ・健矢「「えぇ〜!」」


未来「番犬ならあいつ連れてけよ、あのクソナイフマニア」


健矢「拓篤(たくま)なんか連れてったら俺達まで補導されるわ」


未来「じゃぁ、諦め―――」



「未来!未来!!未来ーーー!!!」



  ガバッ!



未来「Σぐはっ!」


七海「Σお姉様ーーー!!」



諦めるんだな、未来がそう言おうとした瞬間、後ろから誰かが飛びついてきた。

声でやって来た人物が分かったのか、泰雅とくるみは苦笑し、健矢は笑う。


飛びついてきた人物も彼女達の幼馴染みだからだ。



泰雅「あぁ・・・そういえば今日火曜か」


くるみ「そ。楓が週で1番ヒートアップする日」


楓「ジャンプ読んだ!?読んだよな!?ONE PIECE、マジでヤバイって!

ルフィもカッコイイけど、あたし最近ローも好きになってきた!どーしよー!」


未来「お、俺は断然・・・エースとサボ派です」



紗那「楓〜、落ち着きなよ〜」


悠香「鞄放り投げて突進していくなんて・・・余程話したかったんだね(苦笑」


くるみ「紗那、悠香、おはよー」


紗那「おはよ〜」



相澤先生「(い、いかん・・・いかんぞ。××小出身、スーパー問題児軍団が集結しつつある・・・・!)」



スーパー問題児軍団=紗那達、保育園からの幼馴染み集団13人。

保育園、小学校で良くも悪くも数々の伝説を生み出した者達で、教員達最大の悩みの種(笑



楓「あ、そーだ!そーだ!未来!ジャンプの話もだけど、もっと重要な話があるんだった!」


未来「何じゃそりゃよ?」


楓「昨日、同じクラスの女バスの子にさ、今度の試合に人数少ないから出てくれって助っ人頼まれたんだ。

2人足りないらしいから、あたしと未来でいいよな?」


未来「その様子からして、もぅその女バスの子には俺達2人が出るー!って言ってるんだろ?」


楓「うん、そー。やっぱ分かった?」


未来「フッ、ハニーの考えることはお見通しさ」


楓「いいよな?別に?」


未来「断る理由はねぇしな」


泰雅「未来・・・お前、そう何でもかんでも受け入れてたらいつか体壊すぞ」


未来「オトン、心配しなさんな。俺、体だけは丈夫だから(笑」


くるみ「それに・・・―――受け入れることが、未来の強みだしね」



その言葉に含まれる意味を知るのは未来1人。

くるみ自身、彼女にだけ伝えようとしてその言葉を言った。


言われた未来はフッ・・・と静かに笑った。



未来「ほうじゃの」








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