番外編

□秘密の日常
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――AM.7:00

〈谷垣家〉


紗那「うん、綺麗!」



キッチンテーブルに座って、自分の前に置いてある2枚の皿・・・その上に乗っている料理を見てご満悦。

カリカリに焼いたベーコンと大き目のソーセージ、スクランブルエッグ、フライドポテト、ブロッコリー&マッシュルーム。

もう1つの皿にはハチミツたっぷりのホットケーキが2枚。


2つの皿の傍らには紅茶。


これぞ、正に朝ご飯。



紗那「いただきま〜す!」


父「紗那、いただきますをする前にお前が無茶苦茶にしたキッチンを片付けろ。お母さんが怒るぞ」


紗那「・・・・・・」



言われた彼女はキッチンを見る。

この朝食を作るために朝早くから格闘をした場所・・・。


調味料はこぼれ、油は壁に飛び散り、フライパンには黒いコゲがたくさんついている。


そこから視線を逸らし、彼女はコーヒーを飲んでトーストを食べる実の父に言う。



紗那「あれは雅透(まさと)がやったんだよ〜」


雅透「そんなわけないだろっ!」



彼女のウソ発言に向かい側に座っていた3つ下の弟、雅透がテーブルを叩いて抗議する。



雅透「あんなこと出来るの家(うち)でお姉だけだから」


紗那「謙遜しなくてもいいよ」


雅透「何が何でも俺がやったことにしたいわけ?」


紗那「雅透の方が家を出るの遅いんだから、後片付けだって十分出来るでしょ〜」


雅透「お父さん、お姉こんなこと言ってるんだけど」


父「2人で頑張って片付けろ」


紗那「は〜い!」


雅透「Σ何で俺まで!?お父さん、お姉に甘いよ!」


紗那「ほら、雅透。早く片付けるよ〜。じゃないと学校に遅れちゃうよ〜」


雅透「あぁ!もうっ!そんな他力本願だからダメなんだよ、お姉は!」


紗那「お姉ちゃんだって1人で頑張ってることも―――」


雅透「ないだろ。瑠璃さん達にいっつも頼って、困らせて振り回してるだけだ」


紗那「うっ・・・そ、そんなことないもん」


雅透「いいや、あるね。昔からずっとそうじゃん。こんなのが姉だなんて俺は恥ずかしいよ」


紗那「うぅっ〜〜〜〜・・・!」



父「2人共、口じゃなくて手を動かせ」



谷垣家の朝はいつも姉弟の言い合いから始まる。









――AM.7:30、

〈如月家〉


希「Zzz」



チュンチュン・・・と小鳥が囀る中、彼はベッドの上で幸せそうに寝ていた。


その幸福の時間も部屋に突然入って来た人物によって潰される。



母「希、いつまで寝てんの!遅刻するよ!!」



巫女姿の彼女が、持っているハタキで希の頭をビシバシ叩く。


大声+地味な痛みで彼はベッドの中でもぞもぞ動き、言う。



希「今日・・・学校・・・・休み」


母「じゃないでしょ!ほら、起きる!!顔洗う!着替える!朝ご飯食べる!歯を磨く!学校行く!分かった?」


希「無理・・・」


母「起きないと土日、うち(神社)の手伝いしてもらうからね」


希「起きます」



余程手伝いが嫌なのか、先程まで渋っていたのがウソのように彼は素早く起きた。

それを見て母はため息を吐き、早く支度しな、と言った。



母「あの子も、いつもみたいに待ってるよ」


希「あぁ、」



母親に言われた通り顔を洗い、制服に着替えた彼は居間へ向かう。

そこに行けば、温かいお茶と煎餅を食べながら祖父と談笑している少年が1人。



祖父「いやぁ〜、そんなことがあったとはなぁ・・・。希の奴は学校の話を全然せんからのぉ」


洋一「希は基本、学校でも寝てますからねー」


希「(溶け込み過ぎだろ・・・)」


洋一「あ!希、はよー!」


希「暇人め・・・」


洋一「Σ迎えに来てんのにそりゃねーだろ!?」


母「いつも助かるよ、洋一君。ありがとね」


洋一「あ、いや・・・俺が好きでやってることッスから」


祖父「希はいい友達を持ったもんじゃ」


希「友達・・・なのか?」



朝ご飯を食べながら尋ねる。



洋一「Σ酷ぇ!」


祖父「希、友達というものはなろうと思ってなるものではなく、知らぬ間になっているものなのじゃ」


希「無条件に・・・受け入れなきゃ、ダメ、なのか・・・・?

友達には・・・そんな、恐ろしい・・・・システムが・・・(驚愕」


洋一「ΣΣお前は俺が友達なのがイヤなのか!?」



などと言っていると、外からイヌが吠える声が聞こえてきた。



母「ほら、タマが早くしないと遅れるって言ってるよ」


希「そう・・・急かさないで、くれ」



味噌汁を流し込み、残ったご飯を漬け物と一緒に食べる。

空になった食器を流しへ持って行き、歯磨きへ。


それが全て終われば、



希「行って、くる・・・――姉ちゃん」



洋一と共に6年前に亡くなった双子の姉、望の仏壇の前で両手を合わせる。

これが彼等のいつもの日課。



タマ「ワフッ!ワフッ!」


洋一「タマは今日も元気だなー!」



玄関から外に出れば、待ってましたとばかりにリードを銜えたタマと名付けられたイヌが彼等の前にやって来る。

(因みにタマと名付けたのは望)



希「タマ・・・毎日、送って・・・・くれなくても、大、丈夫・・・」



6年前、望と希が誘拐されたあの事件。

それ以来、このイヌは彼の登下校についてくるようになった。

登下校だけでなく、家の外に出歩く時は必ずついて来ようとする。



タマは賢い。

誘拐事件の頃、生まれてまだ間もなかったこのイヌは、望がもう2度と帰ってこないということを理解しているように思えた。


だから、希がまた誘拐されないようにと、護衛のつもりで彼の外出について行こうとするのだ。



タマ「ワンッ」



希の言葉に反対するように吠え、早くリードをつけろとせがむ。



洋一「タマはいつでもどこでも寝る希が心配なんだよなー」


タマ「ワフッ、」


希「俺は・・・寝てばかりな、人間じゃ・・・・ない」


洋一「学校にマイ枕持参して半日以上寝てるくせによく言えるな(苦笑」



如月家の平日の朝は洋一が遅刻する希を迎えに来て、タマと一緒に学校に行く・・・という感じ。






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