Ver.黒曜・リング編

□残された手段
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フギン「消エて・・・自分のコとを忘レてもラえれバ、君達が何モ気にシないデ笑っテ過ゴせると〈あノ子〉は思っタんだロうネ」


紗那「そんな、ことって・・・」



白い世界に膝をついて、彼女は顔を覆う。

聞かされた〈真実〉の話に・・・目から涙を溢れさせて。



フギン「君達だっテ、薄々気付イてたンじゃないノ?

だカら東雲瑠璃チャンは雨戦の日ニ、〈アの子〉に―――」


ムニン「〈何か、あった?〉・・・なんて尋ねた」


瑠璃「!」


フギン「だかラ樋上洋一クンは霧戦ノ日に、〈あノ子〉ニ―――」


ムニン「〈死のうとしてんのか?〉・・・と言った」


洋一「!」


フギン「ダから篠原海斗クンはズっと〈アノ子〉を1人にサせナかっタ」


海斗「・・・・・・」


フギン「違ウ?」


瑠璃・洋一「「っ・・・」」


フギン「〈アの子〉はいツだっテ、君達ニひんとヲ与エていたンだヨ?〈犠牲〉の話ノ他にモ・・・。

例えバ、雲戦の日ニ如月希クンに言っタ―――」


ムニン「〈後3手で詰みだ〉、〈面白ぇ手でお前〈等〉が対抗してくんのを期待しねぇで待ってるよ〉・・・」


フギン「なンて台詞とカ、」


希「!」


フギン「例エば、大空戦ノ日に篠原海斗クンの前デ買ッた、―――ごじあおいトカ」


海斗「え・・・」


紗那「!ゴジアオイ・・・!?」


フギン「谷垣紗那チャンだったラ、その花ノ花言葉を知ってルよネ」


紗那「っ・・・!」


海斗「何なんです。教えてください、谷垣さん」




紗那「ゴジアオイは1日花・・・。だから、花言葉は―――












〈私は明日死ぬでしょう〉」








海斗「!!」



フギン「気付かナかったのハ・・・気付ケなかッたノは、君達ダ」


ムニン「〈あの子〉が消えた今、何を言っても・・・全部仕方のないこと」


フギン「そレもそウダ。・・・けド、皮肉だネ。

〈成リ代わり〉ヲ嫌う〈あノ子〉ガ最後の最期デ〈成り代ワり〉をスるなンテ・・・」


ムニン「・・・・・・」


フギン「〈アの子〉ノ人生は、最期まデ〈参加者〉ヤ〈神の使い〉に無茶苦茶ニさレたネ」


神「フギン、」



諌めるように言う神に、フギンという青年は肩を竦めてみせる。



フギン「ハいはイ。口は慎ミますヨ」




5人「・・・・・・」



未来は、何をどこまで計画し、計算していたのだろうか。


確かに瑠璃達が一緒に戦ってくれたおかげで、過去に現れていた〈神の使い〉達の〈神器〉は全て滞りなく回収出来、

彼女が〈マヤ〉と呼ぶ、彼女の大切な人も助けることが、連れ戻すことが出来た。


それは一見すれば、全ての目的を果たした1人の道化師(クラウン)が、最後の後始末を瑠璃達に託していたようにも見えたかもしれない。




だけど。



もしも、瑠璃達がもっと早く全てに気付いていれば、

彼女のウソや秘密を解き明かすことが出来たなら、


結末は・・・違っていたかもしれない。



未来が自ら設定した目的すら打ち壊し、あらゆる悲劇を回避出来た世界があったかもしれない。



神や彼女の掌で踊らされていた海斗と希は、そこからの脱却を望んでいた。

しかし、これは正しかったのか。


今回、掌で踊ることすら出来なかった今の彼等には、判断のしようなんてない。



それぐらい、風花未来という少女は完璧だった。



瑠璃達が〈災厄を齎すもの〉の戦いでディスペラーレに勝利し、出入り口や〈犠牲〉やヒントに気付けばそれでよし。

敗北し、気付かなかったとしても、そこに未来自身が何かしらの結論を用意し、全てを片付ける。



立つ鳥跡を濁さず。


それは潔い理想像なのか、潔過ぎる結末に憤るべきか・・・



フギン「・・・それデ?君達は結局ドうすルノ?

〈あノ子〉のコとヲ忘れテ、自分達ノ世界で普通に過ごスも良シ。こコで延々後悔すルも良シ。


どウするカは、君達が決メるこトだヨ」



瑠璃「どうするって言ったって・・・」



何も変えられなかった。


何も助け出せなかった。



結局、5人はただ〈仲間〉が消えていくのを眺めていることしか出来なかった。


風花未来は、自分自身を含む、1つの大きな事件の元凶全てにケリをつけることで世界救済を成し遂げた。


ならば、彼女達5人はその流儀を受け入れなければならない。



そこに何の意味もなくても。


そこに誰の救いもなくても。



洋一「こんなのって・・・ありかよっ」


希「ズルいな・・・あいつは、」



先程フギンという青年が言ったように、海斗以外の4人は現在進行形で風花未来という少女のことを忘れていっている。


最後には、この白い世界へ来た時と同様に彼女のことを完全に忘れ、思い出すこともしなくなるし、出来なくなるだろう。


今更、何をどうしたって変わらない。

もうどうすることも出来ない。


そんな風に彼等が悔みながら諦めかけた時、









海斗「今すぐ彼女の許へ行きたいので、いい加減方法を教えてください」









彼が、神やフギン、ムニンに向けてキッパリそう言った。



その場にいた者達の時間が止まる。


その沈黙を破ったのは勿論・・・



フギン「ふっ・・・ふふ。あははは!」


神「海斗・・・お前、」


フギン「イやァ、そコまデ早く決断するナんて、さスがの僕モ思っテなカッたヨ・・・」


海斗「あなた達は1度だって方法がないとは言いませんでしたから」


フギン「デもいいノ?そレは〈アの子〉が望んデるこトじゃなイヨ?」


海斗「そんなことを言ったら、僕だって彼女が消えることを望んでいませんでしたよ。

望んでいないことを彼女がしたんです。それをやり返したっていいでしょう」


フギン「あははっ!凄い開キ直リ!」


海斗「それに何より・・・









文句や謝罪は本人の前でするものです」






他4人「!」


フギン「ふふっ・・・。とりっぷシて1番成長しタのは君カもしレないネ。

ここマでの決意ヲしチャってル篠原海斗クンにえーッと・・・神様?ハどウするのカナ〜?」


ムニン「(フギン・・・楽しそう)」


神「・・・本気、なんだな?」


海斗「勿論」



だから早く方法を教えろ、と訴えかけてくる彼の目を見て、神は諦めたようにため息を吐く。

出来る事なら、その方法を教えたくなかった・・・というように。


しかし、断っても海斗が諦めることはないだろう。

ならば最終的に自分(神)が折れるしかないと悟ったのかもしれない。



神「・・・分かった。ちゃんと教えるよ」








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