Ver.黒曜・リング編

□残された手段
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紗那「瑠璃、どうしたの〜?」



ケータイを見て固まる東雲さんに谷垣さんが声をかければ、彼女は眉を寄せながら僕達に言ってきます。



瑠璃「ちょっと変なメールがきてて・・・。皆の方には何かきてない?」


洋一「変なメール?」



そう言われて、僕達はそれぞれ自分のケータイを取り出します。


隊服のポケットから取り出そうとした時でした。

ケータイとは違う、何か硬いものが指に当たったのは・・・



海斗「・・・?」



掴んで取り出して、何なのか確かめる。


それは、四つ葉のクローバーの刺繍が施された・・・



海斗「(お守り・・・?)」



こんなもの持ってたっけ・・・?

買ったにしては・・・手作り感が溢れてるような・・・・


丸くて硬いものというのは分かるんですが・・・一体、中に何が入っているんでしょう?


僕が作るはずも、作れるはずもないし・・・誰かからの貰い物だったっけ?



海斗「四つ葉のクローバー・・・」



そういえば、もっとリアルなクローバーを僕は毎日見てたような・・・。

どこで・・・?


・・・本?いや、違う・・・・



海斗「!」



そうか、アレだ・・・!


ケータイなんてそっちのけで、僕は隊服の内ポケットから1枚のしおりを取り出しました。


ラメがキラキラと輝く四つ葉のクローバーが挿まれたソレ・・・。

僕が毎日見ていたのは、このしおりのクローバー。


この2つのクローバーは一体・・・




「ち、小さかった僕は、そんなのしか作れなかったんだ・・・」



「どうだ。あのしおりよりは格段に成長してるだろ。崇めなさい、褒め称えなさい」





海斗「(え・・・?)」



どうして、でしょう・・・。

手の中にあるしおりとお守りを見ていると、誰かの声が・・・言葉が自然と頭に浮かび上がってきました。




「逃げるが勝ちじゃァァァーーーーー!!!」



「やったよーーー!!僕勝ったよーーー!!!」



「心はいつでも、カブトムシを追いかける少年だぁ!!」



「俺が脱落しても、我が野望は潰(つい)えん!勝利の女神はわしに微笑んでいるのだ!」



「僕1人が耐えればいいだけでしょ?」



「でもダイジョーブ。僕、ウソはつくけど約束は守るもん」



「諦めたらそこで試合終了だぁ!!!」



「消毒液は沁みるから嫌だ!!」



「君なら出来る。信じてるぞ・・・」



「―――ありがとな」



「天邪鬼ですもの!」





いつも皆の前ではバカ騒ぎをして・・・


そのくせ1人になると黙って勝手に全部背負い込んで・・・


強がって、どこまでも強がって弱さを隠して・・・



いつも笑ってた・・・



あの人の名前は・・・










「―――海ちゃん!」










海斗「未来さん・・・」




神「、」




瑠璃「篠原はどう?メールきてた?」


洋一「俺達にはきてねーみてぇなんだ」


海斗「――――は・・・?」


洋一「?海斗?」


海斗「未来さんは!?」


瑠璃「へ・・・?」


紗那「誰、それ〜?」


海斗「っ・・・!」



そうか・・・。


この人達もさっきの僕みたいに・・・彼女のことを―――忘れてるんだ。



時間内に戻らなかった人は、あの世界でも、元の世界でも存在を抹消される。

そういう約束だったから・・・。



海斗「(ウソはつくけど、約束は守るんじゃなかったんですか・・・!)」



どうしてあんなことを・・・!



海斗「自称神様・・・」


神「自称は余計だけど・・・何だ?」


海斗「僕をもう1度あの世界へ行かせてください」


希「何で・・・?」


瑠璃「ちょっと篠原、どうしちゃったの?さっきから、何か変だよ」


海斗「変なのはあなた達の方ですよ。

東雲さん、谷垣さん、彼女は・・・未来さんはあなた達2人の幼馴染みじゃなかったんですか!」


瑠璃・紗那「「幼馴染み・・・?」」




「しりとりはな、古来より魔除けになるって言われてるんだぞ。2人以上でしりとりをすることで、周りに結界が張られるんだ」


瑠璃「いや知らないし、そんな雑学」



「目指せ、トップ!目指せ、ガッコ征服!!」



『でももクソもねぇ!確かにお前はたくさんの人を助けたかもしれねぇ、けどな!テメェが死んだら元も子もねぇだろーがっ!!!』



「お前はいつまでも待ってるだけじゃなくて、いつまでも人の後ろにくっついてるだけじゃなくて、いい加減・・・

―――自分の足で歩き出せよ」



「今日もツッコミ冴えてるね☆」





瑠璃・紗那「「あ・・・」」


洋一・希「「(未来・・・?)」」




「落ち着いたら、行ってやれ。それでも無理だって言うなら、俺が代わりに行ってやる。

ダイジョーブ、あいつはアホだから何も気にしねーよ」



「OK!さっそく手配して、俺がギミック満載の超安全靴(ブーツタイプ)にしてやるよ!」



「壊させやしないよ・・・。お前が守ったものは、ゼッテー壊させやしない」



「―――俺はもっと先に行く。だから、

死に物狂いで追いついてこい」



「―――テメェの姉ちゃんや世界のせいにしてんじゃねぇ!」



「そうじゃなきゃ、―――守る意味がねぇ」



「優しさの意味をはき違えてくれるなよ」



「ふぅん・・・。ま、体を壊さねぇ程度にボチボチやれよ」





洋一・希「「!」」


瑠璃「(トリップしたのは5人じゃ・・・なかった。うち等は6人だった)」




「忘れたか、瑠璃。俺ってば、天邪鬼なんだぜ」




瑠璃「あぁ・・・!」


希「風、花・・・」


洋一「何で俺・・・あいつを忘れて、」


紗那「今の今まで・・・どうして気付かなかったの?」



神「・・・、」






「アーあ、全員思い出シちゃッタ」






6人「!」




僕達は一斉に声が聞こえた方を見ます。


そこには、この白い世界とは真逆の色を着た2人の人物・・・。



銀の瞳に銀の髪を後ろで1つに結って、右耳に水晶で出来た小さい羽ペンのイアリングをしている男性が1人。


白い肌に白い瞳の短い金髪を持つ、左耳に男性と同じ水晶で出来た小さな開いた本のようなイアリングをしている女性が1人。




僕達はその人達を知らない。

だけど、自称神様は知っているようです。



その証拠に現れた2人を見て呟きました。





神「フギン、ムニン・・・」








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