Ver.黒曜・リング編
□Red Scare
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ガイオ「くっ・・・」
ガイオ「(こいつ・・・一見考えてねぇようで、何十手、何百手と先を読んでやがる。いや・・・・体に染みついてるんだ)」
彼は目の前にいる少女を見る。
さっきまで余裕そうに見えた彼女だったが、何故か少し肩で息をして汗を流していた。
ガイオ「(だが、だからこそ釈然としねぇ・・・。さっきの警棒を使った攻撃、)」
カウンターを受けた時のことを思い出す。
自身の右腕を断ち切った凶器が、あの時は何故か自分の体に弾かれた。
それは、つまり・・・
ガイオ「(あれにも何かタネがある?
溶断ブレードや、鉄の拳や足を防げたのにも、俺の攻撃を感知出来たのにも、何か理由があるはずだ。・・・それは何だ?)」
また回避という高速移動をしながら、彼は冷静になって考える。
未来の挑発を受け、怒りで相手を分析することを疎かにしていた。
否、そうさせる為に彼女は自分をあれだけ煽っていたのだと・・・ここで初めて気付いた。
ガイオ「(奴が俺に自分から攻撃を仕掛けてきたのは1度だけ。
それ以外は背後に回ったり、カウンターを喰らわせてくるのが主だった。
しかも、その全てが体術・・・得意の剣術は1度も使ってない。何故だ?)」
未来「今の俺にはマトモにやり合う力はねぇ。何もねぇんだよ、ホントに。
この1ヶ月、色んなことをやってた俺は体力も気力もすっからかんだ。もぅマトモに戦える状態じゃねぇんだ」
未来「こんな面白くねぇ戦いは早く終わらせてぇけど、経験値の為にゃしょーがねぇ。
だから、まぁ、安心しろ、少年。力は3割程度に思い切り抑えてやる」
ガイオ「(どっちがフェイクで、どっちが真実だ・・・?
―――試してみるか)」
左手を固く握り、その手で鉄筋コンクリートの地面?を殴りつけた。
未来「・・・?」
辺りに飛び散る礫(つぶて)・・・
その礫を1つ1つ抱え、ガイオはニヤリと笑う。
ガイオ「お前が隠してる力・・・。全部解き明かして攻略してやるぜ!」
またも高速移動を開始し、未来に向かって全方位から礫を投げていく。
未来「!!」
未来「(冷静になりやがったか・・・)」
次々と飛んでくる礫を避ける。
避けられないものは足の安全靴や警棒で砕き、その攻撃を防いでいく。
ガイオ「(こいつは接近戦タイプ・・・。この速度で動き続ければまず捕らえられねぇ。
万が一捕らえられたとしても、ここまで離れてりゃ問題ねぇ。じっくり視させてもらうぜ)」
◇ ◇ ◇
バジル「なんて攻撃だ・・・!」
リボーン「ただパワーに頼ってた今までの攻撃とは違うな」
ゼロ「死神ピエロの言葉を借りるなら、経験値を稼いでレベルアップした・・・ということなのでしょうか」
瑠璃「あれじゃ反撃出来ないよ!」
希「(どうするんだ・・・風花)」
スクアーロ「あのガキ・・・!何で刀を使わねぇ!!」
紗那「えと、リーチェさんと戦ってる時・・・未来、使う必要がないって・・・・」
ベル「出し惜しみしてる場合じゃねーだろ、あのバカ」
マーモン「仕方ないよ。彼女は頑固だから」
海斗「もしかして・・・」
洋一「?どうかしたか、海斗?」
海斗「う、ううん。何でもない・・・」
首を横に振り、彼は再び屋上を映すカメラの映像を見る。
礫を避けたり、防いだりし続ける未来を瞳に捉える。
海斗「(もし・・・刀を使わないんじゃなくて、―――使えないんだとしたら?)」
そこで、彼は未来が神に神器を貰った時のことを思い出した。
神「お前の気持ちをその刀は反映する。生かすも殺すも、お前次第だ」
海斗「(まさか、使えないのは心が原因・・・?だから未来さんは刀を使おうとしない?)」
海斗「未来さん・・・あなたは、」
◇ ◇ ◇
未来「ハァッ、ハァ・・・!」
未来「(くそがっ!こんなとこでバテてんじゃねぇ!!)」
肩で息をしながら、飛んでくる礫を警棒で砕く。
何かを練ろうとしているのか、未来の顔がほんの若干苦しみに歪む。
と、警棒に目視し難い微弱な赤い炎が灯った。だが、それもすぐに消えてしまう。
未来「(やっぱ・・・さっきの広範囲への炎の放出がまずかったか。
・・・しゃーねぇ、認めてやろう。賭けはある意味において俺の負けだ)」
礫の攻撃をかわし、安全靴でまた砕く。
そしてズキズキと痛む折れた右腕を動かし、懐にあるモノへ手を伸ばす。
未来「(だからその元手を取り返す為に、ちょっちまたズルをさせてもらおーか)」
未来「つっても・・・」
懐から右手を出す。
その手に握られているのは、リーチェ戦で見せた片手に収まる程の小型銃・・・
未来「(これがいけるかどうかも、またちょっとした賭けなんだけどな・・・。そして、その分の代価も――)」
未来「装填、ペレット―――」
彼女はまた弾倉に何かの弾を入れる。
そして真っ直ぐ、その銃を前に向け・・・
未来「―――属性は雲・・・のち、嵐」
引き金を引いた。
小型銃から飛び出した弾は散弾し、それが一気に〈増殖〉する。
それらの弾は飛んでくる全ての礫に当たり、礫を〈分解〉し、破壊した。
次々に〈増殖〉していった弾は、高速移動をしているガイオすら逃がさない。
ガイオ「何っ・・・!?」
ドガガガガガッ!!
怒涛の弾丸の嵐がガイオに降り注いだ―――。
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