Ver．黒曜・リング編
□Red Scare
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？「もウすグ詰みダネ」
また、何処かの建物の上で声が響く。
２つの影は、互いの背をつけて座り込んだ状態で話す。
？２「それはあなたが言う、全く別の違う〈物語〉の終わり？」
？「イーや、ソの〈物語〉は終わラなイ。悪役〈達〉ノ物語が終わルだケで〈物語〉ハまだ続クヨ」
？２「？意味が・・・分からない」
？「あはは、ダろうネ。だっテもウ何もかモぐちゃぐちゃダかラ・・・」
？２「グチャグチャ・・・？」
？「様々ナ謀略、策略、計略ガ渦を巻き過ぎテル。そレも、たッた１人ノ少女を中心にネ・・・」
？２「それは・・・放火魔であり消防士の？」
？「そウ・・・。今モ昔も変わラず、彼女の周リは悲惨ダ」
？２「〈思考〉専門のあなたが・・・〈記憶〉の話をするなんて珍しい」
？「あらラ・・・あの邪神ノ〈思考〉が入リ込んジャったかナ？」
可笑しそうにクスクスと笑う声が響く。
？「デも、悲惨ナのは本当だヨ。色ンな糸がコんがらがっテ、彼女をがんジがらメにしテル」
？２「私達も、その１本なのかも・・・」
？「へェ・・・〈思考〉が専門外ノ君にシてハいい答エを出すネ。
じゃア僕は〈かも〉じゃなクて・・・―――確実ニそうダと言オうかナ。
たダ、傍観するコとしかシなカった僕達ハ、１番酷ク彼女を苦しメる糸ダ」
？２「・・・・・・」
？「彼女はアの邪神ト同じデ、善にモ悪にも染マル・・・。だカら恐ろシいんだヨ」
？２「今は・・・どっち？善？それとも、悪？」
？「難しイ質問だネ・・・」
？２「難しい？」
？「ウん。今、彼女は３ツの〈物語〉ノ中心にいルかラ」
？２「３つ・・・？〈最初の物語〉の延長と、悪役達の物語・・・・その２つの他に、まだ１つあるの？」
？「あルヨ。その２つガ善の道ダとするナら・・・最後ノ１つは悪の道ダ。
だカら今の彼女ハ、限リなく白ニ近い灰色・・・かナ」
？２「そのもう１つの〈物語〉は・・・何？」
？「こノ戦い・・・悪役達の物語ト同時進行しテいる、裏ノ戦イ・・・・
―――主役ニ成ラなカった裏方〈達〉ノ物語だヨ」
◇ ◇ ◇
洋一「あいつ等は・・・風花とあのガイオって奴は、何の話をしてるんだ？」
観覧席で屋上の様子（映像）を見守っていた彼は、未来とガイオの話を聞いて眉を顰める。
ツナ「それが・・・俺達にも分からなくて」
ディーノ「また〈ミリア〉、か・・・」
紗那「（ミリアって確か・・・このリーチェとかいう人のことだよね？）」
近くにいる・・・イーラとトゥーナの傍に寝かされているリーチェを見る。
先程の戦いで、未来が彼女のことを〈ミリア〉や〈ミリアム〉と呼んでいたのを紗那は思い出す。
紗那「（それで今、あのガイオとかいう人は・・・その〈ミリア〉って人を〈姉ちゃん〉って・・・・）」
未来「もし・・・もしもお前と、お前の弟、そしてお前の大切な人達が窮地に立たされて、
弟と大切な人達を助けたかったら、お前が犠牲になれって言われたら・・・。
それに断ったら、目の前で弟を殺すって言われたら・・・お前はどぅする？」
未来「・・・ミリアの奴も、そんな選択が出来たらよかったのにな」
紗那「（あれは・・・この人とガイオって人のことを言ってたの？）」
考えても、答えは出てこない。
元より、何も知らない彼女には、彼女達には答えを導き出せるはずもない。
―――絵本に入ることの出来ない読者には、ただ見ていることしか出来ない。
ただ、誰かが描いた筋書通りに物語が進んでいくのを・・・見ていることしか出来ない。
しかし、その一方で・・・
絵本に入ることを許された者達は、それぞれの役どころをしっかり演じる。
復讐者「（まだ耐えられるのか・・・？―――死神ピエロよ）」
―― 戦いを懸念する者 ――
屋上を映す監視カメラの映像を盗み見ている者は、あるところで自分の小さな椅子に座り、パソコンを操作していた。
「ふむ・・・素晴らしいデータだ」
―― 戦いを見守る者 ――
一切の気配なく屋上の様子を見ていた者は、１人紅茶を啜る。
「そろそろ失礼しよう・・・。期待しているよ、―――風花未来」
―― 戦いを望む者 ――
リーチェ「・・・・・・」
パチリ、と強制的に電源を切られていた彼女が目を開く。
だがその黒の瞳は彼女のそれではない。ミリアのそれでもない。
その黒は・・・どこまでも深い闇色だった。
リーチェ「 」
彼女の口が微かに、ほんの微かに動き何かの言葉を紡ぐ。
それは音にも空気にもならない、声・・・。つまりは口パク。
しかし、言葉を紡いだ彼女はゆっくりと小さく口角を上げ・・・どこまでも不気味な笑みを浮かべた。
―― 戦いを煽る者 ――
◇ ◇ ◇
未来「世界をぶっ壊す・・・か」
フゥ・・・と１つ息を吐いて、彼女は落ち着いた笑みを浮かべる。
それは底冷えするような、どこまでも冷たい・・・嘲るような笑み。
彼女は目の前のガイオを見て、挑発的な言葉を口にする。
未来「自分達がいた鳥籠すら壊せなかったお前に、そんな大それたことが出来るのか？」
その瞬間―――
ズヴォア！！
そんな空気を焼く爆音と共に、未来の後ろのフェンスが溶断ブレードによって断ち切られる。
丁度、未来の頭より上の部分のみが、断ち切られたことで屋上から下へ落ちた。
それでも、彼女は眉一つ動かさない。より一層笑みを濃くしただけだった。
ガイオ「あの時の・・・姉ちゃんに守られてた時の俺とは違う！」
未来「一緒だよ、バカ。何も分かっちゃいねぇ、何も見えちゃいねぇシスコンが」
再び、ゴッ！！という爆音が炸裂した。
ガイオが横に手を払ったことで、その五指から伸びた５本の溶断ブレードが未来に襲い掛かる。
普通ならば、先程のフェンスのように熱によって体を６つに断ち切られることだろう。
だが、彼女はそうならなかった。
溶断ブレードに弾き飛ばされ、横にゴロゴロ転がってフェンスに叩き付けられるだけだった。
未来「あぁ〜・・・痛ぇ。勘弁してほしいな、ホント」
攻撃を受けたにもかかわらず、彼女はいつも通りに話す。
それは何事もなかったかのように・・・。立ち上がって埃を払うその姿は、一切のダメージを感じさせない。
その様子に観覧席で見ていた者達や、今対峙しているガイオまでもが驚く。
ガイオ「お前・・・何をした」
未来「さぁ？マジックでもしたんじゃねぇか？（笑」
笑う、彼女は笑う。
悪役染みた不気味な笑みを浮かべて、ニヤリと笑う。
―― 戦う者 ――
未来「お前の怒りはその程度か？」
これはとある裏方〈達〉の物語・・・
舞台の上でスポットライトを浴びて踊る役者とは違う、自分の目的を悟らせない隠れた裏方〈達〉の。
己の利益のみを考え、力を振るう方向性を役者に示した
―――主役に成らなかった裏方〈達〉の実相の物語・・・
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