Ver.黒曜・リング編

□Last Laugh
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〈10月27日、AM.11:00、

6人が住んでいた家にて・・・〉


希「・・・・・・」



俺はまた、目の前で起こったことにただただ呆然としてた。

多分、それは洋一達4人も同じだと思う・・・。


俺達5人は、時間を巻き戻して風花が消えるっていうバカなマネを止めに来た。


頭では理解してたつもりだったけど、いざ巻き戻しを体験したらもう驚くしかない。

1度経験した時間をもう1度やり直すことが出来るなんて・・・



って考えてた俺の頭に、1つの言葉が浮かび上がってきた。

理解するより先に、口が動いてた。



希「何が・・・どう、なって・・・・こうなったんだ・・・?」



言って、気付いた。


これは、あの時言ったのと同じセリフだ・・・!



内心で驚いてたら、今度は東雲が・・・



瑠璃「そんなのこっちが聞きたいし!」



俺と同じように、あの時と同じセリフを言った。


自分の意思とは無関係に。

ただ頭に浮かんだ言葉を口が勝手に言うんだ。



もしかして、これが・・・

これがあのフギンとムニンっていう奴等が、俺達にした手助け・・・?



希「(なんて恐ろしい力だ・・・)」



今の俺達は多分、与えられたセリフしか話すことが出来ない・・・本の中の登場人物みたいなものだろう。


そうすることでしか、風花を連れ戻せない。

分かってはいるけど・・・気持ち悪いな、この感覚は。


また自分の口が勝手に動く。



希「・・・ビックリ人間ショー?」


瑠璃「違う!」


海斗「相変わらず騒がしい人達ですね」


未来「その元気、俺にも分けてほしいわさ」



風花・・・

この中で、風花だけが普通に自分の意思で話してる。


あの時聞いた言葉通りの言葉を俺達はまた聞いてる。



もう失敗しない。

今度は6人全員であの白い世界に戻るんだ。



きっと・・・洋一達もそう決意してる。




決意しながら、俺達はその後の会話を続けた。



未来「そーいうわけだ。次からはそのへんも注意して世界を救おうぜ、ってことでいいじゃねーか」


希・海斗「「、」」



次からも何も・・・お前は消えるつもりでいるんだろう。


って言いたい、本心は。

でも、それを言うとこの後のことが狂うから言えない。



未来「ほーか、ほーか。期待はしねぇけど頑張んな」


瑠璃「何その言い方!」



風花がここで他人事だったのは・・・次からは自分がいないから、ってことだったんだな。


ウソをついても、こいつはいつも通りだから・・・

いつも通り過ぎるから、俺達はどうしても見抜けないんだ。



未来「内部電力低下。スリープモードニ移行シマス」




瑠璃「あいつの将来がマジで心配なんだけど・・・」


海斗「奇遇ですね、僕もです」


希「今度は・・・電波、キャラに、なったのか・・・・?」



洋一「とりあえず、俺達は皆に挨拶しに行こうぜ」



あぁ・・・そうか。そうだった。

ここで3人は皆に挨拶に行くんだったな・・・。


別れの挨拶を2度するって・・・大変だな。

あの時みたいな寂しさとか悲しさとかはもう感じられないだろ、きっと・・・。



瑠璃「ハァ・・・分かった。うち等3人で行ってくるよ」


海斗「えぇ。洋一の銀の鍵を使って、なるべく早く終わるようお願いしますね」


洋一「あ、そっか!その手があった!」


紗那「自分の〈神器〉なのに忘れてたんだね、洋一君・・・(苦笑」



そんなことを言い合って、リビングから出て行く3人を見送る。


俺も俺で、ここで退場なんだよな・・・。



希「俺・・・部屋で、寝る・・・・」


海斗「最初から最後まで睡眠第一なんだね・・・(呆」



俺がここで言うことは、これで終わり。

後は自分の部屋で寝て、洋一に起こされるだけ。



同じことの繰り返し。

繰り返して、変えるべきところが来るのを待つだけ。












   ◇  ◇  ◇












ムニン「フギン、」



〈REBORN!〉の世界の何処かに〈傍観者〉の2人はいた。

金髪の彼女が感情の篭っていない声で、傍にいる銀髪の青年の名を呼ぶ。


その手に、〈神器〉である黒い本を開けて持ちながら・・・



フギン「過去・・・モしくハ未来デなにか、アったミたいダネ」



コクリ、と頷くムニン。


彼女が開けているのは白紙のページ。

そこに何も記されていないのを確認して、彼女は本を閉じる。


そして、もう1度同じページを開いた。



すると、そこには・・・



ムニン「きた・・・」



先程記されていなかった文字が、文章が事細かに記されていた。

それを見たフギンは、自分の〈神器〉、インクのついていない黒い羽ペンを左手に持つ。



フギン「サーて・・・どンな面白いコとガ起こったノかナ」



などと楽しそうに言いながら、彼は羽ペンをムニンが持っている本、そこに書き込まれている文字に当てる。

当てて、羽ペンを持ち上げると、書き込まれていた文章が本から飛び出し羽ペンの尖端に続いた。


その文章を、自分とムニンの頭の中に入れる。


途端、未来で起こったことが映画のフィルムを見るように頭の中で流れていく。



ムニン「巻き戻された世界・・・」


フギン「ふっ・・・ふふふっ!あはははっ!アー、面白イ!やっパり失敗シたんだネ、あノ5人ハ」



腹を抱えて笑った後、彼は傍にいる彼女に向かって言う。



フギン「ネ?僕の言っタ通リになッたでショ?」


ムニン「・・・・・・」


フギン「取り返シは必ずつク。

四次元に生キる〈彼〉が必ずスる、っテ・・・」


ムニン「凄い凄い・・・(棒読み」


フギン「Σちョっ・・・軽くアしラうって酷いヨ、ムニン」


ムニン「どうなろうと・・・私達の〈役目〉は変わらない。私達はただの傍観者。

全てを〈思考〉し、全てを〈記憶〉するだけ・・・」



2羽のカラスは見守る。これから起こることを全て。


2羽のカラスは記録する。これから起こることを全て。




そんな2羽のカラスには、




過去も、



現在も、



未来もない。







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